貴方は彼女の目を見て自身の心を伝えた。
「人間ちゃん……、大丈夫っス……、私が貴方をきっと元の世界に返すっス、だから安心して……」
――それは違うことを伝える――
「え?」
今、貴方の心にある気持ちはそうではなかった。
彼女が貴方の望むことをしてくれるというなら、一番したいことは既に決まっていた。
「え……、で、でも人間ちゃん……、それは……、よ、よくないっス、だって人間ちゃんの幸せは……」
彼女には貴方の心など、丸裸であり、既にその考えは見破られていることは分かっている。
だが、貴方はそんな方法で、自分の心を彼女に伝えたくなどなかった。
――私は、貴女が好きです――
彼女の目を真っすぐに見据える貴方。
「そ、そんな……、だってそんな……!」
しかし、嘘偽りないと知っているはずの彼女は動揺し、その目を逸らす。
それは種族すら違う貴方への拒絶なのか、それ以外の何かか、彼女の心の裾の内を見えぬ貴方には分からない。
なので、矮小な人間たる貴方は、一歩踏み出すしかないだろう
「え……?」
彼女の顔へ身を寄せて、その表情に富んだ唇に貴方自身のものをそっと重ねる
「あ、あぁぁぁぁぁ……」
信じられないような光景を見たかのように彼女は力ない声をあげる。
「そんな……、嘘っスよ……、こんなの……」
彼女は力なく頭を垂れ、身を震わせた。
――嫌なら断って欲しい、ただ、もう自分は貴女を危険に晒してまで帰りたいとは思わない――
「だ、だって、こんなの……、こんなのあり得ないっス」
――私は貴女が欲しい、そして貴女が求めるなら自分は応えたい――
彼女は初めは微動だにせず……、そしてそれは次第に大きく震えていった。
「……だって、だって! こんな自分に都合のいい現実なんて、あり得ないっすよ!!」
彼女はどうやら相当に身持ちの硬い淫魔のようだ。
無知蒙昧な下等種である貴方は、未開な生命体として打って出る。
涙を流す彼女の頬を拭い、その顔に手を当てる。
貴方は行動で示す。
先ほどのモノで駄目ならばもっと激しく
「あふっ……」
貴方は彼女を求めた。
つもりであったのだが、その口内に触れた瞬間、その電流の如き衝撃に腰が抜けて倒れ込む。
「んっ……、はぁ……」
彼女の吐息はまるで湯気が出る程に熱い。
「も、もう限界……っス」
覆いかぶさる彼女を貴方は無抵抗に受け入れる。
「優しくするっス……、人間ちゃんは心も脆いから、ゆっくり触れ合うからそんなに強張らないでいいっスよ……」
貴方は小さく頷いた。
「……人間ちゃん、私の全部を捧げても幸せに……、いえ、違うっスね」
貴方は、手に触れる手を互いに絡めた。
「貴方と一緒に幸せになっていいですか?」
貴方は現世への帰還を諦めた。
というよりは、もっとやりたいことが出来た。
ならばそれは逃避ではなく、貴方は進んだと言えるだろう。
貴方は――