貴方は彼女に連れられ、例の公園へとたどり着く
「良い夜でした。それでは今夜の続きをまたどこかで……」
――そのキザな感じは本当に何なのだろうか――
彼女は貴方の言葉には返さず上品な微笑みを返して飛び去って行く。
残された貴方。
また、貴方はこの公園で時間を潰さなければいけない。
貴方は前と同じようにベンチに座り、頼むから誰も話しかけてくるなと念じながら時を待った。
しばらく時が経つ。
「いたよ、あの子あの子!」
「おぉ~めっちゃ良いじゃん! って噂通りお手付きかぁ……」
「製造部の監督が給料半月分の前金で誘っても靡かなかったってよ」
「えぇ……!? 相場の10倍じゃん!?」
「あぁ、そのおかげで涙目で私に絡み酒されちゃってさぁ……、本人曰くビビっときたんだって」
貴方はおかしいと内心焦る。
彼女の手回しで完全に溶け込めているはずだというのに何故こうも誘蛾灯のように淫魔を引き付けてしまうのだろうか
「ていうかほんとに誰の女なん、ウチの社員でそんな甲斐性ある奴いた?」
「それ不思議よね~、妙に甘い香りっていうか……、なんかグッとくるわよね、多分これはアタリだっていう淫魔の勘が……」
「分かる。例えるなら私だけが彼女の魅力を知っているみたいな……、眼鏡を外したら確定で美少女パターンっていうか……」
「は? 眼鏡外してんじゃねぇ殺すわよ」
「は?」
「は?」
――どうやら今日も断り文句を考えないといけないようだ――
「貴方が望むなら、今夜はすべて私が受け止めます」
「無理にとは申しません。ただ、貴方ともう少し話してみたい」
「この夜を一人で終わらせるには、少し惜しいと思いませんか」
「今夜だけでも構いません。貴方の記憶に残る時間をお約束します」
貴方は精神を削られながら断りの言葉を吐き続ける。
「絶対に気があった! 絶対にあの子私に気があったのに!」
「ギギギ、押せばコロリと倒せそうなか弱さが私の財布の紐を狂わせるゥ!」
「え? まさかマジで一人に操を捧げてるとかありえる!?」
「おまっ、バーロー! そんなっ! 淫魔相手にそんな一途な女の子がいる訳ないでしょ」
貴方は早く彼女が戻ってくることを祈る。
――これ以上は手遅れになってしまえば、我が身がどうなるか知れない――
そんな時、他の淫魔がいない隙を縫うように飛んでくる影が見えた。
「今夜も貴方と眠り夢をみたい、――できれば、貴方の出てくる夢を……」
貴方はその見覚えのある姿を見て、小走りで近づいた。
――夢どころの話ではない、早くこの場所から自分を連れ出して欲しい――
彼女に抱えられながら、貴方は先ほどから行われた乙女ゲー空間からなんとか脱する。
「いや、すごいっすね……、昨日と今日で私の給料ひと月分のお金稼いでるっスよ」
――お金はローンの返済にあてて欲しい――
「いや、人間ちゃんの稼いだお金なのに……」
貴方は無言で彼女にお金を押し付ける。
――ひょっとすれば、今まで彼女の世話になった分の価値を少しは返せるかもしれない――
そんな考えが貴方の頭をよぎりかけるが、このままあそこにいてはロクなことにはならないと貴方は直感するだろう。
「わ、わかったっス、一応あずかるっスから」
――とても疲れたことを伝える――
「あー……、やっぱり淫魔は本能で人間ちゃんを感じちゃうんスかねぇ……、何というか性癖にドストライクな子みたいな? もっと欺瞞魔法を使うから元気出して欲しいっス」
普段は使わない心を稼働し疲れたきった貴方。
そもそもなぜ淫魔はわざわざ異種族の女の子を買うのだろうかとふと疑問が浮かぶ。
――その手のことをしたがる淫魔同士ですればよいのではないだろうか?――
「いやまぁ、もちろんそういう人らもいるっスよ? でも考えても見てるっス、相手の精を吸うのが淫魔なんすよ」
「淫魔同士のセックスは確かに気持ちいいっスけど、両者消耗戦にもつれ込むサドンデスっス、疲れを癒したい時には普通しないス」
なんとなく分かるようで分からない説明を聞きながら、貴方と彼女は工場へ侵入する。
貴方は――