秘封世界単話集   作:見張

14 / 14
13話「長野に住む友人の話」

「むかし、ここら辺にデッカイ神社があってこの地方を収めてた......んだと思う」

 

諏訪湖を眺めながら自信なさげに語り出した友人は、遠い過去の記憶を絞り出すかのように親指で前頭葉の上をグリグリと擦る。

 

「凄い祭りがあってさ。大木に乗っかって山を滑るんだ。それで死人が出たりしてさぁ...」

「今の時代なら中止になるか人形に変えられてるだろうな」

「いや.......やってたハズなんだよ。最近までさ」

「?」

 

友人の話を信じるなら、人が死ぬような危険な祭りをやる規模の大きい神社があったということになる。だが、僕はそんな祭りも神社も知らないしスマートフォンで調べても名前すら出てこない。

 

「疑いたくないけどさ、本当にあったのかよ?」

「あったハズなんだ.........今年の年始に初詣に行った記憶があるんだよ...」

 

「ミスインフォメーション効果」というものがある。後に見たり聞いた情報によって記憶が歪んでしまう事がある。要は記憶違いだ。

 

「知り合いに片っ端から聞いたんだよ。そしたらさ、ほとんどの奴が忘れてるんだけど何人かは俺みたいに断片的に覚えてる奴もいたんだ。その中に1人、境内の様子とか巫女の事とかハッキリ覚えてる奴がいてさ、ソイツの話を聞いてるとぼんやりとだけど色々と思い出せたんだけどさ、時間が経つと忘れちまうんだ」

 

重度の頭痛に苦しんでる様に顔を歪ませる友人。流石に心配になって声をかけると、言葉の代わりに手で平気だと返す。

 

「こちや.......たしか巫女はそう呼ばれてたハズ.................,アイツは、普通だったな...」

「普通?」

「格式高い家の子の割に庶民的で、学校でも女子グループに混ざって禁止されてる化粧品使ったりとかさ、たまにロボットの良さを熱弁して引かれたれしてる何処にでも居る普通の女子だった」

 

存在しない神社と巫女の記憶。客観的には精神的な病気を疑うのが普通なのだろうが、何故か友人が語る言葉には真実味があった。

 

「......悪いな。せっかく遊びに来てくれたのに、こんなワケの解らないふざけた話しちまって」

「いや、面白い話だと思ったよ。例えばだけどさ、神隠しにあったんじゃないかな?神社ごと」

「はぁ?神様が神隠しにあったってか?ギャグかよ」

「真面目だよ。逆に神様がもう此処には居られないって別の場所に巫女を連れて移住したとか?」

「移住するって何処にだよ?」

「神様達の楽園!」

「...やっぱふざけてるだろ」

 

当初予定していた長野観光はキャンセル。僕は友人を半ば強引に連れて地元の歴史館や図書館を回った。もし、友人の言う通り神社が今年まで存在していたならば、消える前と後の歴史に矛盾や空白があると思ったからだ。

 

正直、自分にここまでの行動力があるとは思わなかった。意外とオカルトが好きなのかもしれない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

化けガラスってマジっすか……。(作者:SOGEKIKUN)(原作:東方project)

▼ 気がついたらなんか雛鳥になってたんだけど。いや意味が分からん。親鳥は足から目やくちばしまで全身黒いし………あれ?カラスじゃない?▼これは、ポンコツな1羽のカラスが一生懸命生きていくだけの話。▼ おいっ出てこい!!人外魔境に転生させたやつ(涙)▼追記:少しだけ刺激的な描写が含まれる回もあるのでR-17をつけました。苦手な方はお控えください。好きな方は一緒に…


総合評価:367/評価:7.92/連載:62話/更新日時:2026年05月29日(金) 18:00 小説情報

転生したらスキマ妖怪だった件について(作者:デスゴッド)(原作:転生したらスライムだった件)

『転生したらルーミアだった!?』とは別の世界線の転スラ×東方Project のクロスオーバーです。▼こっちではクロスオーバーする作品を極力東方のみに搾る予定です。▼また、式神や陰陽道に関してはご都合解釈なのを了承して下さると幸いです(・・;)▼それではどうぞ。


総合評価:484/評価:8.14/連載:37話/更新日時:2026年05月28日(木) 21:06 小説情報

心を閉ざした少女からの激重感情(作者:あさまらたゆかあわ)(原作:東方Project)

人里で甘味処を営む家の娘、雨宮澄。▼少しぼんやりしていて、妙に勘のいい少女である彼女には、“見えないものを見つける”不思議な力があった。▼ある朝、休憩中に食べていた団子が一本消えたことから、誰にも気づかれない少女――古明地こいしと出会う。▼「なんで、貴方には私が見えるの?」▼気まぐれで自由奔放なこいしに振り回されながら、澄のいつも通りの日常は少しずつ変わって…


総合評価:1602/評価:8.79/連載:17話/更新日時:2026年05月16日(土) 20:39 小説情報

転生して型月版・沖田総司になったけど、労咳を克服したら明神弥彦の母になっていた件 〜るろ剣世界で最強のママやってます〜(作者:だいたい大丈夫)(原作:るろうに剣心)

かつて京都を震撼させた「人斬り抜刀斎」と並び称された、新選組一番隊組長・沖田総司。▼労咳の運命を越え、彼女が手にしたのは平穏な明治の世と、亡き夫が残した一人息子・弥彦だった。▼しかし、その剣はまだ、錆びついてはいない。▼「たまには人を斬っておかないと、腕が鈍るでしょう?」▼昼は息子の教育に頭を悩ませる士族の未亡人。夜は月夜に紛れ、暗殺者として死体の山を築く。…


総合評価:3088/評価:6.92/連載:84話/更新日時:2026年05月28日(木) 22:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>