「やっぱり開幕土下座しかないな…」
俺は学園長室に向かいながらどうやって謝るか考える。篠澤が呼び出されていた30分で色々考えたがやっぱりこれしかない。
ここは初星学園、専門性は高いがあくまで教育機関だ。通っているやつは若者ばかり、若さ故の過ちという言葉があるように若者は間違いを犯しながら成長していく。
そんな若者が多い場所で働いている人たちは若さ故の過ちを日々間近で見ている。だからこんな案件も案外想定内だったりする。しっかり反省して謝り倒せば社会人よりはまだ温情措置を受けやすい。
今回の件も社会人だったなら即日懲戒解雇だっただろう…でも俺はまだ初星学園に在籍する事を許されている。なら退学にならない可能性がある。だから学園長に反省している事をしっかりアピール出来れば何とかなるかもしれない。
問題は…俺去年暴力沙汰起こして停学喰らってるから初犯じゃない…その直後に担当アイドルに捨てられてとんでもない噂流れてる…先月人前で一条相手に土下座してるせいで土下座の価値が下がってる…今年で20歳になってるから若さ故の過ちは使えない可能性がある…
日頃の行いが首を絞めるどころの騒ぎじゃない…もう捩じ切られている…過去の俺を順番にしばいてやりたい…そんな事を思いながら歩いていると、
「〜♪」
携帯の着信音が鳴り響く。
今電話してる余裕なんてねえよ…後でかけ直すために誰からかかってきているのかだけ確認しようと携帯を取り出すと、画面には十王星南と書かれている。
やばい…自分の事で頭がいっぱいで謝るの完全に忘れてた…流石にこれ以上先延ばしにするわけにもいかないので電話を取る。
「おはようございます…星南さん」
『おはよう、斉藤君。学園長に呼び出されて急いでいると思うから手短に話すわね。学園長との話し合いが終わり次第生徒会室に来てくれるかしら。言いたい事、聞きたい事が沢山あるの」
星南の声が初めて会った時みたいに冷たい…滅茶苦茶怒ってるなこれ…
「わかりました。それと…連絡遅れてしまって申し訳ありません」
『…わかってるならいいわ。千奈と広の2人に先に話を聞いておくから急がなくて大丈夫よ』
星南は気を遣ってくれているのか謝るとすぐにいつもの声色に戻り感じていた圧も消えてなくなった。そのおかげで少し余裕を取り戻し気になっていた事を聞く。
「その…倉本大丈夫かな?精神的に辛そうにしてたりしてない?」
ネットで叩かれてないとは言え炎上に巻き込まれているんだ自分で甘やかされて育ったと公言している倉本にはきつい物があるだろう…
『ええ心配はいらないわ大丈夫よ。というか貴方、人の事心配してる場合じゃないでしょ。まずは自分の問題を片付けてきなさい』
「はは…そうだな。その…星南ありがとう。色々思うことあるはずなのに普通に接してくれて」
「ええ。それじゃあ後でね」
その言葉と共に星南との電話は終わった。後でって…退学になったらわざわざ謝りに行く理由も無くなるのに。俺はその約束が星南なりの励ましに思えて嬉しかった。
全く去年あいつに捨てられた時とは大違いだな…星南も篠澤も散々迷惑かけてるのに心配して気を遣って励ましてくれている。こんなにいい奴らに囲まれてたんだな…退学したくねえな…
パチン!
俺は自分で自分の頬を叩き感傷に浸って泣きそうになっている心を痛みで呼び覚ます。
泣きそうになってる場合じゃねえ、退学したくないならやる事は決まってるだろ!何が何でも学園長から許しを得る、土下座でも靴舐めでも何でもしてやる。
覚悟が決まった時タイミング良く学園長室の前に着いた。俺は扉の前に立ちノックをする。
「うむ、入ってきたまえ」
学園長の落ち着きのある声が聞こえる。俺は一度呼吸を整えて学園長室に入って行く。
「失礼します」
「斉藤君、ここに…」
「学園長!この度は初星学園の名前に泥を塗るような真似をして本当にすみませんでした!」
俺は学園長の言葉を遮って地面に頭を擦り付けて学園長に謝罪をする。ここからは一挙手一投足 全てに注意を払え、何としても会話の流れを掴み取れ、それが今俺がやれる事だ…
そんな俺の張り詰めた心は
「ワッハハハ!相変わらず思い切りが良いのう」
「へ?」
学園長の想定外の反応で解けてしまった。
えっ…何で笑ってんのこの人…