諦めたPと篠澤広   作:ラ メ ル テ オ ン

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成長の秘訣

 

「…で、あの時言ってた成長した理由って何なんだ?」

 

「咲季が作ってくれた特製ドリンクの事、だよ」

 

俺は篠澤の授業が終わった後早速篠澤の成長の秘訣を聞きに行く。

 

アイドル科の教室の近くで話している為炎上のおかげで更に冷たくなった周りの視線が気になるが気にしても何もできないので気にしないでおこう…

 

「え?ドリンク飲むだけでそんなに変わるの?」

 

「うん。飲むだけですごく体がポカポカして体の内側から力が出る気がする」

 

…生姜湯でも飲ませたのか?俺でも作れるならあいつらに手間取らせなくても済むな。俺は篠澤にそのドリンクの概要を聞いてみる。

 

「そのドリンクの材料とかってわかるか?」

 

「わからない」

 

「じゃあ見た目はどんな感じだった?」

 

「見た目は…すごく光ってた、よ」

 

光る?えっ?あいつ人の担当アイドルに何飲ませてんの?ペースト飯といい材料を見た目から判別できない物ばかり作るのは何なんだ…

 

咲季の作るものに不安を感じながらも少しでも美波里に勝てる確率を上げたい俺は、

 

「…聞きに行くしかねえな」

 

篠澤に明日からのレッスンに備えて休むように伝えてRe;IRISのメンバーと一条が使っている教室を目指す。

 

道中はアイドルからの冷たい視線以外特に問題はなく教室の扉の前に着く。俺は扉をコンコンと叩いて入っていいのか確認する。

 

「は〜いどうぞ〜」

 

藤田の返答と共に俺達はRe;IRISの事務所に入った。部屋には藤田と月村だけで用があった咲季はどっかに行ってるみたいだ。

 

「お疲れ、今日って咲季いる?」

 

「げっ…咲季とプロデューサーは今席を外してま〜す」

 

藤田は俺の顔を見るなら嫌そうな驚愕の声を上げる。

 

いや、まああんな無茶振りしてるから仕方ないんだけど面と向かって言われるとなかなかくるものがあるな…俺は無茶振りを心配してる藤田に今日来た理由を話す。

 

「…安心してくれ頼み事しに来たわけじゃないから。ちょっと聞きたい事と相談があってきたんだよ」

 

「なるほど〜それならよかったです。NIAでも問題起こしてたからまたとんでもない事に巻き込まれるかと思いましたよ〜」

 

藤田はさっきの反応を取り繕うかのように可愛こぶっている。ユニットでHIF出るからNIAに出てない藤田も知ってるとは…俺の想像よりだいぶ悪評広まってるな…

 

悪くない。これなら配信に興味を引くやつもそれなりに多いはずだ。そう思って思わず笑みがこぼれそうになる。

 

「…咲季の事待つなら変な顔してないで座ったら?」

 

そんな俺を月村は相変わらずの態度でもてなしてくれる。

 

「じゃあそうさせてもらうよ」

 

Re;IRISの面々とは篠澤の朝飯を咲季が使ってる都合上毎朝顔を合わせている為月村のこんな態度にも慣れっこだ。

 

俺は月村の言葉に従って席につく。席についてからは特に会話のなく微妙な沈黙が俺たちを包んでいた。

 

気まずい…2人とも俺がまた面倒事を起こすと思っているのかすごく微妙な顔で見てくるし、いや俺が悪いんだけど…

 

クソ!一条がいたら相談ついでに黒井社長に一杯食わせた事でもしゃべって時間潰せるのに何でこんな時に限っていないんだよ!心の中で愚痴るのも程々にして俺は気まずい空気を何とかするために口を開く。

 

「…HIFの準備は順調?」

 

「…順調だよ。新曲の振り付けにも慣れてきたし今度は絶対美鈴達には負けない」

 

「…そっか」

 

月村はそう言ってすごく悔しそうに顔を逸らす。

 

一条率いるRe;IRISと星南率いるBegraziaは篠澤が前座を務めたライブの少し後に対バンライブを開催して勝負をしていた。結果はBegraziaの勝利。Re;IRISの面々はそれなりにショックを受けていた。

 

一時期は女子寮の食堂で声を荒げて言い合いしたりしてたくらいだ。まあ4月はしょっちゅうしてたが…それなりに仲良くなってからは見ていなかった。今回真っ先に星南を頼った理由も倉本グループのコネという理由がが大きいがRe;IRISの3人にあまり負担をかけたく無かったという思いも僅かに含まれている。Re;IRISがそんな状態だからか、

 

「これはぶっちゃけた話なんですけど、今咲季結構メンタルに来てて…あまり精神的な負担がかかるような事増やしたくないんですよね。なので絶対にプロデューサーに頼み事するのだけはやめてください」

 

藤田も俺に釘を刺してくる。

 

「…わかった。本当に聞きたい事があるだけだからちょっと咲季と一条と喋ったら大人しく帰るよ。信用がないのはわかってるけど信じて欲しい」

 

「ならよかったです!…で聞きたいことって何ですか?」

 

藤田は俺を信じてないのか俺の話を精査しようとしてくる。本当に信用がないのは悲しいんだけど…

 

「いや咲季が作るドリンクのレシピ知りたくて…」

 

俺の発言に藤田と月村は顔を見合わせた後、

 

「貴方…頭おかしいの?」

 

「絶対やめた方がいいと思いますよ?」

 

俺を止めてくる。

 

「いやプロデュースに必要なんだよ。…後本当に光る飲み物飲んで体に影響ないか確かめておきたい」

 

「なら…今日のレッスン後飲む予定だった物があるから飲んでみる?」

 

月村はそう言って得体の知れないドリンクを机の上に置く。透明な容器に入っているからドリンクの色がわかるが、青紫色に光ってる…本当に光ってるんだ…てか食欲減退色の飲み物作るなよ…

 

「…じゃあ飲んでみて頼むかどうか決めるよ」

 

「そうしてくださ〜い」

 

月村からドリンクを受け取って恐る恐る口に入れてみる。口に入れた瞬間、

 

「まっず!?何これ!?お前らこんなの飲んでんの!?」

 

舌が同時に苦味と酸味を感じ取り驚愕の声を上げる。

 

咲季がいつも作ってるペースト飯が可愛く思えるくらいに殺人的な味だ…篠澤が飲むと体がポカポカするとか言ってたけど不味すぎて命の危機感じてるだけじゃないのか?想像よりとんでもない味に苦しんでる俺を見て、

 

「フッ。それ全部飲まないと効果出ないよ」

 

「…え?」

 

月村は鼻で笑いながら気が遠くなりそうな事を言ってくる。これ全部飲むの?酒飲んでる方がマシなくらい不味いんだけど…もう若干口をつけた事を後悔し始めている俺を見てこの前の仕返しができると思ったのか、

 

「早く飲みなよ。あんまり時間かけると咲季が帰ってきちゃうよ。咲季がせっかく作ったドリンク残してる所見たらレシピ教えてくれるかわからないと思うけど」

 

「なっ…!」

 

「そうだな〜咲季が怒ると私達でもどうなるかわからないし…早く飲んでくださ〜い。プロデューサーさんのかっこいい所みてみた〜い」

 

2人は俺を急かしてくる。

 

くっそ!マジで飲みたくねえ…でも効果がわからないものをプロデュースに組み込むわけにはいかねえし…覚悟を決めろ俺!俺は覚悟を決めるのと同時に勢いよくクソ不味いドリンクを胃に流し込む、そして1分くらいが経った頃…

 

「はあ…はあ…ほら飲みきったぞ…」

 

「お疲れさま。プロデューサーに頼りすぎてた貴方にしては結構頑張ってたね」

 

何とか飲みきった…不味い上に少しドロドロしてるせいで喉に引っかかってクソ飲みにくかった…なのに何故か吐き気は覚えない不思議な体験だった…

 

良薬口に苦しとは言うけど苦すぎる。これを飲む苦しみを知っているからか月村もなんかいつもより優しい…

 

「お疲れ様で〜す。まあ咲季世話焼くの好きなんで飲んだ事伝えたら喜んで作ってくれると思いますよ」

 

「ほんと?ならよかった…で、これどんな効果あるの?」

 

「効果も知らずに飲みきったの?…そう言う趣味?」

 

青い顔をしながら変な事を言ってる月村を放って藤田が効果を説明してくれる。

 

「えっと確か…体の回復に必要な栄養素と体を作る栄養素が沢山入ってるからスタミナが付くらしいですね。名前もスーパースタミナドリンクだし」

 

「そうなんだ…関係あるかわかんないけどなんかすごい体ポカポカしてきた」

 

「私も飲み始めた時はそうなってたよ。今ではあんまり感じないけど」

 

何故か誇らしげにしている月村を横目にこのドリンクの効果を実感する。体が温泉に浸かった後みたいに温かい…少しだけ汗もかいてきた…飲んだ直後でこれなら本当に回復効果がありそうだ。俺がこのドリンクを篠澤に飲ませたくなった時、

 

「戻りました…って何でいるんですか?」

 

タイミングよく一条が教室に戻ってきた。一条の後ろに咲季もいるが…話に聞いていた通りどこか上の空で元気がない。こんな状態で頼み事を聞いてくれるかわからないな…ダメ元で聞くだけ聞いてみよう。

 

「それは勿論頼みがあって来たんだよ」

 

「NIAの件なら手伝いませんよ。誰がどう見てもあなたの自業自得なので」

 

「お前じゃないです〜勘違い系男子。俺が手を借りたいのは咲季、お前だ!」

 

俺は一条を煽りながら元気のない咲季に元気を出してもらうためにも明るく語りかける。

 

「…えっ?私?別にいいけど…何する気?」

 

咲季は疲れているのかすごく微妙な反応をする。…俺が嫌われてるだけじゃないよね?

 

「咲季が作ってるスーパースタミナドリンクだっけ?あれ出来れば3週間くらい篠澤に飲ませてやって欲しいんだけど…」

 

「それくらいならお安い御用よ!」

 

咲季はいつもの様子に戻って俺の頼みを承諾してくれる。

 

よかった…無茶振りを警戒してただけだった…朝飯の時に普通に喋るのに裏で嫌われてたとか辛くて泣いちゃうからな。

 

「マジで助かるよ〜この前篠澤が飲んだ時滅茶苦茶体力ついてたからライブパフォーマンス上げるために飲ませてやりたかったんだ」

 

「貴方が倒れた時の話ね…ならついでだから貴方の分も作ってあげるわ!SSDを飲んでいれば過労で倒れるなんて事絶対に起きないんだから!」

 

そう言って咲季は俺にお節介を焼いてこようとしてくる。いや…毎朝こんなの飲みたくねえよ!俺は断ろうと口を開くが、

 

「…いや、別に俺の…痛え!」

 

「……?」

 

いつのまにか後ろに回っていた一条が痛みで俺の口を閉ざす。えっ?何で俺の指をあらぬ方向に曲げようとしてるの?マジでどうしたんだこいつ…

 

「咲季さんは少し元気になったばかりなんです。落ち込むような事言ったらわかってますよね?」

 

困惑している俺に一条は小声で脅してくる。こいつ…!声がマジだ…担当アイドルが弱ってる時は人が変わるの忘れてた…俺は急いで、

 

「…有り難くいただきます!いや〜咲季のお姉ちゃん力にはいつも助けられてばっかりだな〜流石みんなのお姉ちゃん!これからお姉ちゃんって呼ばせて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

咲季が喜びそうな言葉を並べる。

 

「え〜もうしょうがないわね〜貴方と広の分は多めに作ってあげるわ!」

 

「わあ〜嬉しい…ありがとうございます…」

 

効果はテキメンで俺は激まずドリンクを毎朝飲む権利を手に入れた…これで効果なかったら絶対に許さないからな…

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