「今回の件で貴様がそれなりに使えることがわかったからな。星南が居ない間貴様が生徒会に入って雑用をしろ」
「え…嫌かも…」
俺は雨夜の提案を爆速で断る。星南に色々と動いてもらってるから手伝ってもいい…と言うか手伝いたいんだが…
「無論タダとは言わん。報酬としてレッスンの内容にあるイメージトレーニング、その教材を貸してやる。篠澤に初星学園を卒業して行った先輩方のライブ映像を見せてやろう」
「いや…利益云々じゃなくて雨夜がパワハラしてきそうで怖い」
「する訳ないだろう!貴様は私のことを何だと思っているんだ!」
「ほら!すぐ怒るじゃん!手伝ってミスしたら絶対殴ってくるだろ!」
星南が居ない状況で雨夜に怒られるは流石に怖い…篠澤に見せた情けない姿を生徒会の女の子達に見られたら俺は…もう噂とか関係なしに初星学園で生きていけない…そんな怖がっている俺を、
「安心してくださいませ、燕先輩はたまにすごくおっかない時もありますけど普段はすごく優しくて頼れるお方ですわ」
倉本が安心させようと雨夜のいい所をあげる。本当に?俺の前だとずっとおっかないんだけど…だけど流石にここで手伝わないのは俺のポリシーに反するし…俺はしばらく悩んだ後、
「…優しくしてね」
「安心しろ。貴様が真面目に取り組む限り暴力など使わん…真面目にやる限りな」
渋々提案を受け入れた。
雨夜はニヤニヤしながら俺がビビるような事を言っている…怖い…だがこれで俺と篠澤の方針が大体固まった。
篠澤は俺の考えたレッスンでアイドルとしての質を高める、俺は生徒会を手伝って星南がやる仕事を肩代わりする、わかりやすくてありがたい。
この作戦会議も大体終わりと言ってもいいだろう。だから俺は昨日からずっと気になっていた事を聞く、
「…てか配信できる人探してきてくれるのはありがたいんだけど。倉本のプロデュースに支障ねえの?」
こんなに無茶を言ってやる事を増やしたんだ倉本に影響が出ない方がおかしい…そう思い申し訳なくて顔を逸らしながら聞く俺に、
「問題ないわ。この時期に忙しくなるのは元々わかっていたから前もって色々と動いていたの。私がいなくても影響がないようにしているわ」
星南は問題ないと語ってくれる。流石だな…不測の事態に備えて前もって準備をしておく、不測の事態を起こした俺とは真逆だ…そんなプロデューサーと言うか人間としてすごい星南のいいところを少しでも真似したくて、
「じゃあ何するのか教えてくれよ。星南がどんなプロデュースするのか滅茶苦茶気になるし」
「ええ、いいわよ!」
プロデュースの内容を聞く。星南は自分が考えたプロデュースを語れるのが嬉しいのかテンションが露骨に高くなっている。
年相応のところが見れると親近感が湧くな…そう思ってニヤニヤしていると自分が鼻息を荒くしている事に気がついたのか星南は咳払いをして話し始める。
「こ、こほん…千奈にはこれからまず倉本グループがお世話になっているテレビ局の番組の出演や雑誌雑誌のモデルをする事で有名になってもらってその合間に私や燕と一緒にレッスンをしてオーディションでも勝てるような実力を身につけてもらうわ!」
なるほどな…俺の癖のあるプロデュースとは真反対。
NIAに出ているアイドルなら誰しもが考えるくらいに何も変わり映えのしないまさに王道のプロデュース。
一見星南のプロデューサーとしての実力不足に見えるが倉本と星南のコンビならこれが1番いい方法だろう。
王道とは強者が歩く道、ありえないくらい太い実家を持つ倉本とこの学園で1番のアイドルである星南が歩くなら下手に策を練るよりこの方法が1番効果が出る。
「ありきたりだけどNIAで結果を出せるのはお前らくらいしかいない自分達の特性を上手く使った方法だな…」
俺は何でもできる星南を羨ましく思いながら星南のプロデュースを褒める。
星南も自分のプロデュースに自信があるのか嬉しそうにしている。そんな星南を誇らしく思ってるのか雨夜も随分とご機嫌だ…倉本のプロデュースが上手くいきそうで生徒会の面々はすごく楽しそうにしている。ただ1人、
「で、倉本は何でそんなに浮かない顔してんの?」
倉本を除いて、
星南が語るプロデュースを聴いている時倉本は何かに気づいたようで次第に表情が暗くなっていった。別に星南のプロデュースに問題なんてないと思うんだが…
「どうしたんだ?星南の作戦は悪くないと思うが…」
「気になる点があるなら遠慮はいらないわ。あなたの希望に沿うようにするから安心して意見を頂戴」
「いえ…!星南お姉さまのプロデュースに不満があるわけではないんです!その方法を使えば私でもNIAですごく有名になれるくらい素晴らしい作戦だと思いますわ。ただ… 私が有名になればなるほどにプロデューサーさんの噂が…」
そこまで言って察したのか星南と倉本の表情が暗くなった。
「そうなったとしてもこいつの自業自得だ。まずは自分がNIAで勝ち抜くことを考えろ」
「ですが…私のせいで更に噂が広がってしまうと…プロデューサーさんに迷惑が…」
なるほど…これは少しだけ困ったな。
別に俺の悪評が広まる事自体今の状況的に俺のメリットになるんだが…倉本はいい子だから俺を踏み台にするような状況に気が引けるのだろう。
倉本の良さは天真爛漫さ、俺に後ろめたく思っていてはテレビに出てもそれがうまく発揮できるとは思えないな…倉本が気持ちよく仕事ができるようにするには…俺は少し考えて、
「いや…そうしてくれないと俺が困るんだけど…」
「へ?」
倉本に新たな視点を与えれるように言葉を選ぶ。
「あの時も言ったけど俺の悪評が広まれば広まるほど篠澤と倉本の顔が世間様に知れ渡る。つまり倉本が有名になると間接的に篠澤の知名度が上がるわけ。そんで篠澤が営業できない今、倉本が有名になる事以外で篠澤の知名度を高めれないんだよ。もう一回言うぞ?倉本だけが篠澤の知名度を上げれる」
「私だけが…」
「そう!倉本だけが篠澤のピンチを救うことができるんだ!」
「千奈、私の事助けて欲しい」
篠澤は俺の意図を理解してくれたのか倉本に助けを求めている。
「だから倉本頼む。俺の悪評を広めるついでに倉本の可愛さも広めてきてくれ」
「…はい!任せてくださいませ!」
「…順序が逆だろう」
俺は倉本に物事のいい部分を100倍増しくらいで伝える事で何とかやる気を取り戻させる。
倉本は素直ないい子だ、なら俺がそれを求めている事を伝えて『友達を助けられるのは君しかいない!』とでも言っておけば人一倍頑張ろうとしてくれるだろう。篠澤にやる気を出させる事に比べればこんなの楽勝だな。
「…すごいわね」
「ん?何が?」
「何でもないわ。それで私は明日から動き始めるけどあなたはどうするの?」
「あ〜俺も明日からでいいかな?今日の間に確認しておきたいことがあって…」
「わかったわ。じゃあ明日あなたの授業が終わったら生徒会室に来なさい。一応言っておくけど来週で夏休みに入るから生徒会はやる事が山積みよ。覚悟しておきなさい」
「…わかった」
そんな足が重くなるような事を星南に言われて作戦会議は終わった。空腹を感じた為壁にかけてある時計を見ると昼休みが終わるまで20分になっていた…
「時間やべぇ!篠澤!食堂に急ぐぞ!じゃあまた明日!」
「じゃあまた、ね」
「ええ、また明日」
俺と篠澤は急いで食堂へと向かい昼食を掻き込む。
早く食べる事に慣れていないのか苦しそうに飯を食う篠澤を眺めながら一条に篠澤を預けた時のことを思い出す。
あの時みたいな急成長は結局俺の前では起きることは無かった…あの急成長がなければ前座を務めたライブも成功していたかわからないと思えるほどに印象的だった。
できるなら俺もそれを起こしたい。そう言えばあの時篠澤は成長したのには他の理由があると言っていた。あの時は俺の事を慰めてくれているのかと思っていたが…もしそれが本当なら今こそ必要だ。
だけどまあ…篠澤は昼から授業あるしとりあえず放課後だな…