「プロデューサーが女の子泣かせた」
「シャラップ!てかお前も泣くなよ…ちょっと言い過ぎたけどさ」
「全然ちょっとじゃありませんわ!プロデューサーさん!早く謝ってくださいませ!」
俺を嗜める千奈の叫びで気づいた。そうだ…雑に扱われて喜ぶマゾ気質なやつをプロデュースしててすっかり忘れてた…女の子って繊細なんだった…
「べ、別に泣いてなんかいませんわ!ちょっと想像して怖くなっただけで…」
撫子は溢れてしまった涙を指で拭いながら強がる。それを世間では泣いてるって言うんだよ…でもよかった…わんわん泣かれてないのなら何とかなる。俺は、
「本当にごめん!俺が言いすぎた!…お前顔可愛いから多少素行悪くても何とかなるから!マジで!だから…その…仲直りしない?」
誠心誠意謝ってから仲直りの握手を求めて手を差し出す。
「え?あ、ああそうですの…こちらも少し…」
撫子は俺の態度の変わりように困惑しながらも謝罪を受け入れ差し出された手を握ろうとしたその時、
「触るな変態!」
四音が叫ぶと同時に俺の手をはたき落として来る。
「痛え!?なにすんだよ!」
パチンと音が鳴り響くほどの平手打ちに俺は思わず文句を垂れる
「暴言の次はセクハラですか?下衆め」
「は?いや俺今謝っ…」
俺の言葉を無視して四音は撫子を抱きしめて頭を撫で始める。
「ああ…可哀想な撫子。確かに過ぎた発言はありましたが泣くまで詰るなんて…貴方最低ですね」
「なっ!?」
四音は野次馬にも聞こえるくらいの声量で話し出す。
撫子が泣いてから慰めることもなく考え事をしてると思えばこいつ…それよりこれはやばい、さっきまではこいつらが先にちょっかいをかけて来ていたから俺がどれだけ言っても野次馬はドン引きしていただけで済んでいたが…アイドルを泣かせてしまった今こんな事を言われると、
「まじありえねえ〜」
「あの男の人やばくない?」
完全に敵になる。やばいやばいやばい…
「ちょっと…四音さん僕今謝ろうと…」
俺は最後の希望に縋って和平を結ぼうとするも、
「お、お姉様?」
「良くやりました撫子。そのまま泣き真似を続けてください。散々言ってくれたお礼にあの男を悪者にしてあげましょう」
四音は俺にトドメを刺そうと野次馬には聞こえないように小声で撫子に指示を出す。ちょっと…待って…今そんな事されると…
「う、うえーん」
「おい!いい加減にしろ!」
「可哀想だろ!」
撫子の嘘泣きを聞いて野次馬の罵詈雑言がさらに大きくなって来ている。はは…すっげ…流石アイドル涙一つで周りを味方につけやがった…こいつら本当に…
「ズルすぎるだろ!言い返せなくなったら被害者ヅラとかプライドはないのか!プライドは!」
「プロデューサーは人の事言えないと思う」
「うるさい!お前はどっちの味方だよ!」
「あわわわわ!!この状況どうしたらいいんですのー!!」
ああ…マジでどうしよう千奈巻き込んでこんな事になるとかやばすぎる…考えろ…考えろ…何か無いか?こんな状況を何とかできる一発逆転の…そんな俺の思考を、
「ちょっといいですか?」
声と共に肩に置かれた手が遮った。くっそ…もう少しで何か閃きそうだったのに。俺は邪魔をして来たやつに文句を言ってやろうと勢いよく振り返ると、
「ここの警備を任されている者なんですが…話聞かせてもらってもいいですか?」
複数人の体格のいい警備員さんに囲まれていた。もう自分1人じゃ解決できないくらいに事が大きくなってしまった事を悟って俺は、
「はい…わかりました」
素直に指示に従った。俺たちが事情聴取から解放されたのは2時間後だった…