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日本警察の総本山である警視庁の地下。全国で年に数度発生する人智を超えた不可解な事件の記録を保管する『特殊事例記録保管室』に今日、新たな記録が保管される。
「確かに受け取りました」
この保管室で管理人を務める老年の女性――
「この子は見つかりましたか?」
香代子の何気無い疑問に中年の刑事――
「いや、残念ながら.........せめて骨のひとつでも見つけられれば遺族も報われるでしょうに」
一郎の言葉はどこか他人事だ。特殊事例に該当する事件は普通の事件よりも精神的負担が大きい。実際、特殊事例に関わった警官で10年以上前続いてるのは一郎と香代子のふたりだけ。冷徹に割りきれなければやっていけない仕事だ。
「みつかりますよ」
「分かりますか!?」
「占いですよ。箱の重さで占うんです」
「なんと酔狂な...」
一郎は呆れながらも内心香代子の占いを信じることにした。一郎自身、今回の特殊事例からは"血の様な生臭ささ"を感じなかったからだ。
「
「しかしまぁ、本当に当たるかもしれませんな。なんせ、タヌキに誘拐されたんですからなぁ...」
『佐渡島女子高生失踪事件』――
200■年■■月■■日 15時46分ごろ、新潟県佐渡市(佐渡島)にて旅行中の東京都の公立高校に通う
唯一の手がかりであるビデオカメラには、野生のタヌキを撮影しながら追いかけていた途中、20匹から40匹のタヌキが出現し、身伏 茉莉を転倒させ背負い森の中へ消えていった映像が撮影されていた。
「佐渡のタヌキと言えば、神社にも祀られる有名な化け狸ですから。この子も化かされてるんじゃないかしら?」
「落ち葉を大判小判だと言って手土産に帰ってくるかもしれませんな!」
保管室にふたりの乾いた笑い声が響いた。おかしくて笑っているのでは無い。自分らが産まれ育ったこの国で、幼少期より刷り込まれた科学の英智と道理が通用しない存在が暗躍しているというのに、事後処理と記録の保管しか出来ない無力な自分らを皮肉で笑っているのだ。
「牧瀬さん」
「......はい」
「今はこうして後世に記録を残す事しか出来ません。ですが、いつか、きっと、人は立ち向かいます!そして勝ちます!」
そうであって欲しいと切望か、あるいは現実逃避の末の願望か......それとも、長年携わってきたからこそ見出した希望があるのか。一郎には解らない。だが、強く頷き肯定する。
人間は脆弱で無力であると一郎は他者よりもよく知る。悲観では無い。今はまだ脆弱で無力なだけだ。これまでがそうであったように人間は適応し進化する。そう信じるだけの根拠はあると一郎は......一郎と香代子は確信していた。
【告知】
初めに、本シリーズをご愛読いただきありがとうございます。
本シリーズは、1話あたり1000〜2000文字程度のショートストーリーを心がけて執筆してまいりました。仕事と私生活の僅かな合間ではこの程度が無理なく活動を続けられるラインだと判断していたためです。しかしながら、長編小説を執筆してみたい気持ちも少なからずあるのが本音です。ですので、次回は番外編として試験的に1万文字を目標に執筆してみたいと思います。どの程度執筆に時間がかかるか不明な上に元より高くないクオリティを下げてしまうかもしれませんが、どのような形でも必ず投稿しますのでよろしくお願いします。
タイトルは「部楽倶封秘」です。