「如月美波里(きさらぎひばり)961プロに所属している高校生アイドル。トップアイドル達と比べると少し見劣りしてしまうがアイドルとして素晴らしい活躍を見せる彼女…ですがここまで有名になったのにはきっかけがありました」
俺は、資料に書いてあるアイドルについてわざとらしく説明する。
「きっかけとなった記事の見出しは『悲劇のアイドル、如月美波里』。最高のアイドルになりたかった彼女は初星学園の門をくぐり1人のプロデューサー科の生徒と協力してNIAランキング2位を飾ると言う素晴らしい実績を残しました。
しかしそのプロデューサー科の生徒はとんでもない問題児でした。協力とは名ばかりにアイドルへの叱責はもちろんレッスンという名の体罰も日常茶飯事。如月美波里は夢を叶える為にそれらを耐えるしかありませんでした」
「…くどい。一体何が言いたいんだ?」
わざとらしすぎる説明口調にムカついたのか黒井社長は早く本題に入れと急かしてくる。
「やだな〜僕は黒井社長の素晴らしいプロモーションを振り返っているだけですよ?いいから最後まで聞いてくださいよ」
俺は白々しい態度をとりつつ咳払いをして話を続ける。
「おほん。そんなアイドルにも救いの神が訪れますそれが黒井社長、貴方です。貴方は如月美波里を初星学園から引き抜き悪徳プロデューサーに一泡吹かせることに成功しました…
それがこの記事に書いてあることです。この記事が出てから美波里はネットを中心に有名になり961プロのアイドルとしてそれなりの活躍を見せていきました」
これがが如月美波里が有名になった記事の概要だ。しかしこの記事には一つ世間に知られてないやばい部分がある、
「本当に素晴らしい記事ですね…まあ嘘じゃなければの話ですが」
この記事は事実無根の捏造記事。そのプロデューサーが色々と問題を起こす問題児だった為信憑性が溢れ出てしまっただけで記事に証拠の一つすら上がってはいない。
「妄想が過ぎるな…そこまで言うなら証拠はあるんだろうな?」
黒井社長は俺に無罪の証明を押し付けて来る。
まあ…そうなるよなムカつくがこんな事を言い出す以上俺もそれなりの証拠を見せないといけない。だがそのプロデューサーが明確な悪徳だった証拠も善良だった証拠もない。それなのに俺がこの記事が嘘だと確信出来るには簡単な理由がある。
「学園長に聞いてもらったらわかりますよ。俺そんなことしてないんで。じゃないと未だに初星学園に在籍できるわけないじゃないですか」
その悪徳プロデューサーは俺の事、如月美波里は去年の担当アイドルだからだ。
そして俺が学園内で嫌われまくっている理由の最たる例がこの記事だ。美波里が極月学園に転校してしまった時周りは同情的だった。
あの少数精鋭の極月学園、しかも黒井社長が直々に俺が停学をくらっていないタイミングでスカウトに来るなんて運が無かったな、来年また別のアイドルを育てようぜ、そうやって俺を励ます声ばかりだった。俺はクラスメイトに同じ夢を追う仲間として信頼されていた…この記事が出るまでは、
この記事が出た時俺のことを信じる者はいなかった。
理由は簡単その方が色々と辻褄が合うから、俺は成果も出すがその分問題も起こす人間。今年ほどじゃないが去年もそれなりに問題を起こしていた。クラスメイト達は隠していた本性がついに露呈したんだとそう結論づけた。
それまでは俺が悪意を持って問題を起こしているわけじゃないとみんなが理解してくれていた。
だから俺のトラブルメイカーな部分を受け入れられていたんだ…それが裏でアイドルを虐待してるなんて分かったらこの学園に通っている奴は存在自体が許せないだろう…
その記事のせいで自分のプロデューサー業に支障が出たなら尚更だ。一度変わってしまった関係性はもう元には戻らない。俺はクラスの嫌われ者として今までもこれからも過ごしていく事になるだろう。
過去を振り返るのもそこそこにして黒井社長を睨みながら脅しかける。
「じゃあ本題に入りますね。これが嘘だと世間にバレたくなかったら白草四音と藍井撫子の出演を確約する契約書を書いてもらえますか」
黒井社長は少し驚いた様な顔をした後、
「フフフ、フハハハハハハハハハ!いやはやまさか学生の分際でこの黒井崇男を脅しているのか?くだらんと言ったのは撤回しよう。貴様は馬鹿で無知で…見てて哀れに思うくらいに滑稽だ。笑わせてもらったのに悪いが貴様がいくら脅そうとも答えは変わらん。さっさと帰れ」
俺の脅しを笑い飛ばした。
「…後学のために何で断るのか聞かせてもらってもいいですか?」
「今の貴様の事を誰かが信じるんだ?最近アイドルを泣かせたばかりだろう、記事の裏付けにしかならないではないか。もう少し頭を使ったらどうだ?」
黒井社長はやるだけ無駄だと煽りながら指摘する。
今の俺は知名度はあるが信用がない、この状況でこの事実を白日の元に晒してもただの燃料投下。
炎上の炎が俺の身を焼き尽くすだけだろう…だがそんな事は俺だって分かっているその為の秘密兵器だ。ここまで想像通りの展開になると笑えて来るな…俺は顔がにやけない様に注意しながらスマホを取り出す。
「そう言うと思って一つ動画を撮ってきたんですよ〜これ見てもらえたら大人しく帰るので最後に見てもらえませんか?」
「チッ…。さっさと再生しろ」
なんだかんだで話を聞いてくれる黒井社長に言われた通りに再生ボタンを押す。
『見えておるかね黒井くん!』
「は?」
黒井社長は再生された動画に映る学園長に驚きの声を上げる。さて…秘密兵器の出番だ!黒井社長に吠え面をかかせてください!学園長!