あの騒動から大体2週間がたった。学園から事務所代わりの教室も貸してもらえ本格的にアイドル活動が始まった気がする。まあ……やってる事は変わってないけど……だが朝練と咲季の食事のおかげで篠澤の体力も順調に上がって行き、
「担当アイドルが暇を持て余してる。構って欲しい」
「はいはい、課題が終わったらな」
立派な構ってちゃんに進化していた。本当に成長期を甘く見ていた……朝のジョギングの最高記録は爆発的に伸びたわけではないが…身体の回復力は急速に上がった。初めたての頃は昼になっても部屋で寝ていて昼飯もしんどそうに食べていたが…今では10時くらいには動けるようになっている。そのせいで俺の作業が妨害されるんだが…
「どんな課題してるの?」
篠澤はそう言って俺の手元を覗き込んでくる
「金の計算だよ。プロデューサーならある程度できてないとダメだからな」
この学園では学生でもアイドル活動て得た収益は普通にもらえる。なのでプロデューサーの仕事に税金の調整だったりその他諸々面倒なものが追加される。今はアイドル活動をしてないから必要ないがが今後営業をしていくにつれ必要になってくるスキルだ。
1年の前期に授業で受けていた内容にサボっていた時にやっていた1年の後期内容を上乗せされた課題に少々手こずっている……俺結構頭良かったはずなんだけどサボるだけでここまで影響出るのか…恨むぞ…過去の俺……そんな過去の自分に心の中で恨み言を吐いていると、
「ここ代入する数値間違ってるよ」
篠澤は計算間違いを指摘してくる。
「……本当だ。なんでわかったんだ?」
「ふふん、私プロデューサーよりも学歴上、だよ」
篠澤は勝ち誇った顔で見下ろしてくる。こいつ…と言いたいところだが正直猫の手も借りたい状況な俺は、
「篠澤様、私に知恵を授けていただけませんか?」
プライドを捨てることにした。
「ふふ、いいよ。その代わり広って呼んで」
「広様、早く教えてください」
広様は俺が置き忘れていた教科書を覗いていたらしい。時々忘れるがこいつは天才だった。一回見ただけで授業受けていたはずの俺より理解している…本当にアイドルしてていい人材か?
「すげえ〜あんなにわかりづらい教科書の内容こんなにわかりやすくなるんだ」
「いろんな状況を覚えるだけだから簡単だよ。これで私の相手できる、ね」
そう言って篠澤は隣に椅子を持ってきて座ってくる。こいつ……海外行ってたからってのもあるんだろうけど距離感おかしいんだよな……俺は近づいて来た篠澤から離れる様に、
「じゃあ丁度いいしミーティングでもするか」
ホワイトボードの前に立って油性ペンをとる。そういえばこの教室が使えるようになってからもなんだかんだでミーティングをしていなかったな。まあまだそんな事する段階じゃないだけなんだけど……しかしモチベ維持にもそれっぽい事は大事だ1回くらいは経験させてやろう。俺は大きく咳払いをした後に、
「じゃあ篠澤お前がやりたいことを教えてくれそれで今後の方針を決める」
プロデュースの指針とミーティングの話題が欲しくて篠澤に語り掛ける。篠澤は少し悩んだあと、
「私もレッスンに参加したい」
現状ではかなり難しい事を要望してきた。ええ……まじですか…?
「…今参加しても最後までできないってわかってるよな?」
「うん。でもやりたい」
頭抱えながら色々考える。篠澤は貧弱だ。回復力は上がってるけど……体力面はまだ倒れる時間が10分から11分に変わったレベルの成長しかしてない。流石に早すぎる気がするが……
「だめ?」
篠澤は少し諦めたような笑顔で話しかける。頭のいいこいつことだ今レッスンに混ざったとしても途中で倒れる可能性が高いこともそれを心配して俺が止めようとしてるのもわかっているのだろう。正直俺もやらせたくはない。篠澤がレッスン中、力を出し尽くして倒れるなんて目に見えた展開はプロデューサーとして止めるべき……止めるべきなんだが……
プリマステラより俺を選んでくれた篠澤のやりたいことは全部やらせてあげたい。倒れるとわかってレッスンに参加したいなら背中を押してやりたい。
「はあ…しょうがねえな。わかったトレーナーには俺から話しておくよ」
「本当?いいの?」
篠澤もダメ元だったのか驚きを隠せずそしてとても嬉しそうに聞いてくる。まあ授業に出る機会も減って友達と会う時間も減っていたしちょうどいいだろ。
「ああ、でも俺がレッスンに参加できる時限定な。絶対他の人に迷惑かけるから」
「ふふ、本当に最高のプロデューサー」
今後の方針は篠澤のやりたい事最優先で決まった。篠澤は間違い続ける俺にもう一度チャンスをくれたんだ……今度は絶対に間違えない。たとえ俺の負担がどれだけ増えようとも…
「じゃあとりあえずこの1ヶ月の目標はレッスンで倒れなくなる事!目標達成目指して頑張るぞ〜!」
「おお〜!」