秘封世界単話集   作:見張

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3話「メリーのメモ」

以下の文は、私、宇佐見 蓮子がマエリベリー・ハーン(メリー)宅で発見したメモ用紙の内容をまとめた物である。メリーの能力の特異性、限られた時間で発見した断片的な物である2点を考慮して欲しい。

 

『■■日■■時■■分に宅配』

 

『家庭栽培 要検討』

 

『神社 宴会 新型酒』

 

『↑怒られた』

 

『宅配依頼 洗剤 化粧品 宅配弁当(中華風) 家庭栽培キット』

 

『缶詰め 水 ガソリン(発電機は動くだろうか?) 離乳食(絶対) 自衛隊は救助に来るだろうか?■■■ちゃんの体調が芳しくないのが心配だ...』

 

『■■日■■時 病院予約』

 

『■■日■■時 病院予約』

 

「■■日■■時 病院予約」

 

『■■日■■時 病院予約』

 

『■■日■■時 病院予約』

 

『同じ日付け同じ時間の病院の予約が5枚ある。全ての病院に行った記憶があるが領収書は1枚も無い』

 

『ミニトマト 朝に水やり』

 

『水が出ない 修理依頼』

 

『↑壊れてなかった』

 

『蓮子にはアレがトランプカードに視えるようだ。念の為焼却』

 

『●●(注釈:漢字の様だが辞書にて確認出来ず)様への供物 20歳未満の生娘 私では駄目らしい』

 

『クジラの居酒屋で初めて半丁賭博を観た』

 

『火星でユニットバスの水道とドアが壊れてた。間違っても内側からドアを閉めてトイレの水を流さないように伝達』

 

『巨人 大鵬 卵焼き』

 

『この夢は退屈だ』

 

『夢=現 現≠夢 2つの視点が必要だ』

 

『宅配依頼 石鹸 宅配弁当(洋食風)』

 

『気が付いたら部屋中にメモ用紙が散乱している。紙媒体に書き残すなんてドコかの誰かさんみたいだ。今日帰宅次第に片付けなければ...』

 

追記:私が確認したメモ用紙は7枚である。しかし、どういうワケか7枚以上のメモ用紙の内容がまとめられている。それ以前に発見したメモ用紙の内容の文が1つも無い。

 

考察:メリーが見ている夢の世界である可能性が高い。何としてでもメリーに接触し起床させなければならない。

 

「って感じの夢を見たの」

 

語り終えるとティーカップの中でぬるくなったハーブティーを飲み干した蓮子。カップを静かに置くと感想を求めて視線をメリーへ向けた。

 

「それは、私の夢じゃなくて蓮子の夢ね」

 

蓮子が求めていた感想とは程遠い素っ気無い感想を吐き出しながら注文タブレットを操作するメリー。

 

「.......」

「...?」

 

不服の沈黙と視線に気付くとタブレットの注文確定ボタンを押して言葉を付け加える。

 

「だって私そんな夢見てないもん」

「そうじゃない!メモ用紙の内容について言及があってもいいんじゃいの!」

「えぇ...」

 

額を人差し指で掻き暫し思考を巡らせる。摂取したばかりの糖分を焚べる。そして、至った結論をキッパリと伝える。

 

「ない!」

 

こうもハッキリ言われては言い返す事も出来ない。諦めの溜め息を吐こうとした時、1枚の紙が何処からかテーブルに落ちる。

 

ふたりは同時にその紙に視線を向けた。白色の正四角形のメモ用紙。書かれた内容を蓮子が読み上げる。

 

「観測者が居るからこそ夢を見る者は存在できる......?」

 

蓮子は視線を上げた。若干遅れて上げたメリーと視線が交差する。蓮子の瞳にはメリーが映り、メリーの瞳には何も映らない。

 

「宇佐見 蓮子という個人で存在し続けたいなら、線引きも大事よ」

 

背筋が凍る様な声で警告するとメモ用紙を握り潰しポケットにしまう。蓮子は動けず...一言も発する事も出来ずに見返す事しか出来ない。

 

メリーに変化があったワケでは無い。以前から薄々感づいていた危うさが一瞬顔を覗かせたのだ。だが、その危うさに恐怖は感じ無い。むしろ厳しく子を叱る母親の様でもあった。だから蓮子は、僅かに動かせるようになった口角を上げて不敵に笑い返す。

「叱られた程度で大人しくなる私では無いわ!」と、言葉ではなく態度で言い返した!

 

「......ふっ」

 

小さく鼻で笑ったメリーは、丁度到着した配膳ロボットから注文したミルクティーを"2人分"受け取りテーブルに置いた。

 

「冷める前に飲みましょう」

 

その提案に先程までの冷たさは無い。蓮子は素直に頂戴した。

 

「奢ってくれたの?ありがとう」

「まさか。冗談がお上手ですのね」

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