秘封世界単話集(完結)   作:見張

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13話「長野に住む友人の話」

「むかし、ここら辺にデッカイ神社があってこの地方を収めてた......んだと思う」

 

諏訪湖を眺めながら自信なさげに語り出した友人は、遠い過去の記憶を絞り出すかのように親指で前頭葉の上をグリグリと擦る。

 

「凄い祭りがあってさ。大木に乗っかって山を滑るんだ。それで死人が出たりしてさぁ...」

「今の時代なら中止になるか人形に変えられてるだろうな」

「いや.......やってたハズなんだよ。最近までさ」

「?」

 

友人の話を信じるなら、人が死ぬような危険な祭りをやる規模の大きい神社があったということになる。だが、僕はそんな祭りも神社も知らないしスマートフォンで調べても名前すら出てこない。

 

「疑いたくないけどさ、本当にあったのかよ?」

「あったハズなんだ.........今年の年始に初詣に行った記憶があるんだよ...」

 

「ミスインフォメーション効果」というものがある。後に見たり聞いた情報によって記憶が歪んでしまう事がある。要は記憶違いだ。

 

「知り合いに片っ端から聞いたんだよ。そしたらさ、ほとんどの奴が忘れてるんだけど何人かは俺みたいに断片的に覚えてる奴もいたんだ。その中に1人、境内の様子とか巫女の事とかハッキリ覚えてる奴がいてさ、ソイツの話を聞いてるとぼんやりとだけど色々と思い出せたんだけどさ、時間が経つと忘れちまうんだ」

 

重度の頭痛に苦しんでる様に顔を歪ませる友人。流石に心配になって声をかけると、言葉の代わりに手で平気だと返す。

 

「こちや.......たしか巫女はそう呼ばれてたハズ.................,アイツは、普通だったな...」

「普通?」

「格式高い家の子の割に庶民的で、学校でも女子グループに混ざって禁止されてる化粧品使ったりとかさ、たまにロボットの良さを熱弁して引かれたれしてる何処にでも居る普通の女子だった」

 

存在しない神社と巫女の記憶。客観的には精神的な病気を疑うのが普通なのだろうが、何故か友人が語る言葉には真実味があった。

 

「......悪いな。せっかく遊びに来てくれたのに、こんなワケの解らないふざけた話しちまって」

「いや、面白い話だと思ったよ。例えばだけどさ、神隠しにあったんじゃないかな?神社ごと」

「はぁ?神様が神隠しにあったってか?ギャグかよ」

「真面目だよ。逆に神様がもう此処には居られないって別の場所に巫女を連れて移住したとか?」

「移住するって何処にだよ?」

「神様達の楽園!」

「...やっぱふざけてるだろ」

 

当初予定していた長野観光はキャンセル。僕は友人を半ば強引に連れて地元の歴史館や図書館を回った。もし、友人の言う通り神社が今年まで存在していたならば、消える前と後の歴史に矛盾や空白があると思ったからだ。

 

正直、自分にここまでの行動力があるとは思わなかった。意外とオカルトが好きなのかもしれない。

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