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この世には、決して叶わない恋という物がある。
恋愛などせずとも、役場の結婚支援課に登録すれば相性だけで相手が決まってしまう。それが今の『科学世紀』と称される現代日本でオーソドックスな結婚だ。
私は、恋をしている。でも、想いは決して伝えない。何故なら、想い人は"女性"だから。
かつて多様性が尊重される時代があったそうだ。同性の結婚が容認された時代だそうだ。そんな時代なら私の恋も実っただろうか?いいや、いつの時代だろうと結果は変わらないだろう。
私の"彼女"への想いは一方的で、恋愛以前に友情関係すら無い.......他人なのだ。
だからこそ羨ましい。いつも"彼女"の横に居る
だから、私は宇佐見 蓮子の肉体を奪う事にした。『科学世紀』と相反する呪術によって.....ッ!
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「ひゃっ!?」
視界が開けた時、目の前に居た宇佐見 蓮子の顔に思わず変な声が出て仰け反る。が、直ぐにソレが洗面台の鏡に写った姿だと気付き安堵の溜め息が出た。
「やった.......成功したんだ...!」
顔や身体に触れて得た感触が呪術の成功を確信させてくれる。私は今、間違い無く宇佐見 蓮子の身体を乗っ取ったんだ!!
「どうしたの蓮子?変な声だして」
魅惑的な声に身体が反応して振り返る。そこに居たのは、間違えるハズの無い。私が恋した"彼女"――マエリベリー・ハーン(ハーンちゃん)だった。
「はっ...ハーンちゃん!?」
「ハーン......?」
訝しんだハーンちゃんは、眉間に皺を寄せ目を細める。
私は今、最高に興奮している!あの幻想的な淡い紫色の瞳が確かに私を射抜いているからだ!!
「..........蓮子、顔赤いわよ。もしかして、コッソリひとりで旧型酒飲んでたんじゃないでしょうね?」
「きゅ...旧型酒だなんてそんなッ!あんな物!.......飲んでないっです......よ...」
「???」
宇佐見 蓮子は、旧型酒なんて野蛮人しか飲まない物を飲んでたなんて!あんな不潔な人間が今までハーンちゃんの隣に居たなんて信じられない!?
「蓮子、本当に変よ?」
疑念を深め1歩...また1歩と距離を詰めて来るハーンちゃん。洗面台に腰が当たり逃げ場の無い私は、狼狽えながら何も出来ずに接近を許す。
息を吐けば当たりそうな距離。私は、呼吸も出来ずにただハーンちゃんの凝視する瞳を見続けるしかない。幸福の時。身体を少し前に出せば情熱的な紅い唇の触感を知れるだろう。抱きついて全身で感じても良い。
我慢の限界だ...
「アナタ誰?」
「え...」
全身から興奮の熱が一瞬で消え去る。
「異物は、排除しないと」
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「速報です。本日19時頃、鴨川に女性が浮いているのを通行人が発見。通報を受けた救助隊による迅速な救助活動が行われましたが、その場で死亡が確認されました――」
家電製品店に並べられた最新のテレビから流れるニュース速報。その速報に関心を向ける者は多くない。科学技術が飛躍的に進歩したとはいえ、国民の幸福度が上がるワケでは無い。例え少年少女が自殺しようと殺害されようと日々の不安を煽る情報の数々の中に埋もれる1つの"些細な出来事"でしかないのだ。
「いッ...!」
偶然関心を向けていた通行人――蓮子は、鋭い頭痛に顔を歪ませた。
「大丈夫?薬あるわよ」
隣を歩くメリーは、バッグから薬を取り出そうとするも蓮子は直ぐに止める。
「いいわ、大丈夫よ」
「やっぱり......昨日、洗面台で頭を打ってたんじゃない?」
「大丈夫だって。タンコブ出来てなかったし」
「......」
「なに?」
「ううん、何でもないわ」