「今日で決めたい所っスね」
彼女は軽い口調でそう話すが、この部屋にたどり着くために、どれだけのリスクを彼女が払っているかを考えれば、その言葉は重く貴方に圧し掛かるだろう。
「じゃあ早速、やるっスね」
しかし、貴方に出来ることは何もない。
今日も貴方は彼女の邪魔だけにはならないよう、部屋の隅へと身を寄せた。
「へへへ……」
そんな時、彼女は不意に笑い声を漏らす。
不思議に思った貴方は何かあったのかと彼女に問いかけた。
「私は人間ちゃんが背中で私を信じて応援してくれるだけで、魔力ビンビンっスよ?」
冗談めかして話す彼女に思わず貴方の顔は緩む。
「行くっす……!」
こうして彼女と貴方の三度目の正直の挑戦が始まった。
「
貴方は彼女を信じる。
それが力になると言うのなら、貴方は彼女の成功をただひたすらに願った。
「
激しい閃光と沸騰する血の池
そして現れる赤い石。
それは、今まで見たどの石よりも鮮烈に輝く、血の色をしたルビーだった。
――やったのだろうか――
その光景を見て、貴方は拳を強く握り込む。
「……」
しかし、彼女は無言で立ち上がると中央の石を手に取り、それを慎重に眺め透かす
「手順は完璧……、構造の配列も……、やはり淫魔と人間の血が合わない……? いやそんなはずない、だったらここまで完璧に混合しない……、というかその前に共鳴自体しないはず……」
貴方は挑戦の成否を彼女のその態度から察してしまう。
「なにが違った? どこで……? いやあってるはず、一体何が足りない……?」
彼女の研ぎ澄まされた集中力に貴方は声もかけられずに見守ることしかできない。
彼女の長考は続き、部屋中をウロウロと歩き始める。
「まさか設計が? いやあり得ない、昔の技術者もおそらくこの手で作ったはず、おそらくボトルネックは同じでそれは既に解決してる……」
彼女は自身の太腿を強く叩く。
「クソッ……、なんだ? どこだ? どうしてだ? ……今の技術が使えてこのザマか……? 秘匿されたとしても600年前の技術だぞ……! そんな大昔の――」
貴方は思わず彼女の様子を心配し声をかけてしまう。
――大丈夫だろうか――
「ご、ごめんっス、ちょっと熱くなって――――」
彼女は目線をあげて貴方を見る。
(時計のAA)
「………………あっ」
彼女は何かに気づいたように声を上げる。
そして貴方からゆっくり目線を外すと。部屋を見回し、最後に中央に鎮座した円陣を見つめる。
「………………………………」
茫然とした表情で立ち尽くす彼女に貴方は恐る恐る声をかけた。
「……大丈夫っス、すこし今できた魔道具を解析させてほしいっス……、
彼女の手の平にのせた石が淡く光り出す。
その光は幾重にも重なる平面の光で何重にも石の透き通った構造を照らすように通り過ぎていく。
しばらくしてその光が消えた時、彼女は何か核心を得たようで硬く目を瞑る。
貴方が固唾を飲んで見守る。
すると彼女は――
「ふ、ふふふ、フフフフ……」
不気味に肩を揺らした後、勢いよく貴方に飛びつく。
「やったっスよ!! 分かったっス!! もう完璧!! 攻略完了っス!!」
彼女は破顔しながら貴方の周りを飛び跳ねる。
――本当に、ようやく完成したのだろうか――
彼女のあまりに真剣な表情は、鋭利で、最後の最後までその成否が分からなかった貴方である。
彼女のその笑顔を見て安堵する。
――思い悩んでいるから失敗したのかと思った――
「……」暗い顔
「あー、それなんすけどね、作り方は分かったんスけどチョーっと準備に手間が必要で」
彼女は右上を見ながら頭を掻く。
「ぶっちゃけ、これ作るのに魔力がかなり必要で……、今の所だと足りないんス……、私にもっと才能があれば良かったんスけど……」
――つまりどういうことだろうか?――
「今日は作れないっス! そんでもって、しばらくは休業! 魔力の回復にいそしむことしかできないっス!」
貴方はそれを聞いて肩透かしを食らう。
もとより完成の目処が立っただけで十分な活躍、彼女が体を休めたいと言えばそれを全力でサポートすることを貴方は約束した。
「ほ、ほんとっスか!? やったぁぁぁぁぁ!!」
飛び上がる彼女はその羽を上機嫌にパタパタと揺らした。
「よーし、じゃあ今日は時間も余ったし、せっかくなんで色々と人間ちゃんの為の道具を作って帰るっス!」
そんな彼女に張り切りすぎて魔力を使い過ぎないように貴方は声をかけるだろう。
貴方は――
彼女の作る奇天烈な魔法具の作成光景をひとしきり見た後、家へ帰った