「起きてください人間ちゃん」
貴方は彼女に起こされて寝ぼけ眼を擦り目を覚ます。
「うっ、申し訳ないっスけどもう出社の時間っス」
申し訳なさそうな顔をする彼女に貴方は手短に朝の挨拶を終えると身支度を整える。
「じゃあ行くっすよ!」
貴方も昨日の事から、慣れたように彼女の体に身を預けた。
「出発進行っス!!」
魔界は一月かけて太陽が上り下りをするとは聞いていたが、貴方が外に出ると空は未だに暗闇の覆われていた。
――こんなにも夜が長いなんて不思議な光景だ――
「そういうもんすかね、私は日が出てるアチアチな日よりも涼しい夜の方が好きっスけど」
彼女は昨日より貴方が飛行に慣れていたのを感じたのだろう。
昨日より少し早い速度で街を駆け抜ける。
ちょうど出勤ラッシュとでも言うのだろうか、貴方の目にはすれ違い、合流し、あるいは追い越していく淫魔達の姿が見えるだろう。
――ここに居る全員が皆、働いてるのだろうか?――
「ん? そうっすね、町の隙間でセコセコ飛び回ってる全員、下級淫魔っスね」
――上級淫魔は違うのかだろうか――
「そういう人たちは職場が家というか家が職場というか……、自分の領地の城で酒池肉林っスね、移動する時もデカい籠に乗って下々の物が見るどころか近づかないっスよ」
――随分上下の格差があるように思えるな――
貴方は淫魔の社会構造は貴方の理解では資本主義を基盤としながら、供給の中枢を一極が掌握した社会だ。
魔力という生命線だけが握られている以上、自由に見えてその前提を握られているというある種のディストピアともいえるかもしれないと貴方は考えた。
貴方のそんな考えが伝わってしまったのだろうか、彼女はすこし説明に悩むような表情をする。
「案外、下っ端やるなら気楽で悪くはないっスよ? 娯楽は巷で溢れてるし、たまにエッチも出来るし……、まぁ、それが嫌で上に行くっていうなら大変なんスけどね」
――上に行く方法があるのだろうか?――
「あるっス、簡単っスよ、とにかく魔力をかき集めればいいっス」
彼女の珍しくニヒルな横顔は雄弁に“それが出来たら苦労はしない”と語っているように貴方には見えてしまう。
「魔力を貯めれば淫魔は上位の存在になれる。比喩じゃないッスよ? 下級と上級の差は存在レベルの力の差があるんスよ」
――つまり淫魔の社会はお金持ちだと強いということなのだろうか――
「まぁ、ありていに言えばそうっすね」
――どれくらいのお金持ちの人が上級淫魔になれるんだろうか――
「上級淫魔は大抵は大きな会社の社長をやってるから、そんくらい儲かってるレベルっすかねぇ……」
貴方の世界で言うなら、大企業の社長や財閥の当主に近いのだろう。
上級淫魔とやらは街を歩いていて偶然会うような相手ではない、まさに殿上人と言っても差し支えない者達だということは理解した。
「いやもう、私らレベルの給料じゃ一生働いてもそんな魔力は貯められないッスよ、そもそも淫魔は基本浪費家なんスけどね!! わっはっはっは!!」
わざとらしく笑い飛ばす彼女。
貴方は――