VOICEROID in バカテス   作:かなりまな板だよこれ

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プロローグを投稿してから一年以上経つのにまだ戦争が始まってないという。
これ、僕が生きている間に完結できるのだろうか……。


第三問 自己紹介と設備と引き金

あの後も皆とわいわいと話していると、本鈴が鳴ったので、席に着くことにしました。と言っても座るところは椅子ではなく座布団ですが。

そしてしばらく待ってるとヨレヨレのシャツを貧相な体に着た、いかにも冴えなさそうな雰囲気のオジサンが入ってきた。

 

「二年F組担任の福原慎です。よろしくお願いします」

 

そこまで言うと福原先生は薄汚い黒板にチョークで書こうとして……止めた。ああ、そういえばチョークがありませんでしたね。

 

「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されてますか? 不備があれば申し出て下さい」

 

先生のその言葉に何人かが不備を申し立てる……が、我慢しろだとか木工用接着剤で直せだとかまともな対応をされること無く終わった。

 

「必要なものは極力自分で調達するようにしてください」

 

挙句にこの発言…………さすがは最底辺のクラスですね。

 

「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね……廊下側の人からお願いします」

 

先生のその言葉に、廊下側の前の方にいた生徒が立ち上がった。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

と、そういえばそこは木下君の席でしたね。

しかし相変わらず男であることが残念なほどの美貌ですね。現にクラスのほとんどが木下君を見て見惚れてますよ。

かくいう私は……まあ少しだけですね。アキ君の容姿の方が好きですし。

 

「うぐぉぉぉっ……」

 

そのアキ君の顔を覗き見ると、顔を赤くして頭を抱えながら悶えていた。きっと心の中で木下君は男だと言い聞かせているんですね。

そんなアキ君を冷たい目で眺めてると、その隣にいたマキちゃんがアキ君の二の腕を思いきり抓った。

 

「痛っ⁉︎ ちょっ、マキちゃん、いきなり何するのさ」

 

「……べっつにー」

 

アキ君が抗議するとマキちゃんはそっぽを向いた。その表情は不機嫌そうだ。

マキちゃんのこの分かりやすい反応にさすがのアキ君も……あっ、駄目ですね。訳が分からない顔をしています。全く、相変わらずの鈍感ですね。

 

「…………土屋康太」

 

と、いつの間にかにムッツリーニの番になってました。相変わらず口数が少ないですね。これだけだとクールに見えるのですが……

 

「島田美波です。海外育ちで、日本語は会話はできるけど読み書きは苦手です」

 

と、次は美波ちゃんでしたか。

 

「あ、でもだからといって英語が得意なわけじゃありません。育ちはドイツだったので。

趣味はーーー」

 

因みに美波ちゃんもアキ君を狙う雌……女性の一人でーーー

 

「アキを殴ることです」

 

「バイオレンス⁉︎」

 

ーーーと、まあ好きな子をついつい苛めちゃうツンデレタイプで……いや、グーで殴るからグーデレ?

……殴る?

 

「それは間違ってますよ美波ちゃん」

 

「ゆ、ゆかりちゃん……!」

 

私は親友の間違いを正すために立ち上がった。

 

「正しくは関節技をかけること、でしょう?」

 

「あれ⁉︎」

 

「それもそうね」

 

「そこじゃないよね⁉︎」

 

おや? アキ君は何故驚いているのでしょうか? 技を喰らってる本人ですから美波ちゃんの趣味が間違っていることぐらい分かっているはずですのに。

……と、まあ冗談はともかく

 

「因みにこれはアキ君にとっても悪い話じゃありませんよ?」

 

「へ?」

 

「よく考えて下さい。関節技をかける時って自然と身体が密着しますよね」

 

「そうだけど……それが?」

 

ここまで言ってもアキ君は分かってない様子……やれやれ、物分かりが悪いですね。

 

「つまり、ちょっとした痛みに目を瞑ればーーー」

 

そこで私は一旦言葉を切り、アキ君に近づき…………

 

「うわっ⁉︎」

 

「合法的に女性の身体に触れられるチャンスなんですよ?」

 

そのままアキ君の左腕に抱き着いたあと、そう告げた。

 

「ゆ、ゆかり⁉︎ あんた何してーーー」

 

「い、いやいや、何言ってるのさゆかりちゃん! いくら身体が密着されても本来あるべきものが感じられないから全然チャンスじゃない左腕と右腕それぞれが捻じ曲がるぅぅぅぅぅっ⁉︎」

 

「あるべきものが無くて悪かったわね!」

 

「それは密着度が足りなかっただけですよ!」

 

アキ君の失言がきっかけで私達とアキ君の間で少し過激なスキンシップが繰り広げられる。

 

「あのー、今は自己紹介中なので馴れ合うのはあとにして下さい」

 

私と美波ちゃんがアキ君に胸の感触を確かめさせてあげていると、先生から注意がはいった。

 

「今回はここまでにしておくわ」

 

「次はもうちょっと密着させてあげますよ」

 

と言っても私は威力を上げる気は全くありませんがね。これ以上上げるとアキ君が大怪我しそうですし。

その辺の威力調節は美波ちゃんに任せます。関節技については彼女の方が上手ですから。

 

「うぅっ、真実を言ったまで…………何でもありません、サー‼︎」

 

まったく、アキ君は……。

と、次は私の番ですね。

 

「結月ゆかりです。趣味はゲームと音楽鑑賞、特技は歌うことです。

友達の中にはゆかりんと呼ぶ人がいますが、変なのでなければ好きなように呼んでください。

これから一年間よろしくお願いします」

 

まあこんな感じの当たり障りの無い挨拶で良いでしょう。

 

『おぉ、大人っぽいな』

 

『ああ。なんというか、全てを包んでくれるお姉さんって感じがするよな』

 

『これで胸は子供並じゃ無ければ―――』

 

ドスッ(←余計なことを言った人の座布団にシャーペンが刺さる音)

 

「何か、言いましたか?」

 

『今日も結月さんは惚れ惚れするぐらいお綺麗ですね!!』

 

「そうですか。お世辞でもありがとうございます」

 

ふぅっ、なんとか無難に終わりましたね。

 

そのあとも何事も無く自己紹介が続いて、アキ君の番になった。

 

「吉井明久です。気軽にダーリンと呼んで下さいね♪」

 

『ダァァーーリィーーン‼︎』

 

クラス全員の野太い合唱。対象が私では無いとはいえ、思わず吐き気がします。

 

「……失礼、忘れて下さい。とにかくよろしくお願いします」

 

とりあえず手で吐き気を抑えながら座るアキ君に一言。

 

「……アキ君、いくらモテないからって男に走るのはさすがに…………」

 

「ちょっ、誤解だから!」

 

その後、アキ君の弁明を適当に聞き流していると、あっという間にマキちゃんの番になった。

さて、どんな失態を見せてくれるのでしょうか? 私、楽し……心配です。

 

「私の名前は弦巻マキ! みんな、よろすぃくしゅっ!」

 

……よろすぃくしゅ……なるほど。

 

「最後のはマキちゃん流の新たな挨拶ですね」

 

「違うよ! くしゃみしただけだよ!」

 

「はいはい。そこの二人、静かにしてくださいね」

 

先生が私達の行動を窘めるために教卓を叩く。

その一撃で教卓が一瞬にして崩れさり、ゴミ屑と化した。

 

「……えー、替えを用意してくるので少し待っていてください」

 

そう言い残し、先生は教室を出た。きっと、今度の教卓は上手くやってくれることでしょう。

……それにしても

 

「これは酷いですね」

 

卓袱台はボロボロで、ちょっと寄りかかっただけでミシミシと音をたてる。多分全体重をかけたらすぐにも壊れるでしょう。

座布団には綿がほとんど入ってなく、また至る所が修繕されている。修繕されてない所を探す方が難しいぐらいに。

畳はほとんどが腐っていて、ちょっとした衝撃でも抜け落ちそうだ。

黒板は薄汚くボロボロで、左端が欠けている。その近くに置かれた黒板消しは消す面が色鮮やかで、ちょっとやそっとじゃ綺麗にならなさそうだ。

窓は所々ひび割れており、穴があいた所はビニール袋によって補強されていますが……まあ焼け石に水でしょう。

 

……とてもじゃありませんがここが教室とは思えません。長い間放置された廃屋と言われても特に疑問ををもたないでしょう。

勉強への意欲を高める為教室ごとに設備に格差があるのは知っていましたが、まさか最底辺クラスの設備が授業に支障をきたすレベルとは思いませんでした。

これはなんとしてでも戦争を起こさなければいけませんね。そのためにもまずは代表だと思われる坂本君の説得を……

 

「あれ?」

 

坂本君がいません。更に見渡してみると隣の席のアキ君までもが姿を消していました。

おかしいですね。さっきまでここにいましたのに……

 

「マキちゃん。アキ君と坂本君を知りませんか?」

 

「え?

……本当だ、いない。どこ行ったんだろう?」

 

「……全く、隣の席なのに気づかなかったなんてマキちゃんの目は節穴ですね」

 

「その発言ブーメランだよゆかりん!」

 

マキちゃんのポンコツさに嘆いていると、後方のドアが開き、そこから噂のアキ君と坂本君が入ってきました。

 

「アッキー、どこ行ってたの?」

 

席に戻ったアキ君にマキちゃんが尋ねる。

 

「えっと……ほら、先生が来たよ」

 

ドアに視線を向けると先生が代わりの教卓を持って入るところだった。それを見てマキちゃんは渋々と下がった。

……まあはぐらかされた感がありますがここは追及は避けておきましょう。また先生に注意を受けて教卓が犠牲になるのもなんですしね。

……てか次の教卓も駄目そうなんですが。

で、その後も何の変哲も無い自己紹介が続き……

 

「坂本君、キミが自己紹介最後の一人ですよ」

 

「了解」

 

あっという間に坂本君の自己紹介の番になりました。

 

「確か、坂本君はクラス代表でしたね」

 

福原先生に聞かれ、鷹揚にうなずく坂本君。

この学校では振り分け試験を受け終わった時点でクラスが振り分けられ、そして各クラスの中で一番点数が高い者にはある肩書きが与えられる。それが、クラス代表。

ということは坂本君は今このクラスの中で一番の成績を保持しているということになります。

まあ最低クラスの代表なんてとても誇れるものではありませんがね。むしろ恥です。

……そもそもこのクラスにいる時点で恥ですがね。

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも好きなように呼んでくれ」

 

好きなようにですか……。ならお言葉に甘えて今日から彼のことをげろしゃぶと「まあ変な呼び名で呼んだら性別問わずぶっ飛ばすがな……特に結月」……チッ。

 

「さて、皆に一つ聞きたい」

 

坂本君が各設備に目を向ける。それにつられて私達もそちらを見る。

ふむ……改めて見ても酷すぎますねこれは。

 

「Aクラスは冷暖房完備の上、お菓子食べ放題、さらに座席はリクライニングシートらしいが……」

 

ここで坂本君は一呼吸おいたあと、静かに告げる。

 

「……不満は無いか?」

 

 

 

『大ありじゃぁぁぁぁぁっ‼︎』

 

 

 

Fクラス生徒のむさ苦しい心からの合唱。

 

「だろう? 俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」

 

『そうだそうだ!』

 

『いくら学費が安いからと言ってこの設備はあんまりだ!』

 

『だいたいAクラスだって同じ学費だろ! 改善を要求する!』

 

文句を言っていますが勉強しなかった貴方達が原因ですよね?

 

「みんなの意見はもっともだ」

 

それぞれの不平を聞いた坂本君は嬉しそうにそう告げる。

 

「で、これは俺からの提案だが……」

 

そして坂本君はーーー

 

「FクラスはAクラスに試召戦争を仕掛けようと思う」

 

戦争の引き金を引いた。

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