『アイドル科1年2組倉本千奈さん学園長室まで』
「終わった…終わった!終わった!!」
NIA開催日から2日後休み明けのそんな日に俺は事務所代わりの教室で頭を抱えていた。
2日前の俺が撫子を泣かせた所はしっかりと撮影されていた。動画は当日ネットに上げられ瞬く間に拡散、そしてしっかりと炎上、現状NIAで最も熱い話題となってる…そのおかげで朝からあさり先生に2時間ほど説教されこの後学園長に呼び出されて処分が言い渡されることになった。
なのに…事情聴取の為か倉本が呼び出しを喰らっている…はは…本当に星南にどうやって謝ろう…
「ふふ、プロデューサーのその顔好き」
「お前…!人が大変な時に…ああ…もう最悪だ…」
篠澤は絶望と焦燥が混濁する俺の表情を見て笑ってる。今回の炎上は色々とやばいんだが…その中でも1番やばいポイントは「倉本グループのご令嬢」を炎上に巻き込んでいる事。
今の所ネットで罵詈雑言を浴びせられているのは俺だけで済んでいるが…倉本が巻き込まれた瞬間に退学どころじゃない俺の人生が終わる…そんなことを考えながら俺は教室にあるもので祭壇を作り、
「ああ…お願いします神様…過去に戻してください…戻れたなら土下座でも何でもして場を上手い事収めるのでお願いします…」
祭壇にひれ伏して全力で現実逃避を開始する。この状況をなんとかしたいが俺がどうかできる範疇を超えてる…お願いします神様仏様イエス様、誰でもいいから助けてください…
「…プロデューサー。私でもそれは少し引いちゃう、かも」
あまりの取り乱し方に篠澤も少し青い顔をしながら文句を言ってくる。
「うるせえ!俺の状況分かってんの?初星の厄介者が公共の場で大問題起こしてんだよ!?今までは退学させるほどの理由がなかったからお目溢しされてただけで…理由が出来た今俺はどうなってもおかしくないんだよ!もう…神に頼むしか方法がないの!お前も困るだろ!俺が居なくなったら!」
「それは…凄く困っちゃう、ね」
「だろ!なら篠澤!この状況をなんとかできる方法を考えてくれ!」
「ふふ…無茶振りがすごい」
篠澤はヤケクソになっている俺戸惑いながらも言い返す事なく笑っている。…何やってんだろ俺、
「だよな…悪い忘れてくれ」
俺は散々取り乱しまくり疲れたのでその場に倒れ込む。本当に何やってんだろ…篠澤に八つ当たりしても仕方ないのに…俺はさっきまでの情けない自分を振り返って、
「なあ…篠澤、こんな事に巻き込んでるんだから文句くらい言ってくれていいんだぞ」
篠澤に声をかける。去年あいつに捨てられたのは問題を起こして停学になってからだった。何も言わずに去って行ったから捨てられた理由はわからない。だから今まで不満に思っていた事が俺の停学を機に抑えきれなくなったんだとそう思う事にしてそれ以上深く考えないようにしてた、そう思わせた俺も悪いけど言ってくれなかったあいつも悪いんだってそう思う事で楽になろうとした…
その結果反省する事もなくまた感情のまま動いて篠澤を面倒事に巻き込んだ…それなのに八つ当たりまでした俺の事を責める事すらしない篠澤が気を使って我慢してくれているような気がしてすごく怖くなった。去年の二の舞になるくらいならボロカスに言われた方がマシだ…そう思って篠澤に正座をして向き直り罵倒されるのを待つ。そんな俺に篠澤は、
「ふふ、プロデューサーは忘れん坊さん、だね。」
「…なにが?」
「私はうまくいかないことを求めてアイドルを目指した。今の状況は私が求めてる状況そのもの。これからどうなるのか考えただけで胸が苦しくなってゾクゾクする…私今すごく楽しい、よ」
どう思えばいいのかわからない事を幸せそうに伝えてくる。
「…お前って本当に変な奴だよな」
「プロデューサーには言われたくない」
「はは、それもそうだ」
この状況を楽しんですらいる器のでかい篠澤を見て気持ちも次第に落ち着いてきた。プロデューサーが担当アイドルに支えてもらうとか本当に情けない…そう思いため息をつく俺に篠澤は、
「それにプロデューサーが私の為に怒ってくれたの嬉しかった、よ」
見透かしてるような事を言ってくる。
「…別にお前の為じゃねえよ。倉本の事任せられてたから言い返しただけだ。あの場にいたのが篠澤だけなら言い返してすらねえよ」
「ふふ、そうなんだ」
「そうなの!だからニヤニヤするのやめろ!」
そうやって戯れあっていると焦りと絶望が抜けきってやっといつもの自分に戻れた気がした。そんな時、
『アイドル科1年2組篠澤広さん学園長室まで』
「ふふ、呼び出されちゃった…」
倉本に続いて篠澤が呼び出された。いよいよ覚悟しないといけないな…
「喜んでる所悪いけど多分事情聴取されるだけだぞ?まあ篠澤は何があったか正直に言えばいい。自分の事は自分でなんとかするからさ」
「私たちは一蓮托生。水臭い事言わないでこんな時くらい私を頼って欲しい」
「いや…頼るって言ってもどう頼ればいいんだよ」
「ふふん、プロデューサーが退学にならないように私からおじいちゃんにお願いする」
篠澤はそう言って自信満々に胸を張る。身内でもない篠澤がお願いしてもそんなに効果なさそうだけど…俺のために頑張ろうとしてくれてる気持ちはもらっておこう。
「じゃあ頼むよ。できる限り俺の評価上げといてくれ」
そんな感じで篠澤が教室から出て行って30分後、
『プロデューサー科2年斉藤君学園長室まで』
遂に俺の番が来た。俺は教室を出て学園長室に向かう。この教室を使うのが今日で最後にならない事を祈ろう…