湯上りで体の疲れを癒した貴方達は、少し休んだ後で、この街並みを通り過ぎる。
「せっかくなら街をブラつきたいとこなんですけど、……まぁ、危ないことも多い場所なんでね、さっさとお家に帰るっス」
――それで構わないことを彼女に伝える――
貴方は今、湯上りでさっぱりし、揺られ、心地よい気持ちであった。
この心地のままどこかで騒ぐよりは家に帰ってゆったり過ごすことに対して貴方に反論はない。
そんな風にくつろいでいると、町のどこかから爆発音が聞こえる。
何事かと思う貴方ではあるが、道行く淫魔達は少し耳をそばだて、すぐに構いもせずに飛んでいる。
――ここに来る時も聞いた音だが、一体何なのだろうか?――
「さぁ? 食い詰めた淫魔の魔力強盗か、風俗で身持ち崩した奴が捕まる時に暴れてるか、遠くの魔力炉でストかテロでも起きたか……」
――まるで世紀末の様相ではないだろうか――
「今の淫魔の国は淫魔が増えまくって失業者がヤバイっスからねぇ」
貴方はそれを聞いて思わず不安げな表情をしてしまう。
「安心するっス、ちゃんと安全運転してるっスから、ここらの大通りで巻き込まれるなんて滅多にないっスよ」
――それは安心と言って大丈夫なのだろうか?――
「ハハハ、心配ゴム用っス! どこ行ってもこんなもんっスよ? むしろ、ここらはまだマシっす。少し離れると異種族の滞留区が点在してるんでそっちの治安は終わってるっスね」
貴方は異種族という言葉を聞いて、いつかの公園の人々を思い浮かべた。
――淫魔の国への移住者ということは、つまり……、そういった産業に従事する人々のことだろうか?――
「あー、そうなんですけど、そうじゃなくて……、もっと別の方法で稼いでるというか……」
なんと伝えたらいいか分からずに彼女は悩んだような顔を見せた。
「まぁそもそも、移住者はそういう仕事の為に外から呼んだんすけど、私たちと懇ろになるのを嫌がって、違法滞在してる魔族も結構いて……、そこの魔族たちが犯罪に手を染めたり、そういう魔族なら襲ってもいいよねと無法を働く淫魔がいたり……、結局そんな所だから国を通さない安くてヤバい違法の売春宿がたくさんあって……、実質ガス抜き扱いだからお上は無視してるし……、あとは……」
話している内に彼女はハッとしたような顔をする。
「……あれ? 私の国、ヤバすぎ……?」
――とても、ヤバく聞こえる――
「ち、違うっスよ、いい所もちゃんとあるっス! 人間ちゃんには誤解して欲しくないっス!」
必死に弁解しようとする彼女を見て、貴方は逆に申し訳ない気持ちになった。
「適当に暮らすなら、ユルユルでいい所っス、ヤって、遊んで、仕事して……、まぁ現代じゃ仕事の割合がエグイっすけど……」
人のことをとやかく言えるような世界とはお世辞にも言えないが、それでも貴方は淫魔達は働きすぎではないかと、彼女を見て心配に思う貴方である。
「まぁ、このご時勢、働けるだけでもマシっていうか……」
――景気が悪いのだろうか――
「景気は良いって上は言ってるっスけど、こっちの実感はほとんどないっス」
彼女の国は、彼女が言うほど悪いだけの場所ではないのだろう。
だが、彼女が笑って流してきたものの下には、思った以上に深い澱が沈んでいるらしいと貴方は感じる。
――彼女の話に実に嫌なシンパシーを感じた貴方は――
これ以上は彼女のデートに水を差すべきではないと、話を切り替えた。