貴方は淫魔の国へ渡る   作:ばばばばば

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隠しフラグ 過去篇 学生時代2

 

貴方は夢を見る

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……、ダメっスね、また壊れちゃったっス……」

 

 

 

「あの子大丈夫? マジで壊れてない?」

 

「知ってる? あの子、近々除籍になるって」

 

「あー、それであんな風になってるの?」

 

 

 それからの私は、少しおかしくなったらしい。

 

 自覚はあった。

 

 寝る時間を削った。

 

 食事の時間も削った。

 

 休憩時間も、訓練場の端に座り込んで、頭の中で線を引いていた。

 

 

 傍から見れば妄想の世界に飛んでいるように見えたのだろう。

 

 そして、それは悲しいことに全くの事実であった。

 

 

 炉心。導管。外殻。安定環。排出環。供給陣。

 

 

 分からない構造を、自分の脳内で形に直す。

 

 頭で自分の形に直したものを、もう一度、教本の言葉に戻す。

 

 脳内に焼き付く程、部品を描き、頭の中でそれを組み立てて動かした。

 

 

 実物は出力できない、でも私の頭の中だけは誰にも制限できない。

 

 

「……これも失敗」

 

 

 幸いなことに訓練場には炉に関する実際のモデルや、様々な素材の部品があった。

 

 私はそれらを走査して、頭の中の素材として落とし込む。

 

 

「これじゃダメっス、この素材は私の魔力じゃ出力できない……」

 

 

 

「……またやってる」

 

 

 訓練場の端で、誰かが笑った。

 

 

「何やってるのかな」

 

「妄想と会話してるんじゃない」

 

「ロクに命令もだせないのに?」

 

 

 笑い声がした。

 

 私は返事をしなかった。

 

 返事をする時間が惜しかった。

 

 

 頭の中に、今ここにいる私を置いて、線を引く。

 

 そこから今通り過ぎた彼女たちの動き、周りの構造物、全部、全部丸ごとを描き起こす。

 

 

 妄想から妄執へ。

 

 しかし、その法則は現実の枠でなくてはならない。

 

 

 夜になっても、私は机の前にいた。

 

 

 食堂から戻る者達の声が廊下を通り過ぎる。

 

 

 誰かが私の扉の前で足を止めて、笑う声が聞こえる。

 

 

「まだ明かりついてる」

 

「ほんとに寝てないんじゃない?」

 

「次で落ちたら、努力全部無駄じゃん」

 

「だから面白いんでしょ」

 

 

 足音が去っていく。

 

 私は本を読み進む手を止めなかった。

 

 

「現行の作業手順は……、他に考えうるリスクは……?」

 

 

 私の声なんて、誰も聞かない。

 

 なら、誰にも聞かれない声を聞かせるにはどうしたらいい?

 

 

 朝が近づくにつれて窓の外が白む。

 

 紙の上の文字が、夜より少し薄く見えて、ようやく私は夜が明けたことに気づいた。

 

 

 淫魔は種族特性として、睡眠をさほど必要としないが、だからと言って不眠不休で活動できるわけではない。

 

 

 すでに私の手は震えていた。

 

 目の奥に激痛が走り、喉が割れそうな程に乾いていた。

 

 

 ―――だから何だ。

 

 

 しばらく時を置いて、扉の前から声がする。

 

 

 

「朝礼だよ。未来の炉材候補さん」

 

 

 同期の笑い声だった。

 

 

 私は本を閉じて立ち上がる。

 

 足元が揺れて、視界の端が暗い。

 

 それでも、立てた。

 

 

 まだ私は自分を使いつぶし切れていない。

 

 どうせ炉に使いつぶされるなら、その後でいい。

 

 

 だから、今は倒れるな。

 

 笑われても、壊れても、立っていろ。

 

 

「……まだっス」

 

 

 私はいつもの、気の抜けた笑みを貼り付けると部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

「今回の状況設定はさらに複雑だ。模擬炉にエラーが発生、貴様らは問題箇所を発見、作業員に指示を出してこれら復旧せよ」

 

 

 それは今までにもあったような試験内容であった。

 

 

「……しかし、今回は問題個所、その要因も発生個所もランダム、事実上の現場で発生する問題に近い形となっている」

 

 

「貴様らに最終的に求める実力のラインがこれだ。今回はその壁を感じてもらう……」

 

 

 その言葉に皆の顔が引き締まる。

 

 どうやら、次の実技で結果を残せればという言葉は、どっちみち私に対する宣告のつもりであったのかもしれないと考えた。

 

 

「では始める! 状況開始ッ!!」

 

 

 

「えっと……破損個所は……、10箇所!? お、多いけど、とりあえず応急的にやっていけば……!」

 

「あらまぁー……、フィルター部に安全弁……、そんな敏感なとこを無理に塞いじゃ……」

 

「う、圧力が……!」

 

 

「言い忘れていたが、トラブルの箇所は貴様らの弱みの部分が中心に出てくる。幸運で抜けられるなどとは思うなよ」

 

 

 いままで涼しい顔で実技をこなしてきた者達も一筋縄ではいかない。

 

 

「うっ、今回はダメだった……」

 

「くっ……なんとか合格……、作業員があんなミスをしなければこんなギリギリには……!」

 

「これ、私の難易度だけヤケクソじゃないか……、まぁ何とかなったけどさ」

 

 

 この実技の難度は最高。

 

 唯一幸運な点に目を向ければ、私に出てくる問題傾向に得手不得手が加味されないことだろう。

 

 

「何一つまともにできん落ちこぼれ、残った貴様はどうする?」

 

 

 そんな私に教官は冷たい目線を向けた。

 

 

「やる気はあるか? 終わりでも構わんぞ?」

 

「……っス」

 

「やれるのか貴様に、それとも今のは諦めの返事か?」

 

「NOとは言わない主義っスね」

 

「ほぉ……?」

 

 

 私は大きく息を吸って頭に空気を流し込む。

 

 

「……よし、では始めろ」

 

 

 模擬炉が低い音を立てて起動すると同時に、ぎこちない明転を繰り返す。

 

 

 私は直接魔力で走査する膨大な力も、他者を動かす魔力の才能も、経験から即座に故障箇所を見抜く知識も持っていない。

 

 

 だから、頭で作って壊す。

 

 

Circuit Activation(回路始動)

 

 

 炉の構造を頭に焼き付け複写する(妄想する)

 

 材質を理解し当てはめて再現する(妄想する)

 

 性質の振る舞いを正確に実行する(妄想する)

 

 

 

 何一つまともに生み出せない私でも、その頭の中だけは自由なのだから

 

 

 頭の中に出来た私だけの設計図は今から崩壊する三か所の欠陥を把握する。

 

 

「で、どうするんだ? 見習い管理人さんよ」

 

「なんか君、シンパシー感じて応援したいけど怒られちゃうのがキビシーとこよね」

 

「まぁ、適当にやるかぁ……」

 

 

「全員集まるっス」

 

 

 私は彼女達の目線を受けた後、全員を集める。

 

 ぞろぞろと訝し気な態度を取りながら集まりだす3人。

 

 

「いや、みれば本当に命令できない程よわっちぃ魔力だな……」

 

「穴倉出身っスからね、魔力の無さには自信があるっス」

 

「マ? 私も私も!」

 

「なんでこんなとこ来ようと思ったんだか……」

 

 

 好き勝手言い出す彼女達に私は告げる。

 

 

「今から作業内容の手順確認を行うっス、事前に予想されるミスを共有するっスから全員復唱して欲しいっス」

 

「はっ?」

 

「別にいいけどさー、直す場所分かってんの? 時間ある?」

 

「6番枝管の安全弁の動作不良にその前のセンサーの破損、16番枝管と7番枝管の合流部の破損、あとは11番枝管から流れてくる魔力流量の過多、この三か所、言った順に直すっス」

 

「へぇ?」

 

「その前に」

 

 

 私は彼女たちの顔を見渡す。

 

 

「作業前に体調確認っス、魔力が少ない奴は作業から外れて補給するっス」

 

 

 作業員の一人がそれを聞いて笑いだす。

 

 

「ハハハ、はいはい、魔力欠乏一人、またまた昨日遊びまわってね」

 

「よし、外れて補給を受けるっス、他には?」

 

「問題なーし!」

 

「こっちも大丈夫だ。……けどこの状況で一人抜けて大丈夫か?」

 

「安全第一っス」

 

 

 私の命令は誰も聞かない、ならば考えた。

 

 誰が言っても聞く言葉を何度でも言い続ける。

 

 

「6番枝管の動作不良は安全弁の不具合、減圧する必要があるっスけど、センサーが破損しているから目視での作業に注意、もう一人が魔力が吹き出ないように補助に入るっス」

 

「それ私がやらかそうと思ってたのにぃ!」

 

「合図を確認するっス、私の号令で半回転した後に待機、それを繰り返して指示を伝えるっス」

 

「……この場合はどうするのかねぇ」

 

 

 作業員の一人がチラリと教官の方に目線を向ける。

 

 しかし、教官は黙り込んだまま何も言わずにこちらを見ていた。

 

 

「いいんじゃない? アタシらバカの役だけど、言われたことすらできないアホってのもひどくない?」

 

「まぁ、そりゃそうか」

 

 

 私は細かい手順の打ち合わせの後に、作業員を動かす。

 

 

「じゃあ、行くっすよ、顔色ヨシ、確認ヨシ、部品ヨシ、今日も一日――」

 

「「「ご安全に」」」

 

 

 失敗の余地を無くす。

 

 ただ単純明快な指示を連続させる。

 

 誰がどうやっても安全な正しい指示を出し続ける。

 

 

「正常に流れてるっス! 足元に気を付けて集合するっスよ」

 

「はいはーい」

 

「マジでいつもの仕事じみてきたな……」

 

 

 滞りなく作業を効率的に、かつ安全に。

 

 

「ふぃー……、合流部の破損は部品の交換が必須っスから、今と同じ手順で流路を迂回させてる内に交換するっスよ」

 

「……なんだその部品? 見たことねぇ規格だな」

 

「作業させてる間に部品を仕上げたッス」

 

「へー、綺麗だから既製品かと思ったー」

 

「まぁ、ブサイクな中身なんすけどね、設置の向きと注意点を説明するっスよ、これは――」

 

 

 当然、同じ強度の部品を作る魔力など私にはない。

 

 

 だから考えた。

 

 

 私程度の魔力で出力できる材質と物質量で、求められる強度を備えた部品。

 

 

 それを新たに設計し直す。

 

 

 最低限の剛性を確保した多孔質の軽量構造。

 

 魔力の腐食を防ぐ極薄の6層コーティング。

 

 通る魔力自体を利用した極小過密の防護陣。

 

 

 自分の魔力の半分を持っていかれようと私は死力を尽くしてこれを出力した。

 

 平気な顔の下では急激な魔力欠乏により、今にも倒れそうな程の苦痛だった。

 

 

「はいガッチャンこ! ピッタシ! やるねぇ~」

 

「お茶の子さいさいっス、じゃあ次の工程に移るっスよ」

 

 

 目の前で部品が交換され、魔力が通される。

 

 私の心臓は痛いほど緊張で跳ね、手汗が滲み出す。

 

 

「問題ないぜ」

 

「おっけーっス、じゃあ最後の仕事を説明するっスね」

 

 

 冷静に努める。

 

 不安は悟らせない、それは薄っぺらな私が出来る唯一の虚勢だ。

 

 

「最後のこれ、一番厄介っス。設定が弄られてるのか、11番枝管から流れてくる魔力流量がなぜか2.1倍、どうにかしないとそのうち魔力炉が暴走するっス」

 

「大・爆・発!」

 

「本当なら魔力流してる馬鹿共の部署に殴り込むところだなこりゃ」

 

「えー、それはできないので連絡に努めて、現場で対応するっス」

 

「アハハ、死ぬほど見た流れじゃん!」

 

 

 関係構築は良好、彼女たちは次第に私の言葉を無視しないようになっていた。

 

 だが、内心で私は青ざめていた。

 

 この最後の不具合に対応する方法を私は持ち合わせていない。

 

 

 これが他の淫魔ならどうにでもできるのだろう。

 

 

 魔力のある淫魔なら力で無理やり魔力を抑え減圧させる。

 

 魔力の扱いが巧みな者なら流れを変えている内に他の淫魔を作業させる。

 

 もっと知恵あるものならば、きっと自分の知らない解決手段を講じられる。

 

 

 

 安全弁もない。

 

 元の流量は止められない。

 

 作業員に押さえさせても、数十秒しか持たない。

 

 普通なら退避。隔離。上位設備停止。

 

 けれど、この試験でそれは解ではない。

 

 なら、圧を逃がす場所を作るしかない。

 

 

「私が枝管に取りついて減圧させるっス、その間、出来る限り、魔力を他の枝管に渡して流れをせき止めるっス」

 

「別にいいけど、長くはできないよ?」

 

「構わないっス、出来る限りで構わないっス」

 

 

 私が選んだ方法は、安全性度外視の、非常に危険な方法であった。

 

 

 魔力管を外へ破るのではない。

 

 下流側の排出環へ圧だけを逃がす、髪の毛より細い減圧孔を内壁に穿つ。

 

 

「ッ……」

 

 

 だが、この方法を行うためには致命的な欠陥が私の魔法にはあった。

 

 

 それは既にある物体に干渉する為に必要な魔力が全く足りていないということだ。

 

 

 想像はいくらでもできる。

 

 この管にどれだけの細さでどれだけの数の穴を開ければ正常値に戻るかは分かる。

 

 

 だが現実は動かせない。

 

 既にある。魔力的に強度の高い材質で作られた魔力管に穴を開けることは、今の私の魔力量から考えればギリギリだった。

 

 

 それを限られた時間内で行うという現実。

 

 

 せめて時間をかけて良いならマシな方法はあったが、これ以上は命を賭ける必要がある。

 

 

「じゃあ、合図を出したら頼むっスよ」

 

「わかった」

 

 

 私はもちろん命をベットした。

 

 

「――頼むっス」

 

 

 魔力管の流れが変わる。

 

 圧が下がった管に手をかざし、私は穴を開けようとする。

 

 

「どう? いけそう?」

 

「ん-……、まぁちょいがんばって貰えると嬉しいっス」

 

 

 硬い。

 

 考えうる限り、最も魔力に強く、高い剛性を持つこの金属塊を貫く速さは、亀のように遅かった。

 

 

 さらに魔力をつぎ込む

 

 

「ていうか、どうにかするってどうやるんだよ、まさか穴を開けるとか言い出すんじゃねぇだろうな?」

 

「ハハハ、そんなわけないっス、そんなことしたら私ごと吹き飛ぶっすよ」

 

「そりゃそうか」

 

 

 噓をつく、短い間に手に入れた信頼を担保に時間の確保を試みる。

 

 まだ半分、己の出せる魔力出力の限界まで、この硬い壁を貫くために注ぎ込む。

 

 

「そろそろキツーイ、まだぁ~?」

 

「逆にあと、どれくらい持ちそうっスかね」

 

「いや、正直もう無理だ。離していいか?」

 

「うーん、もうちょっとで……、―――いや」

 

 

 私を見る教官が彼女達を見る。

 

 彼女達が自主的に使う魔力の量は決められている。

 

 今まで見た試験でそれは分かっていた。

 

 ある種のミスを行うようにされていたことだって。

 

 

 そこから考えた時、彼女たちが持たせてくれる時間と、自身の作業にかかる時間を照らし合わせた時、私は静かに首を振った。

 

 

「もう―――」

 

「ウーっス……、休憩からあがりゃしたぁ~」

 

「おっそーい!」

 

「うまくサボるなお前は……」

 

 

 その時、今まで姿を現さなかった者が魔力炉に手をかざす。

 

 

「待て、貴様、何のつもりだ?」

 

 

 だが、それを見て声を上げる者がいた。

 

 教官は眉をひそめて睨みつける。

 

 

「はぁ……、仕事っすけど」

 

「貴様の役割は―――」

 

「魔力欠乏気味の使えない淫魔役でしょ? 設定には忠実に、本物の現場のように……、分かってますって」

 

「ならば一体貴様は今何をしている」

 

「だから設定には忠実に魔力を補充して戻ってきただけですよ、補給でこんな長時間サボれる現場なんて、知らないんでね」

 

 

 計算をし直す。

 

 私に与えられた猶予と、目標時間を再設定する。

 

 

「やった……、っス……」

 

 

 私は全身から汗を吹き出しながら腕から崩れ落ちる。

 

 

「おー、やってんねぇ」

 

「って穴空けてんじゃねぇか!? 爆発し――、ねぇな?」

 

「度胸あるゥ! まさかの運否天賦とは、騙されたねコリャ!」

 

 

 飛ぶ気力もない私は、魔力炉の管にしがみついているのか、這っているか分からない程の無様を晒しながら教官の元へ降りようとした。

 

 

「情が移ったか」

 

「さぁ? でもまぁ、あんな奴がいても良いんじゃね? そう思っただけですぜ」

 

「まともな魔力もなく、指示すらまともにできない淫魔がか?」

 

「別に淫魔を従わせるのは魔力だけって決まりもない気もしますがね、ほら、生徒さんが来ましたぜ、じゃ私らはここらでお暇させてもらいますよ」

 

 

 

「状況……、終了……、っス……」

 

 

 死に体で現れた私に向けられたのは、やはり、鋭い刃のような目であった。

 

 

「……ふざけるな」

 

 

「下の者の情けを受け、ようやく目標を達成できる体たらく、よくもここまで恥を晒せるものだ。」

 

「最後の博打に至っては炉が崩壊しかねない危険な手段。緊急時だろうと一切弁明はできん」

 

「作業速度は遅い。指示すら真面にできない淫魔。現場の士気の低下を招く言動、おおよそこの専科にいていい者の水準ではない」

 

 

 霞んだ目でも分かる程の、恐ろしい形相を浮かべる教官は私を叱責し続け――

 

 

「……だが、不具合箇所の特定は早い。作業員の癖を見て役割を制限した。部品誤認なし。過剰流入なし。破損なし。復旧完了」

 

 

 記録板が閉じられる。

 

 

「可。最低点だ」

 

 

 静かに告げられる言葉を聞いて私は頭を下げた。

 

 

 

「え、あれで通るの?」

 

「遅すぎでしょ」

 

「命令っていうか、介護じゃん」

 

「……でも炉は止まらなかった」

 

 

「貴様ら! 何を騒いでいるッ!! 下を見て安心したかったか!! 貴様ら総じてクソの塊だ!!」

 

「これを壁と言ったが、これが現場で当たり前にこなすべき物である!! 貴様ら自身の低能具合を自覚しろ! そこで死にかけてひっくり返っている蛆虫も併せてだ!!」

 

 

 私は、よろよろと気力だけで立ち上がる。

 

 足元が揺れる。

 

 眠気と疲労で、視界の端が暗い。

 

 

「どうした蛆虫! 返事ィ!!」

 

「はいっス!!」

 

 

 私は強くはなっていない。

 

 今だって弱いままだ。

 

 けれど、それでもいつか見たい何かがある。

 

 私はその時初めて、私という小さな存在が、炉の素材以外にも使い道を持つことを証明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 貴方の意識は水に揺蕩う泡のように震えながら浮上した。

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