諦めたPと篠澤広   作:ラ メ ル テ オ ン

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生徒会からの呼び出し

俺は学園長室から出た後自販機で缶コーヒーを買って星南との交渉に向けて作戦を練る。

 

人に協力を求める時交渉の仕方は大きく分けて2つ。餌で釣るか助けたいと思わせるか、利益か感情か。

 

餌で釣る方利益を使う場合は簡単だ。自分の計画がどれくらい優れているのかをうまいこと伝えればいい。

 

想像力を膨らませて自分の計画の利点を箇条書きにしていき協力を得たい奴が好みそうなものを選別してプレゼンする。

 

だが利益は自分より立場が上の人間には使いづらい、俺に協力しなくてもそれ以上の利益を手に入れれる奴に餌で釣るなんてできるわけがない。

 

助けたいと思わせる方、感情を使うのは利益を使うのと比べて難しい。そもそもそれなりに仲が良くないと助けたいと思ってくれないし、そいつがどれくらい感情を行動の指針にするのかを見極めれていないと使えない。

 

根本的に2つしかないとは言え関係性や相手の立場によって使い分けたり塩梅を調整しないといけないのが難しい所だ。

 

じゃあ星南にどういう風に使うか何だが…それがかなり難しい。

 

星南に初めて会った時、あの時星南は俺の悪い噂を信じて直接篠澤を助けに来た。理屈で動く奴ならまず真偽を確かめ証拠を握り学園長辺りを味方につけて言い逃れできない様に動くはずだ。あの時に感情的に動いた以上根っこの部分は感情を優先する人物ではある。

 

だが星南は生徒会長でありプリマステラだ。人の上に立つ以上理屈抜きで動くと信用問題に関わる。だから助けを求めるなら最低限星南もしくは生徒会にメリットがある提案をしないといけない…

 

人間性と立場その両方のご機嫌を伺いながら俺の提案を通さないといけない。その上俺は星南の周りの人達との関係性をあまり知らない…ケアするべき所が多すぎる…

 

「これ1日くらい考える時間欲しいな…」

 

とは言ってもNIAの期間がある以上早く動くに越したことはない。それに星南自体もHIFに向けて忙しい時期なんだ…交渉するなら今日しかない…そこまで考えるとさっき買った缶コーヒーが空になった。

 

「はあ…これ以上考えても変わんなそうだし怒られてくるか…」

 

そう呟いてゴミ箱に空き缶を捨て生徒会室に向かう。方針は「死ぬほど同情させてから利益を提示する」これで行こう。

 

___________________________________________________________

 

『ズルすぎるだろ!言い返せなくなったら被害者ヅラとかプライドはないのか!プライドは!』

 

「今のがネットに上がっているNIA初日の映像な訳だけど…ここまでで何か弁明はあるかしら?」

 

「弁解の余地もありません…本当に申し訳ないです」

 

俺は生徒会室に着くなり倉本と篠澤の間に座らされ星南と副会長の雨夜にあの日の映像を見せつけられていた…客観的に見た時の俺痛すぎるだろ…こんな映像がネットに永遠に残るの嫌すぎる…

 

俺は説教にまで2人を巻き込んでしまった事が申し訳なくてチラッと横を見て2人の様子を確認する。

 

倉本はいつものふわふわした空気感が消え失せるくらい姿勢を正して青い顔をしている。

 

篠澤は…こいつ…俺の顔見てニヤニヤしてやがる。友達が怒られてる時の男子高校生か!お前がそんな態度だと俺の怒られる理由が増えるからやめろ!そんな事を思いながら呆れた顔をする星南に視線を戻す。

 

「はあ…貴方本当に何をしてるの?私は千奈の面倒を見てって頼んだのに…何で貴方が面倒事を起こしてるの?」

 

「すみません…でも映像にはなかったけどあいつらが先に2人のこと馬鹿にしてたんですよ…それで何とかしないとって思って…」

 

ネットに上がっている映像は俺が反撃として滅茶苦茶な事を言ってる所から始まっており極月学園の2人が絡んでいた所は写っていない、そのせいで事情を知らない人が見ると急にアイドルを叱責し始めた化け物にしか見えない俺にとって都合の悪いものになっている。

 

「ほう…それで女の子を泣くまで詰ったのか?」

 

俺の苦しい言い訳に雨夜が突っかかってくる。

 

「そうなんですけど…あいつがやってるのは嘘泣きっていうか…」

 

「…貴様弁解の余地は無いという割には随分と言い訳を並べるじゃ無いか」

 

「ご、ごめんなさい」

 

雨夜は鬼の形相で睨んでくる。星南は厳しい事を言っていても節々に優しさを感じて怒られていてもまだ気持ちが楽だが雨夜は違う…シンプルに厳しくて滅茶苦茶怖い…怒りが収まらないのか雨夜は俺に近づいてきて説教を始める。

 

「貴様には前から一言言ってやりたかったんだ…今年に入ってからいくつ問題を起こせば気が済む!星南が何回も注意していただろう!行動を改めようと思わないのか!」

 

「す、すみません!で、でも問題って言っても俺悪気がある訳じゃ無いですよ?よくない噂とかで周りを勘違いさせてるだけで…」

 

「ほう…貴様は悪気もなく周りが止める中女子寮で土下座をし続けたのか?」

 

「それは…その…へへ、そんなに見つめられると照れちゃうな…」

 

「睨んでるんだ!生徒会がどれだけ貴様の奇行の対応をさせられてきたと思っている!」

 

「ひぃ…ご、ごめんなさい!」

 

言い訳のしようがなくなって放った俺の軽口に雨夜は怒髪天を衝く勢いで怒ってくる。おい…こんな状況でどうやって同情させればいいんだよ…そんな俺が哀れに写ったのか、

 

「燕、そのくらいにしてあげてちょうだい。彼は自分の担当アイドルの為なら手段を選ばなすぎるだけで悪気自体は本当に無いのよ」

 

星南が助け舟を出してくれる。

 

「だが星南!こういう輩は釘を刺しておかないと今回みたいに他所で迷惑をかけるんだ!」

 

「ええ、こんな事になってしまった以上私からも後でしっかりと釘を刺しておくわ。でも今はそれよりNIAの話をしましょう」

 

「まあ…星南がそう言うなら」

 

星南が言ってくれたおかげで雨夜も落ち着きを取り戻してくれた。雨夜が怖すぎたせいで何とかしてくれた星南が女神に見えてくる…

 

「それでこれからどうするの?」

 

星南は俺の今後の動きについて聞いてくる。なんだかんだで心配してくれているのだろうか…同情させるには悪くない状況だが俺は一旦それよりも気になっている事を確認する。

 

「その…これから事の前に倉本は大丈夫なんですかね?なにかあると僕倉本グループに命を狙われると思うんですけど…」

 

「プロデューサーさんは私のお家のことどう思ってますの…」

 

「それは問題ないわ。今回炎上してるのは貴方だけで2人は巻き込まれてる可哀想なアイドルというのが動画を見た人の見解みたいよ」

 

「ならやばいじゃん!」

 

「印象は最悪でしょうね。でも実害が出てる訳じゃないし、最悪事の経緯を話せば何とかなるわ」

 

おい…全然大丈夫じゃないじゃん…なんかあったら星南と倉本にまた迷惑かけるって事じゃねえかよ…でもまあ、

 

「…最悪の事態は避けれてるな。俺の悪名がえげつない事になってるけど…」

 

「ふん。自業自得だな」

 

「わかってるから言わないで…悲しくなっちゃう」

 

嫌な事を言ってくる雨夜に言葉を返しながらどうやって同情させるか考える。自分から話す場合露骨に言いすぎると俺の思惑がバレそうなんだよな…会話の流れでできるだけ俺の現状がどれだけヤバいのか伝えたい。

 

そんな風に俺が話す言葉に悩んでいると、

 

「星南星南、質問。この動画だけじゃみんなにプロデューサーが急に怒って暴言を吐いたように写っちゃう。何とかならない?」

 

篠澤が星南に質問する。

 

「そうですわ!私たちが揉めている所を皆さんに見せればプロデューサーさんだけ悪く言われる事は無くなりますわ!」

 

「それが…その部分映像がどれだけ探しても見つからないのよ」

 

「まあ全体を載せるよりこいつが罵倒している所だけの方がバズるには都合がいいからな。話題性を重視して誰もあげていないんだろう」

 

「そんな〜」

 

「名案だと思ったのに…」

 

篠澤の考えが不発に終わった時、俺も1つ悪くない同情のされ方を思いついた。ここで星南に協力してもらえないと俺たちは終わりなんだ…どんな手を使っても協力してもらうぞ。

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