第四魔法科高校の優等生   作:悪事

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 百合香お嬢様の出番は次回に持ち越し。
 裏で色々と動いている最中になります。


入学編【10】

 

 

 第一高校の一科、二科の差別に端を発した放送室の占拠事件は、“学内の差別撤廃を目指す有志同盟”、通称:同盟と現生徒会が学内における公平、平等について議論を行う公開討論会を開くという形で話が纏まった。

 

 尤も、素直に討論会だけで話を終わらせるとは到底のこと思えない。おおかた、ブランシュの人間が学内に侵入、なんらかの破壊工作や秘匿情報の奪取を目論んでいることが既に明白だった。この事実は部活連も、生徒会も、教師陣も情報を共有済み。知らないのは一般生徒たちや同盟に属している二科生となる。

 

 

 たかが学内の差別意識が大仰な問題に発展したものだ。

 

 エガリテも、ブランシュも、十師族も、今の自分にとって関わる必要はない。必要はないが、向こうから突っかかってくるのではどうしようもない。

 

 なるべく接触を控えようと心掛けているが入学してからどの勢力にも目を付けられるのは何なのだろうか。達也はまったく非科学的、論理的でないと理解しながらも、日頃の行い、というものを僅かに考えて、すぐさま思考の外に追いやった。

 

 

 どうせ、今日までの辛抱だ。これが過ぎれば、また平穏な学生生活が戻ってくる。ブランシュへの微かな不快感を抑え、達也は公開討論会当日を迎えた。

 

 

 

 当日の校内の様子は何処か浮足立っており、二科生側も一科生側も、落ち着きのない様子だった。全校生徒が薄っすらと理解していたのだろう。どういう顛末を辿ろうと今日という日が学校の体制の激変させることになると。

 

 一科生たちは、討論会の流れ次第では自分たちが差別主義者と弾劾されるのではないか。二科生は、討論会で負ければ更に自分たちの待遇が悪くなるのではないか。双方の曖昧とした不安ゆえに一科生も、二科生も神妙な面持ちで講堂に集まっている。

 

 その人数は一科、二科ともに生徒会側が事前に予想した人数を大幅に上回っていた。講堂に来ていない少数派の生徒は、周囲の目や環境を気にしない豪胆な者ばかりで部活や自主学習などに励んでいる。

 

 

 とはいえ、さすがは第一高校。優秀な人間ばかりを集めただけあって、誰かが決めてくれるといった日和見主義の人間はほぼ存在していない。誰もが明確な自分の意志の下に行動をしている。国内の魔法科高校でも最難関とされる第一高校に合格しているというだけあって、潜在的にだが誰もが優秀さの片鱗というものを示していた。

 

 

 そんな優秀な生徒たちが揃いも揃って、学校側のミスによる差別問題で討論会まで開催しているとは。

 

 うんざりした気分を隠し切れないまま講堂に入ると一科、二科の生徒たちの視線が殺到する。眉目秀麗ゆえにどうあっても視線を惹いてしまう深雪と別行動をとってまで目立たないようにしたというのに、悪目立ちをしている。

 

 

 

 

 

 二科生でありながら風紀委員として目立ってしまった俺の立場は一科、二科のどちらにしろ、関心の的となるようだった。風紀委員としての責務から講堂の警備に入る羽目となったことを僅かに後悔しつつ講堂の裏手へ回る。

 

 講堂裏では部活連や風紀委員の先輩らが校内の警備位置の確認している。

 

 離れた箇所で討論会の準備をしていた深雪がこちらに気づいたのか、美しく微笑みながら俺の方へ駆け寄ってくる。

 

「風紀委員のお役目お疲れさまです、お兄様。……講堂の警備に就かれたのですか?でも、確かお兄様が御担当なされているのは図書館の方だったのでは」

 

「ああ、図書館の方は沢木先輩に代わってもらった。深雪が生徒会の仕事をしているのを、傍で見届けたくてね」

 

「……まぁ、そんな。お兄様ったら、深雪のことをそこまでお気に為されるなんて」

 

 護衛(ガーディアン)の都合上、距離を置くのを避けただけなのだが、深雪が喜んでいるのなら無味乾燥な事実を並べ立てる必要はない。

 

 俺の急な位置変更も事前に風紀委員のトップには話を通しているのだから問題なし。傍観者として完全に他人事の目線で周囲の動きを目で追いかける。

 

 

 

 中条先輩はおどおどしながらも十文字先輩を含む部活連の生徒たちと話し合い中で、市原先輩は校内の地図から襲撃者の行動予測をやり直している。

 

 敵対勢力の対策にあたって陣頭指揮に立つのは、勇敢さを湛えて風紀委員の荒くれものたちを統率する麗人、渡辺委員長。彼女はこちらの入室に気が付くと、僅かに首をしゃくってこちらを呼びつける。校内における上司の呼びつけを無下にはできない。

 

 俺は足音を殺し、風紀委員長の下へ向かった。

 

「──お呼びですか?」

 

「呼びつけたくもなるさ。講堂に入った時から今に至るまであんまりにも冷静過ぎる君の態度を見てはね。実は一年ながら、こんな鉄火場に巻き込んでしまったことを少しは後ろめたく思っていたんだぞ、私は。だというのに君ときたら困惑してる一科生・二科生たちを素通りして何食わぬ顔で警備に就こうとしている。肝が太いものだ」

 

「そうおっしゃられても。こと此処に及んで狼狽えようと、身構えようと、やることは何も変わらないでしょう。警備として校内に侵入、その手引きをした者たちの制圧。とはいえ、俺は正面切っての斬った張ったは苦手なもので。俺は無理のない範囲でやらせてもらいますよ」

 

 

 正面切っての戦いを不得意と嘯いた達也に摩利は苦笑いを浮かべた。

 

「おいおい、服部を決闘で打ち負かした君がそんなことを言うのかい?」

 

「あれは不意打ちみたいなものですから。一回きりのペテン、魔法というよりも手品かと。実際、次からは対応されることが分かり切っています」

 

「君なら、その対応に応じた策も練っていそうだが?」

 

「買い被りですね。おれはいつだって出来る事しかやれませんよ。これは誰だってそうでしょう?尤も先輩たちは後輩である俺たちよりもできることが多いでしょうが」

 

 達也の言いぶりに、風紀委員長である摩利は肩を竦めた。

 

「随分と買ってくれているようで嬉しいよ。……達也君、一応言っておくと今日は朝から嫌な予感がしていてな。間違いなく荒れるぞ」

 

「覚悟はしてきましたが単なる予感で終わって欲しいものです」

 

 摩利はくすりと、平然としている可愛げのない後輩に微笑みかけた。その女性的な魅力に溢れた笑みに達也は悪寒を感じた。同い年の少女、付き合いの長い親戚の美少女が似通った蠱惑的な笑みを浮かべて悪だくみをしていたのを想起する。

 

「知らんのか、達也君?女の勘というのはよく当たるものだ」

 

 

 

 

 中条先輩や市原先輩たちが講堂に集まった生徒たちを着席させ、有志同盟の生徒たちが到着したところで生徒会との討論会が始まった。

 

 

 討論の先駆けとなったのは魔法競技系のクラブと非魔法クラブの不平等に関することだが、不平等の根底にあるのはクラブの所属人数と目に見える実績の数だ。クラブの人数と実績は予算と直結した要素。これについて特に実績もなく、人数も少ないクラブに予算を大きく割り当てろ、という弁論はさすがに無理があった。

 

 此処で大勢の生徒らが気づく。実は校内における実行力のある差別というものが少ないということを。

 

 教員の指導時間や雑草(ウィード)花冠(ブルーム)の呼称。あとは生徒会役員の選定条件。これが第一高校における差別と呼ばれるものの全て。

 

 部活動予算や魔法実習の指導範囲、図書館をはじめとした学内施設の利用時間など、一科と二科の間には大きな差がないことが明らかとなる。

 

 

 だが、それからも続く有志同盟の自論、というか難癖を七草会長は丁寧に正論で迎え撃っていく。しかし、どうにも達也はこの討論会にそこまで熱意を向けられない。なにせ、元は学校側の制服の発注ミスの産物だ。

 

 一科と二科の差別意識の改善?

 

 眼に見える制服の違い、というものが無くならなければ、差別というものは根本的に変わりようがないと達也は冷ややかな目で講堂を傍観している。

 

 堂々と討論を重ねる七草会長の傍らには護衛のように服部副会長が険しい顔つきで佇んでいる。講堂の壇上目掛けて野次が飛び交う。野次を前にしても整然とした主張を続ける会長に対して、中身のない野次や文句を行う有志同盟の方に薄っすらと疑念の目線が増えていった。

 

 意外なことに同盟に元々肯定的だった二科生側の生徒も疑念の眼差しを向け始めていく。当然のことだ、現状改革を掲げておきながら、討論会で口にするのは不平等に対する不満や文句だけ。

 

 改革への具体案が欠けている所為で、真面目に拝聴しようとしていた生徒たちの心証が徐々に悪化。講堂の雰囲気も同様に悪くなる一方。野次や悪態の声が大きくなりすぎて、討論会の(てい)が空中分解する直前で七草会長が自分の意見を同盟側に投げかけた。

 

 

「私は当校の生徒会長として現状に決して満足していません。時に校内で生徒同士の対立を生んでしまう現構造を解消したいと考えてきました。ただ、それは生徒会が強制して、どうにかなるものではありません。この差別問題は個々人の考えに依るものだからです」

 

 差別というものが如何に悪であろうと、それを理由に正義を振りかざして個人の考え方を無理に曲げるというものは差別と同等の悪行であろう。その理屈を聞き一科、二科の双方が同意するように七草会長を見上げていた。彼、彼女らの眼差しには疑念のような感情は見受けられない。

 

「差別構造の変革は生徒会としても目指すところではあります。しかし、あまりに早急な改革は別の問題を引き起こしかねません。仮に現状の差別を是正したとき、二科生側は一科生側を逆に差別しないと言い切れるでしょうか?」

 

 七草会長の意見に二科生側も一科生側も気まずそうに目を伏せた。差別されていたもの、差別していたもの、どちらの善悪も入れ替わってしまう可能性があるという事実を前に誰もが気まずさを覚える。自分の正しさに対する疑いが講堂中に靄のように蔓延していく。

 

 七草会長の後方に控えていた服部副会長も講堂にいた生徒たち同様、自責の念にかられて口を真一文字に引き結んだ。

 

「差別の解決は当校にとっての急務でしょう。しかし、それは新たな差別を作り出すことによる決着であってはならないと考えています。一科、二科の区分なく一人一人が当校の生徒であり、当校の生徒である期間はその生徒にとって唯一無二の三年間なのですから……当校での三年間を実りあるものにしたいと願うのは誰であっても同じでしょう。この願いは一科、二科に限らず“平等”なものであるはずです」

 

 有志同盟が自身の主張を正当化するために使っていた文言を此処に来て、七草真由美は一科、二科が共有すべき概念として持ち出した。これを否定することは同盟側の根幹を否定することになりかねない。反論を言い出せずに沈黙した同盟に代わって会場に拍手が沸く。手を打ち鳴らすのは一科、二科の区別もない。講堂にいた大多数の支持を生徒会側は獲得していた。

 

 対峙する同盟代表の人間が悔し気に七草会長を睨みつけるが既に大勢は決している。

 

 同盟の視線に敢えて応じず、七草会長は差別改革の本筋について主張を述べた。

 

「差別をなくすこと、逆差別を起こさないこと。私達に許されるのはこの二つだけだと思っています。丁度良い機会ですから、皆さんに私の希望を聞いてもらいたいと思います。──実を言えば生徒会には一科生と二科生を公的に差別する制度が一つ残っています。それは生徒会長以外の役員の指名に関する制限です」

 

 第一高校における具体的な一科、二科の差別条項。真由美が此処でそれを自ら議題として持ち出したのは、有志同盟から指摘を受けることを厭ったからか、それとも自分の本音として差別構造の変革のために持ち出したのか。どちらにせよ、七草真由美は自身の代で第一高校の差別体制を変えてみせるという強い意志を瞳に宿していた。

 

 講堂中の生徒や有志同盟の生徒たちすら野次を飛ばしていないのが、その証拠。

 

 

「現状の制度では、生徒会長以外の役員は一科所属生徒から指名しなければならないことになっています。この規則は、生徒会長改選時に開催される生徒総会においてのみ改定可能です。私はこの規則を退任時の総会で撤廃することで、生徒会長としての最後の仕事にするつもりです」

 

 どよめきが波となって講堂に広がる。野次を忘れた者たちは近くにいた生徒、同級生たちと意見を交わす。自然とざわめきが治まったところで真由美はその機に合わせて演説を続けた。

 

 

「最後の仕事……と言っても私の任期はまだ半分を過ぎたばかりですので少々気の早い公約になってしまいましたね。ですが、人の心を力づくで変えることはできないし、してはならない以上、それ以外のことで、出来る限りの改善策に取り組んでいくつもりです。それがより良い学園づくりになると私は信じてやみません──」

 

 満場の喝采が講堂に響き渡った。そこに含まれていた感情はアイドルに対する声援、ミーハーなもの、浮ついたものに近しかったが感極まっているというのは一様に同じらしい。

 

 一科も二科も、有志同盟ではなく真由美の主張を支持したということである。

 

 

 同盟の拙速な行動は結果として校内の差別意識の変革の一助とはなった。討論にこそ負けたようなものだが、結果として差別の撤廃を申し出た彼らの主張はほぼ通っている。結果だけを見れば、判定勝ちというものだが──。

 

 往々にして革新派は自分たちの目的達成だけでは満足しないものだ。彼らは自らの思い描いた手段で目的を達成することに拘るもの。

 

 

 更に同盟の裏で蠢く者たちにとってもこの結末は望むべくモノではなかったらしい。討論会が決着した直後、炸裂した轟音が講堂の窓を震わせ差別意識からの脱却という思想に酔っていた生徒たちの意識を強制的に覚まさせた。

 

 

 

 講堂の窓を叩き割って投げ込まれた紡錘形の物体。床に落ちた瞬間、それは白煙を撒き散らし生徒らの視界を潰そうとする。滞留性の高い煙を発生させるスモークグレネード。あちらこちらに投げ込まれた煙榴弾は、煙を拡散させることなく対応される。

 

 

 服部副会長がCADを操作すると噴き出した煙は逆再生さながらに戻っていき、その状態で窓の外にまで加重移動の魔法を掛けられて排除される。

 

 

 手際の良さに感心した達也が服部副会長の方を見ると、口を尖らせた彼は不満そうに目を逸らす。後輩と先輩のぎくしゃくした態度を見て、真由美と摩利の二人は揃って笑い合う。しかし、呑気に和んでいる場合でもないと理解していた彼女たちは、すぐに講堂に飛び込んできた襲撃者たちの制圧に加わった。

 

 

 動員されていた風紀委員たちの一斉の動きは一切の遅滞なく。生徒会役員は講堂にいる一般生徒たちを庇い、避難させ始めている。七草真由美が渡辺摩利へ小さく頷いた。

 

 

 広域知覚の魔法、マルチスコープによる偵察の結果を伝えたのだろう。周囲に伏兵がいないことを知るや風紀委員長、渡辺摩利は法機を操作して起動式を参照(リード)する。注がれる相子(サイオン)が煌めいて、現実の物理法則を書き換えた。

 

 顕れる仮想の負荷重量は襲撃者の身体に適応される。

 

 単純な加重移動の魔法だが、それによって荷重を掛けられた襲撃者たちはブラックアウトに似た状態となって瞬時に昏倒していった。手際の良さもだが、魔法式の構築から発動まで全く淀みがない。複数工程の魔法を一切のラグなく行使するという高位の魔法師にとっては当然で片付けられる技能。

 

 達也は薄く目を細めた。

 

「見事なものだ……俺には到底出来そうにない」

 

「……お兄様」

 

 心配そうに達也を見上げる深雪の目線。

 

 失言だったかと達也は僅かに恥じ入る。無いモノねだり、“普通の魔法”を安定して高速で使えないという自分の欠陥についてのぼやきを妹に聞かれてしまったことを、彼に残されていた情動が僅かに恥じ入ったのだ。

 

 達也の弱音を偶然にも聞いてしまった服部は、憮然とした態度を装って口を挟んだ。

 

「──だが、お前には他の者にできないことができるだろう、司波……。俺にできないことがあるように、お前にもそういったものがある。それだけの話だ。悔しいと、諦められないと思えるのなら、より多くを深く学べ。……この第一高校でな」

 

「……そうですね。これから勉強させてもらいます、服部先輩」

 

 衒いも、外連味もなく、素直に出た達也の言葉に服部は腕を組んで小さく頷いた。一科と二科、ささやかな先輩と後輩のやり取りを見て、真由美は少し拗ねたような、けれど嬉しげに笑って見せた。

 

「男の子ってズルいわよね。気が付いたら、お互いに認め合ったり仲良くなってるんだもの。でも、あの二人なら意外と良いコンビになるのかな?」

 

 笑っている真由美の傍で襲撃者を片付けながら摩利は軽口を叩く。

 

「さてな。アイツらにはまだ二年間という時間がある。どうなるかなんて今の時点じゃ決まりはしないさ。だがまぁ……案外、お前の言う一科、二科の差別を完全に撤廃するのは、アイツらの代になるのかもしれないな」

 

 真由美は生徒会長である自分の最後の仕事として校内における一科二科の不平等、生徒会役員の選定条件について改定することを公約とした。ただ、これまで続いた差別の意識が細やかな改定だけで全て消えるとは考えづらい。

 

 差別意識が消えるには大幅な制度改革だけではなく、それを多くの個々人が“実感”するための“時間”が必要になる。そればかりは既に三年生である真由美たちにはないもので。

 

 しかし、後輩たちに何かを託すことのできる時間はある。

 

「うん、私達の後輩なんだもの。私たちにできなかったことでも彼らなら軽々と飛び越えていける、そう信じるのが格好いい先輩ってものよね」

 

 

 講堂にいた生徒たちを避難させ終えると生徒会役員たち、それにトップである真由美も制圧戦に加わった。こうなっては襲撃者が爆発物や実弾を用いようと講堂の陥落は不可能。予想された奇襲は、予定通りに鎮圧されつつあった。

 

 達也と深雪は、講堂の外で起こっている轟音の方に目を向ける。重要機密などを取り扱う図書館や実技棟方面での爆発。多くの一般生徒が講堂にいる以上、生徒会役員の実力者たちをこの場から引き離すのはよろしくない。

 

 達也は、奮戦している風紀委員長へ告げた。

 

「委員長、俺は実技棟の様子を見てきます。可能なら制圧後に増援を回してください」

 

「お兄様、私もお供します」

 

 テロリストたちを迎撃する真由美と摩利は二人の頼りがいのある後輩たちを見て、力強く信頼の言葉を返した。

 

「二人とも気を付けて!」

 

「此処は手早く片付けるから無理はするなよ!」

 

 

 生徒会長と風紀委員長の許可を取り付け、達也と深雪は講堂を飛び出し駆けていく。テロリストたちが情報を盗もうとしている実技棟を目指して。

 

 

 達也は実技棟へと駆け抜けながら感心していた。

 

 此処まで計画通りに事が運ぶとは──。

 

 ブランシュの奇襲、第一高校側の抗戦。学内の混乱。

 

 全て、“夢の予行演習通り”。

 

 達也は既に体験している鉄火場を潜り抜け、今後の再確認をする。

 

“あとは百合香が干渉してくるタイミングまで、適当にブランシュの連中をあしらえばいい。俺が動くのは、渡辺摩利、七草真由美、十文字克人が学校から出た時だ”

 

 ブランシュを壊滅させるスケジュールは既に組まれている。これで俺たちが直接関与することなく事態を収拾されるだろう。

 

 

 

 多くの生徒たちの奮闘、努力の陰で四葉百合香の暗躍と策略が第一高校の命運を操作していた。

 

 

 

 





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