諦めたPと篠澤広   作:ラ メ ル テ オ ン

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2ヶ月の成果

 

星南とのお茶の後、俺はいつも通りの時間にレッスン室に向かいドアをノックして扉を開ける。レッスン室に入ってからいつも通りにダンストレーナーに挨拶をして楽しそうに駄弁っている倉本と篠澤に近づく。

 

佑芽がBegraziaに加入してからというものありえない速度で成長していき補習3人組は補習2人組に変わった。それなのにこいつらと来たら全くと言っていいほど焦っていない…まあ倉本財閥のお嬢様に飛び級大卒だ器も違うんだろう。今だって楽しそうにスーパアイドルに成り上がるチャートを組んでるのかもしれない。そんな俺の淡い期待は、

 

「…そこでプロデューサーに懇願された。捨てないで欲しいって」

 

「いけない関係ですわ〜!」

 

見事に打ち砕かれた。財閥のお嬢様と飛び級大卒に似合わない下世話な会話だった…話の内容的に凄く声をかけたくないが倉本に勘違いされたくもないので声をかける。

 

「…何の話だよ」

 

「プロデューサーが私と離れたくなくて懇願した時の話」

 

「いやしてねえだろ!捏造すんな!」

 

「捏造じゃない。証拠ならある」

 

「はあ?出せるもんなら出してみろよ。絶対してねえから」

 

篠澤はスマホを取り出して操作をし始める。俺は、そんな事をした覚えはないので自信満々に証拠の提出待つ。しばらくして、

 

『い、や、だ!お前に任せて篠澤がお前に懐いたら捨てられるだろ!俺が…』

 

かなりの音量で保健室で一条と取っ組みあっていた時の音声が流れてきた。俺は急いで篠澤からスマホを奪い取り録音を削除する。

 

「あっ消されちゃった…プロデューサーの鬼畜…」

 

「鬼畜はお前だろ…」

 

抵抗虚しくスマホを奪い取られた篠澤はすごく嬉しそうに笑っている。こいつはマジで油断も隙もねえ…俺は篠澤にスマホを返しながら、

 

「てか、お前らそんなこと話してないで振付の確認とかしろよ。」

 

2人に八つ当たりをする。2人は、

 

「ふ、ふ、ふ、篠澤さんのプロデューサーさんは私達のことを甘く見過ぎですわ!」

 

「ふ、ふ、ふ、レッスン前にそんな事をしたらまともにレッスンなんてできない」

 

「…自信満々に言うのやめてくれない?」

 

誇らしげに自分達の体力の無さについてアピールしてくる。ずっと一緒に補習を受けてるだけあって相当仲がいいらしい。

 

篠澤は授業免除しているからクラスメイトと関わる時間も少ない…だからこそ倉本みたいな友達が居てくれると俺も気が楽になって助かる。少し微笑ましく思い戯れ合う2人を眺めていると、

 

「…そういえば、プロデューサー今日はレッスン見に来る日じゃないよね?どうかしたの?」

 

篠澤が疑問をぶつけてくる。

 

「それはレッスンの後のお楽しみだ。まずは篠澤が2週間でどれくらいできるようになったか見せてくれ」

 

「わかった。プロデューサーを驚かせちゃう、よ」

 

篠澤は自信満々に胸を張っている…こんな状況前もあった気がするんだが…

_____________________________________

 

「ぜえ…どうだった?」

 

「…何で自信満々だったのか聞きたいくらいに酷い」

 

レッスンが終わった後、俺は動けなくなっている篠澤に言葉の鞭を打ち付ける。

 

最初の方はまだ良かったんだが…曲の7割くらいで自分の足につまずき盛大に頭からコケてそのまま終了した…これが本番ならとんでもない事になっていただろう。

 

でもこの振り付けを始めた時は半分も踊りきれていなかった。それに比べれば少しずつ形になってきている今はプロデューサーとして喜ぶべき状況…

 

何だけど…中途半端に形になっているせいで動きの違和感が余計に強くなってる。要所要所の動きはできているが要所と要所の間がスムーズに動けてない。そのせいで無駄に体力を使って最後までできてないように思える。

 

よく考えれば最初の2ヶ月を体力増強しかしてなかったもんな…イメージできてないのも無理ないか。星南の見立ては正しそうだな…そんな事を考えながら篠澤にタオルとスポーツドリンクを渡す。

 

「この振り付けは難しくてとても楽しい…」

 

「初星の生徒ならできて当たり前だけどな」

 

「そっか…ふふ、ままならない、ね」

 

篠澤は相変わらずうまくいかない事に喜んでいる。

 

…こいつはこのまま上手くいかなくても毎日楽しく過ごせるんだろう。問題を解決するのが篠澤の幸せに直結するわけじゃない…

 

でも俺は自分の担当アイドルくらいにはすごいと思われていたい、できない事ができるようになるきっかけを作って倉本と話す時ダサい所じゃなくてすごい所が話題になるようにしたい。だから、

 

「そうだな…でも俺はもっと成功したいんだよ。てことで明日これ見に行くぞ」

 

できる限りカッコつけてチケットを見せびらかす。

 

「ライブのチケット?」

 

「そう!星南にもらった。何と最前列!頭良いんだから初星学園のトップの動き見てしっかり学んでくれよ」

 

俺は称賛の言葉を待ちながら胸を張る。星南には悪いけど篠澤の前では俺の手柄にさせてもらう。そんな褒められ待ちの俺に篠澤は、

 

「おお〜私ライブに行くの始めてだからすごく楽しみ」

 

驚きの新事実を伝えてくる。何で行った事ないんだよ…

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