「はあ?何を言い出すかと思えば…随分と妄想が豊かな方ですね。小説家にでも…」
「まだ気づかねえの?」
俺はそう言って自分が来た方向に指を刺す。倉本が大声で反論していたあたりからこの騒動を見ている人も増え人混みが人を呼び今では30人くらいが野次馬になっている。
「なっ!?」
自分たちの状況に今初めて気付いたのか四音は少し冷や汗をかいている。
「まあ場所の選択自体は悪くないと思うぜ?ここは周りからも見えにくいし、何もない日なら何してても問題ねえ…けど今日はNIAの初日だ。アイドルも来訪者もそれなりに来る、こんな状況になるなんて少し頭使えばわかるだろ?ここまで人が居れば中にはこの状況をカメラに収める奴も出てくるよな…じゃあどうなると思う?」
「あわわわわ!炎上してしまいますわ〜!」
「…それが何だというのです。炎上を経験したアイドルなんていくらでもいます。それだけで終わってしまう事なんて無い…もう少しまともな思考回路をお持ちになった方がいいのでは?」
撫子の方は慌てふためいているが、こんな所で人のことをいびってるだけあって四音はすぐに平静を装っている。まあここで終わらせてもいいんだが…1番2人を馬鹿にした四音に吠え面をかかせてやりたい。だから、
「まあ経験した事ないからわかんねえか?炎上すると所属してる場所に死ぬほど迷惑かけるんだぜ?そうやって迷惑かけるとどうなるかわかるか?嫌われて連絡を無視されたり、存在自体を無視されたりするんだ…」
俺は自分の経験をもとに炎上した時のディテールを足してやることにした。
「…何が言いたいんですか?」
「アイドルは色んな人に支えてもらってやる仕事なんだぞ?そいつらに嫌われたら仕事なんてできないだろ。だからお前らは終わりって言ってんだよ」
「お、お姉様…」
「ちょっと撫子…少しくらいやらかしても何とかなります…だからそんなに怯えないで下さい」
「失言やミスで炎上するならまだしも人の事虐めてんのに何とかなるわけないだろ。一度着いたイメージはそうそう変えられないんだお前ら捨てて新しいアイドルに乗り換えた方がよっぽど生産的だね」
「なっ…こいつ!黙って聞いてれば!」
「…本当にもう駄目なんですの?」
「認めたくないならもう一回言ってやるよ。お前らのアイドル人生はここで終了だ。家に帰って転校の準備でもしてろよ間抜けコンビ」
俺はそう言い放った後篠澤と倉本の所に歩き始める。
まあぶっちゃけ四音の言う通りこんなのはただの杞憂だ。
極月学園は少数精鋭、多少素行が悪くてもそれ以上に何かを見出された奴しかいない。だからこのままこれが世の中に出ても少しの間謹慎して終わりだろう。
だが俺の言ったことは間違いとは言い切れないから心に引っかかる。こいつらもまだ高校生、人の人生の中で一番多感な時期、謹慎してる間それは凄く心にくるものがあるはずだ。せいぜい悩んでろば〜か。
そんなことを思いながら2人と合流して人混みの方へ歩き始めようとした時、
「ぐすん…」
後ろの方から聞き馴染みのない音が聞こえた。凄く嫌な予感がして恐る恐る振り返ると…撫子の目から涙が溢れ出していた。野次馬もそのことに気づいたのか、
「え?あの子泣いてない?」
「流石に言いすぎだろ」
「何だよあいつありえねぇ〜」
次々と俺に敵意を向けてくる。今の今まで偉そうに語っていた事が自分自身に牙を剥いてくるのを肌で感じる…やばい…この泣き虫を何とかしないと俺が炎上する…