諦めたPと篠澤広   作:ラ メ ル テ オ ン

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突撃!961プロ!

 

昨日あれから学園長に頼み込んで極月学園の校長でもある黒井社長にアポを取ってもらった。交渉の会場は黒井社長が経営している961プロの事務所。篠澤の朝練を終えて961プロの事務所についた俺は、

 

「でっけえビル…」

 

目の前にあるビルの大きさに驚く。これが961プロの事務所…これを建てるのにどれくらいの金がかかるんだろ。

 

アイドル事務所ってそんなに儲かるのか?そういや100プロも学校建ててるし将来は俺も金持ちなれるかもしれない。俺は上手く行った未来を想像しながら遅れない様に時間を確認する。

 

「9時半…予定の時間の30分前だな」

 

ああ…緊張する…こんなでかいビル建てる様な人を脅しにいくなんて…深夜テンションで立てた予定に苦しめられるあの感じに似ている…学園長に頼み込んでる以上失敗もできないしめちゃくちゃ腹痛え…

 

だけどまあ最終兵器にも協力してもらったし黒井社長を言いくるめる準備は完璧と言ってもいいだろう。ただ一つ、

 

「じゃあどこかでお茶しよう、よ」

 

「遅れたら殺されるから却下」

 

篠澤がついてきている事を除いて…

 

「む、なんでも言うこと聞くって言ったの忘れたの?」

 

「…忘れてないから連れて来たんだろ?帰りにどっか連れて行ってやるから今は我慢してくれ」

 

「わかった。楽しみにしてる、ね」

 

俺は何とか篠澤のご機嫌を取る…今朝のランニングの時に駄々をこねられ約束の手前断ることもできず事務所まで連れて行く羽目になった…これから2週間こんな我儘に付き合わないといけないのかよ…と言うかこいつはついてきて何する気なんだ?

 

「そういや理由聞いて無かったけどなんでついて来たんだよ」

 

「961プロのトップアイドルの人達に会えるかもしれないから。出来ればサインも欲しい」

 

「…会えたとしても気まずいと思うぞ」

 

「それはそれで…ふふ、楽しそう」

 

「そうですか…」

 

これから脅しに行くところに楽しそうについて来る相変わらずな篠澤を見て昨日の事を思い出し俺は、

 

「その…篠澤ごめんな」

 

「どうしたの?」

 

「もしこの計画がうまく行ったら多分NIA始まる前よりアイドル活動やりやすくなっちゃうからさ…嫌だろ?」

 

篠澤に謝罪する。

 

学園長に認められていた事に舞い上がって何の相談もなく方針を決めていたことに昨日家に帰ってから気づいた…

 

その上思いついた方法も一発逆転ホームランを狙うため成功してしまえば一気に有名になり篠澤の求める苦しくて楽しいアイドル活動ができる期間は限られてしまう。

 

自分でこんな状況にしてなんとかする方法が担当アイドルの楽しみを奪うなんて自分勝手にも程がある…

 

自己嫌悪が深くなる様なしばしの沈黙の後、

 

「ふふ、そんな事気にしてたんだ」

 

先ほど沈黙が何だったのかと思うくらい篠澤はいつもの様に笑っていた。

 

「そんなことって…1番優先してた事だろ?」

 

「うん。でも、ね。プロデューサーは私のやりたい事をいつも叶えてくれる。だからたまにはプロデューサーもやりたい事をやるべき。それにNIAが始まってからずっと計画にはなかった問題ばかり起きてる…私今すごく楽しい、よ。」

 

「…それプロデューサーとしてだいぶ致命的ですよね?」

 

「ふふ、そうだね。でもプロデューサーのそういうところが好き」

 

篠澤はそう言って慰めてくれている。

 

本当に篠澤のこういうところにいつも助けてもらってばかりだな…よく考えたら疲労で倒れた時から良いところを見せた覚えがない…いい加減自慢できる様なプロデューサーにならないと…そう思った俺は

 

「そう言ってくれると気持ちが楽でありがたいよ…でもそろそろ俺も情けない所だけじゃなくてすごい所も見せないとな。見てろよ〜近い内に『頼れるかっこいいプロデューサーが好き』って言わせてやるから」

 

篠澤に宣言する。

 

「ふふ、じゃあ楽しみに待ってる、ね」

 

「ああ、存分に期待しろ。じゃあ俺は黒井社長から契約書取って来るから近くの公園で待っててくれ」

 

「わかった。いってらっしゃい」

 

篠澤に見送られつつ961プロのビルに入って行く。よし、まずは黒井社長から契約書をもらってカッコつけてやる!

 

________________________

 

「…という配信をするので。白草四音さんと藍井撫子さんに出演していただきたいんですが…」

 

「…くだらん。あの人が連絡を取って来るから会ってみれば…放っておけば勝手に自滅する貴様にわざわざ手を差し伸べると思ったのか?話がこれで終わりなら帰っていいぞ」

 

意気込みも虚しく配信の計画を語る俺を黒井社長は一蹴して帰宅を進めて来る。

 

断られるのは予想していたとはいえ目の前でここまで露骨に失望されると傷つく…雨夜も言っていたが初星学園に対抗意識がある以上この状況で契約書を取るなんてなかなかに無理ゲーだ。正にこのまま話し合いが終わりかねない大ピンチ…

 

だが俺はこの状況を予想して準備をしていた。『ピンチはチャンス』その言葉になぞるなら予想できているピンチはチャンスでしかないと言う事。俺は、

 

「…じゃあ最後に1つだけ」

 

鞄から用意していた資料を取り出し黒井社長に渡し、

 

「安心してください。この話は今までの話と違って面白いと思いますよ。なんせ…あんたが初星学園から引き抜いたアイドルの話なんで」

 

隠していた敵意を少しだけ黒井社長に向ける。いい機会だ…契約書を取るついでに去年の鬱憤を晴らしてやる。

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