思わぬ出会いを得た貴方は公園のベンチに座り、彼女からの贈り物である時計を眺めた。
どうやらこの時計は彼女の手作りらしい。
――淫魔であれば誰でもこのようなことが出来るのだろうか――
いくらか彼女と同居した貴方はその考えを否定する。
彼女は謙遜しすぎるきらいがあるのではないかと貴方は考えた。
――そうでなければ、淫魔の魅了を防げる魔道具などを作ろうと言い出せないだろう――
シンプルな針一つの時計は針音一つせずに滑らかに回っていく。
貴方は彼女に思いを馳せながらその時計を眺めた。
「ぬぐっ、ぬぐおぉぉぉ!! 誰なんだよマジであの子に粉かけた淫魔!?」
「めっちゃ思われてますやん!? なのになんでこんなところに放置!? 自慢か!? 自慢なのか!?」
「み、見られたい……、あんな風に大切なものを見るような柔らかな視線を一心に受けたいィ……!」
先ほどの助言は確かに効果があった。
まるで殺虫剤を振りかけられた蠅のように、藻掻きながら地に落ちて行く淫魔が貴方の視線の端から見えただろう。
賑やかさは一向に変わらないが、これならば彼女が戻ってくるまで耐えられる。
そう感じた貴方であるが、貴方の目の前に気配を感じる。
「どうも、良い夜ですね」
それはいつか見た新人の淫魔であった。
「あいつ、何やっているんだ……? アイツはどう見ても人の女だぞ……」
「今まで幾人の淫魔が袖にされたんだ。あんな鼻垂に何ができるって」
「い、いや待て!? アイツの手を見て見ろ!」
「お嬢さん、少しお時間をいただいても?」
大量のコイン
「しょ、正気か!? あんな大金を前金に!? 新人風情が出せる金じゃねぇ!?」
「あの外貨の量……、現代の魔界の魔力量に換算すると給料一年分だぞ……!!」
「あ、アイツこの勝負の後は骨も残さないつもりだ……、狂気の沙汰だぞ……!!」
明らかに桁外れの金銭、しかもこれはどうやら目の前の新人淫魔には余りにも身の丈に合わない金額らしい。
それに気づいた貴方は焦りだす。
――流石にこんなには貰えない、貴方にも生活があるだろう――
しかし、目の前の淫魔は滑り込ませるようにそのお金を握らせると、瞬時に手を引き、一歩下がってかしずいた。
「全財産を賭けるなんて普通は愚かだ。――でも貴方を前にして、まともでいる理由が見つからない、……今夜わたしを選んでは下さいませんか?」
これはどうするべきか。
当然誘いに乗るつもりはない貴方であるが、自分のせいで一人の淫魔が破産するのをそのままに見過ごすのも目覚めが悪い。
貴方は――