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M県S市のベッドタウン開発に際し消滅したとある山村で目撃される不思議な自然現象がある。
土曜の辰の日......所謂、立秋の時期の逢魔ヶ刻。北の空に太陽と月が並んで視えるそうだ。
明治時代以前までは、人の出入りがほとんど無く地元住民らにとって秋の始まりを告げる自然現象として当然の物と受け入れられてきた。
その自然現象が異常だと認知されるようになったのは、明治38年の夏。この山村の出身者である生徒から自然現象の話を聞いた大学教授が山村を訪れたのがきっかけだった。
最初こそ興味深くも半信半疑だった大学教授。しかし、実際にその自然現象を目の当たりにし大変驚愕したという。
翌年、機材を揃えて改めて村を訪れた大学教授は、村長含め多くの村人に調査結果と考えゆる可能性を報告した。
「初めに結論から申しますと、本●●●村にて観測される太陽と月が並行して視える現象の仕組みは、大気中の気温差による光の屈折が原因である可能性が非常に高いです!」
大学教授が皆に配った調査結果には、複数の箇所で計測した気温がまとめられている。注目すべきは北方の山中で計測された気温。他のポイントでは28度前後だったのに対し、このポイントだけ12度と異様に低い数値がみられる。
この結果に皆が驚きの表情をみせる中ただ1人、村長だけは別の反応を見せたそうだ。
「トットメ様じゃ...!」
詳細を聞こうとした大学教授に村長は首を振る。
「ワシも多くは知らん。ずっと昔......ワシが鼻たれの坊主じゃった頃、爺様が1度だけ教えてくれたんじゃ」
村長は続ける。
「都から来た偉ぇお侍様があの山に住んどったモノノ怪を退治してくださったそうだ。それ以来、山では不思議な事が起こるようになったから近づいてはならん......そのモノノ怪の名前がトットメ様なんじゃ...!」
村長が語る北方の山とモノノ怪の話。その話に多くの村人が疑問の声を上げる。まとめると「そんな話は初めて聞いた。あの山で怪現象に遭遇した事は無い」。
村長は、皆の疑問に頷き肯定する。
「ワシも今の今まで忘れておった。爺様もふと思い出したから教えたようじゃった......実際、■■先生(大学教授)が山に入っても何事も無く帰ってこれたんじゃから、言い伝えなければならん程おっかねぇモノノ怪じゃ無かったんじゃなかろうかのぉ?」
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後日、大学教授は突如として失踪した。
失踪前日に授業を受けていた生徒の1人は、警察の事情聴取で奇妙なことを言っていたと証言する。
「ワタシは過ちを犯した。アレを調べるべきではなかった......アレは、未来永劫誰にも知られず朽ちるのを待たなければならない」