諦めたPと篠澤広   作:ラ メ ル テ オ ン

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同情作戦

「…あったとしても弁解なんかに使わねーけどな」

 

「どうして?」

 

「集団心理って知ってるか?人って群れると極端な考えにも疑問が持てなくなるんだよ。もし弁解して炎上の矛先が篠澤や倉本向いたら?

 

…炎上に首突っ込んでる人間は叩ければ何でもいいからそうなるのもあり得ない話じゃない。あの時も言ったけど人気商売やってる以上炎上は致命的なんだ。矛先が2人に向いてない状況で弁解するメリットが無い」

 

俺は床を見ながら少し寂しそうに語る。題して「全ての責任は俺が負いますよ」作戦。

 

ぶっちゃけ俺が起こした事を俺が責任取るって言ってるだけなんだが…この言い方をすれば悲劇の主人公の様に見える。

 

俺の狙い通り少しだけ沈黙が流れた後に星南が口を開く、

 

「…それだと貴方が言われも無い非難を受け続ける事になるわ」

 

「今更だろ、俺嫌われ者だし慣れっ子だよ」

 

俺の自虐的な発言にさらに空気が凍ったような気がする。

 

「プロデューサー、私はプロデューサーの事好き、だよ」

 

「私も一緒にいて楽しいと思ってますわ!」

 

「…ありがとう。少しだけ楽になったよ」

 

俺の炎上に巻き込まれた思わず2人も慰めに来ている。

 

…ひとまず同情されるまではクリアできたと思って良さそうだ。なら次は俺に共感してもらいつつ俺の計画をどれだけ希望の一手に見せれるか…だな、

 

俺が考えた計画は側から見れば穴だらけ、だから俺に共感させ自分のことの様に思わせて簡単に見捨てられない様にしないと乗ってくれる可能性が低い…

 

だからこっからは絶望を演出しろ痛々しいくらいに哀れに見せろ、希望は絶望の中にしか生まれないんだから。

 

「貴方の方針はわかったわ。これから証拠の動画が見つかったとしても弁明する気は無いのね」

 

星南は俺が作った重い空気を意に介さず話を続ける。

 

「まあ…その方が色々と都合いいしな」

 

「じゃあ尚更これからどうするの?貴方今の自分の状況を理解出来てる?」

 

「ハハ、はっきり言ってくれればいいのに…わかってるよ。今の俺にプロデューサーとしての価値はない」

 

俺も空気の重さに拍車をかける為にに去年の自分、篠澤に出会うまでの自分を思い出して諦めているかの様なふりをする。

 

「…プロデューサーどうしたの?」

 

「ん?別にどうもしてないよ。ただ現実を見てるだけだ。今まで界隈内で嫌われてただけでも営業先がなくて満足にプロデュースできてなかったんだ…それが今や界隈内外に悪名が轟いてるんだぞ。ぶっちゃけ打つ手が無い」

 

「そう…なんだ。ままならない、ね」

 

諦めモードの俺に篠澤も少し言葉に詰まっている。

 

…悪くない両親の葬式の時みたいなどろっとした空気が漂う感覚。篠澤の反応が少し気になるけど…まあ大丈夫だろ。普段から捨てられちゃうだの何だの言ってるんだ、今も内心興奮してるかもしれない

 

「それで…具体的にどうするか決めてるの?」

 

星南は深刻な顔で聞いてくる。こっから勝負をかけてやる。

 

「まあ…1番ベターな選択肢は星南に篠澤のこと任せて初星辞めることだろうな。学園長も就職先探してくれるって言ってたし」

 

「えっ…」

 

俺の発言にこの部屋の誰もが黙り込む。俺が諦めてしまえば起こりうる未来に空気がどんどん悪くなる。沈黙と諦めが混ざったその場にいる全員が固まってしまうほど重苦しい空気。そんな絶望の中で俺は、

 

「でも…俺はそんな結末は嫌だ。まだやりたいことも叶えたい夢も山程あるのに極月学園のクソ女に俺の人生潰されてたまるか!何より…3ヶ月もプロデュースしてんのに篠澤のライブ2回しか見れてないんだぞ!ここで諦めるくらいなら何でもやってやる!だから、星南力を貸してくれ」

 

この状況に抗うための情けない理由を語る。

 

「もう俺1人じゃどうしようもない…でも俺嫌われ者だから他に助けてくれそうな人居ないんだ」

 

誰も手を差し伸べてくれない可哀想な人間を演出する。

 

「…計画はあるの?」

 

「ある。上手くいけば俺達全員メリットがある最高のプランが」

 

絶望を見せた、俺の心が折れてしまえば起こりうる未来も明確に想像させた。そしてそれに抗う自分を演出した。そして助けられるのはお前しかいないんだと伝えた…ここまですれば星南なら…

 

「はあ…しょうがないわね。話だけは聞いてあげるわ」

 

星南は困った様に微笑んで承諾してくれた。よっしゃ!同情されて俺に有利な展開で計画を打ち明けれるのはでかい!これなら何とかなるかもしれ…

 

「けれど、その前に貴方の担当アイドルと話し合いなさい」

 

「へ?」

 

そんな俺の思考を遮って星南は呆れながら俺の隣を指を差す。差された方を見ると、

 

「し、篠澤さん、このハンカチを使ってください」

 

「…うん」

 

篠澤が静かに大粒の涙を流していた。

 

「は!?ちょ…!何で泣いてんの!?」

 

「貴様は馬鹿なのか?貴様が学園を去るなどと吐かすからだろ!」

 

「早く篠澤さんに謝って下さいませ!」

 

雨夜と倉本は今にも掴みかかって来そうな勢いで迫ってくる…いやでもこいつ普段から…ってこんなこと考えてる場合じゃねえ!俺は急いで篠澤の前に行き、

 

「悪かった!本当にごめん!辞める気なんてないんだ…その…この状況なんとかしようと思っていっぱいいっぱいだったんだよ」

 

頭を下げて謝る。やばい…想定外すぎて言葉が全然出てこねえ…

 

「…プロデューサーの事なんて知らない」

 

篠澤はそう言って俺がいる方と反対に顔を逸らす。あっ…これ相当怒ってるかも…

 

「篠澤…その…」

 

「ぷい」

 

篠澤の顔を見て謝ろうと顔を逸らした場所に移動すると篠澤は俺の顔も見たくないのかまた反対方向に顔を逸らす。やばいやばいやばい…話を聞いてくれないどころか顔すら見てくれない…どうしよう…

 

「…時間も丁度いいし私達は食堂でお昼ご飯にしましょうか」

 

「はあ…そうだな」

 

「そ、そうしましょう!」

 

そう言って星南達は生徒会室から出て行った。ありがたい気を利かせて2人きりにしてくれだんだろう。周りの目がなくなって気にする事がないなら俺には最後の手段がある…俺は、

 

「篠澤さん配慮に欠ける発言本当にすみませんでした!」

 

本日2回目の土下座をする事にした。

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