貴方は淫魔達が作ったであろう入浴施設を眺めた。
露天風呂とはまた違った洞窟温泉を思わせる佇まいは、先ほどのネオンの光に目を焼かれた貴方にとっては非常に心落ち着く。
「なんか人間ちゃんハデな所とかあんまスキじゃないっスよね? け、けど人間ちゃん的にはどうっスかね?」
まるで外界から切り離された静けさ。
聞こえるのは湯の音とくぐもった音響。
時間の感覚が途絶える様な薄暗い落ち着いた岩に囲まれた風呂
――自分の感性で言えば最高にくつろげそうだ――
「へへへ……! やったっス、いやぁ~見つけた時はここだ! って思ったっスからね」
少し興奮気味な貴方へ彼女は嬉しそうに眺めた。
「じゃあ一緒に入ってイチャイチャするっス!!」
――いや、それはちょっと話が違ってくるだろう――
「なんで!?」
――風呂は……、そういうモノではないだろう――
「そういう……、ものでない?」
彼女は驚き以上に理解できないという困惑の表情を浮かべていた。
貴方は彼女に人にとって入浴とは性的なものでなく心の澱を湯に流すような行為であることを伝えるが、彼女は納得できていない。
「え? お風呂は裸になるんすよ? ヌルヌルのローションで絡み合うのが礼儀っスよね?」
――湯船を汚すのはタブーである――
「お互いの体液に塗れないで入浴……?」
そもそもの話でいうなら看過できない部分がもう一つ貴方にはある。
――そも、入浴は基本的には男女は別である――
「裸なのに……? 一緒に入らない……?」
彼女は貴方の言葉を聞き、目だけ開きながら意識が置き去りになったような表情を浮かべる。
「ならなぜ裸に……?」
――心と体の汚れを落とすためであろう――
「じゃ、じゃあ! ここに在るはずの人間ちゃんの裸は!? 一緒に裸で入るって約束は!?」
もちろん貴方はそんな約束をした覚えなどない。
――広い浴室だ。別々の場所で入っても十分楽しめるであろう――
「ち……、チクショォー!! こんなことが……、こんなことはあっていいんスか!!」
まるで酷い裏切りにあったかのように四つん這いになり、滂沱の涙を流す彼女。
貴方はそれを見てふと考えこむ。
そもそも今回の目的は自身の生み出す感情を彼女が吸収することが目的である。
それを考えれば彼女と入浴を共にするという行為は正しいともいえる。
しかし、同時に貴方は彼女の体を思い出す。
雄であれば避けられないような強烈な引力、たとえ彼女にその気がないとしても、それは貴方の理性で耐えきれるものであろうか。
貴方は悩みながら一つの決断を下した。
貴方は――