生徒会室についた俺は、
「雨夜さん…実はお願いしたい事があって……」
夏休みなのに生徒会室にきて書類整理をしていた雨夜に早速頭を下げる。
「……断る」
雨夜は俺の無茶振りを警戒しているのかわざわざ立ち上がり大袈裟に距離をとって俺のお願いを断ってくる。
規模にもよるが初星学園で握手会をやるなら問題を起こさない為に多少人手がいる。そして夏休みでHIF前の今人を集めるには人望がある副会長で面倒見のいい雨夜の力がいる。
俺に人望か金があればHIF前で忙しい雨夜に頼まなくてよかったんだけどな……少し罪悪感を感じながらも俺は雨夜が取った距離を詰めつつお願いを続ける。
「そんなこと言わずにお願いしますよ〜篠澤のプロデュースで協力して欲しいことがあるんです〜後輩の笑顔の為になんとかなりませんかね」
「ええい! 断ると言ってるだろう!」
敬語で話しかける俺を見てまた面倒事を押し付けられると思ったのか雨夜は俺から逃げる様に生徒会室から足早に去っていく。
「ちょ! 待って! せめて内容聞いてから判断して!」
あまりに問答無用すぎて思わず雨夜の腕を掴んでしまった俺の手を振り払いながら雨夜は、
「頼みたい事なら知っている! なんで……! なんで私が貴様の頬にキスしないといけないんだ!」
「……は?」
意味のわからないことを言い出す。
「……なんだその反応は」
「いや…アイドルの雨夜にそんなこと頼むわけないだろ……篠澤の握手会の手伝いして欲しいんだけど……」
「そ、そうか。すまない早とちりだ……聞かなかった事にしてくれ……」
雨夜は俺の言葉を聞いて少し顔を赤くしながら咳払いをしている。
もしかして……星南と一条との作戦会議の時に名前上がったから星南が警戒しとけって言ったのか? いや……そこまで節操ないわけじゃないんですけど……
俺と雨夜の間で少し気まずい時間が流れた後、
「握手会をするのはわかったが私は何を手伝えばいいんだ?」
雨夜が話を進めてくれる。
「ファンの誘導をして欲しいんだ。来ても30人くらいだと思うから雨夜含めて4人もいれば何とかなると思うんだけど……」
「貴様には手伝ってくれる人が集められんから代わりに集めてくれと……そういう事か?」
「そういう事です……」
「……」
俺の無茶振りに雨夜は頭を抱えて少し黙り込んだ後握手会の詳細を聞いてくる。
「本当に…人任せなプロデュースだな……それで握手会はいつやるんだ?」
「3日後」
「……断っていいか?」
「俺にできる事ならマジ何でもやるのでお願いします! 何なら今やってた書類整理も代わりにやるから! それに多分1時間もしないうちに捌き終えると思うので時間はそこまでかかりません! なのでどうかお願いします!」
俺は最後の一押しに土下座を温存しつつできるうる限り頭を下げながら懇願する。多めに見積もって来てくれるファンは30人、1人1分間握手の時間を設けても40分かそこらで終わるはずだ……だからお願いします雨夜様! 取り敢えず人手さえ集めてくれればこっちでなんとかするので!
そんな事を思いながらいつでも土下座に移れるように姿勢を整えていた俺に雨夜は、
「はあ……それなら代わりにHIFの運営スタッフとして働いてもらうがそれでいいな?」
交換条件を持ち出して来た。
「いいけど……俺悪い意味で有名人だからあんまり使えないよ?」
「心配するな生徒会がやる筈だった裏方の仕事を貴様にやってもらうだけだ。そうすれば私も星南もHIFに集中できるからな」
なるほど……生徒会ってそんなにやる事あるんだ……かなりブラックだな。でも正直……この提案はありがたい。生徒会の奴らには世話になりっぱなしですごく申し訳なかったからな……少しでも助けになれるなら喜んで引き受ける。だから俺は、
「そういう事なら任せてくれ! 星南にも世話になりっぱなしだから借りも返せて丁度いいしな!」
胸を叩いて承諾する。
「なら……この書類整理を頼むぞ。夏休みで帰省シーズンの今さっさと手伝ってくれる生徒を探して置かないと安心できんからな」
「わかった! 最高の人選よろしくな!」
そう言って雨夜を見送った後俺は早速書類整理に取り掛かる。
よっしゃ! 人手の方はなんとかなりそうだ。後は握手会の宣伝の方だけど……美波里に頼めばなんとかなるだろ。いや〜篠澤がどれくらい喜ぶの楽しみだな〜
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そうして迎えた握手会当日、
「ほ、本日はよろしくお願いします!」
「よろしくお願いしま〜す」
俺は手伝いに来てくれたアイドル科の白髪碧眼留学生とオレンジ髪のギャルを見て少し嫌な未来を想像して不安になる。
急に言ったから人を集めてくれただけでも滅茶苦茶有難いんだけど……こいつら篠澤より見た目のインパクト強くね? 楽しみにしてた握手会でファンの奴らが鞍替えしますとかにならないでくれよ……