抜きゲーみたいな島に住んでるボッチはどうすりゃいいですか? 作:くももん
「あー、とどの詰まりお前らNLNSはドスケベ条例をなくしたいと、この島から」
「そうだ」
NLNS。No Love No Sex(愛なきセックスはセックスにあらず)を掲げたその組織。現在、橘 淳之介のリーダーとして、片桐 奈々瀬、橘 麻沙音の3人が所属している。
そして、その最終目標がドスケベ条例をなくすこと。
辺りを見渡す。そこは3Dプリンターと思われる機械。それから大型PC。そして、何よりも地下にある秘密基地という部屋。とてもじゃないが、高校生に用意できる代物じゃない。
「・・・こんな設備、どうやって用意したんだ?」
「・・・協力者がいる。ドスケベ条例の撤廃を支援してくれる人がな。」
その協力者の名前は言わないか。それは、そうか。まだ知り合って数十分。信頼されている方がおかしい。
いや、それとも協力者の名前を教えられていないのか?考えてもしょうが無い。
「・・・具体策は?」
「・・・今のところその取っ掛かりすら掴めていない状態だ。だから、今は仲間を無事に家に返す。それがNLNSの活動となっている」
当たり前といえば当たり前だ。高校生のサークルにも満たない人数だ。この程度の集まりで撤廃できる条例なら、誰かが先に撤廃している。
結局は数なのだ。この社会は多数決で決まる。少数派が黒い布を黒だといっても、多数派が白といえば白に変わる。それが社会だ。同調圧力だ。そして、それを顕著にしたのが青藍島だと俺は感じた。
「・・・無事に仲間を家に帰す、それはいい。立派な活動だ。だが、条例の撤廃。これだけは現実味がないとしかいえない。SHOひいてはSSを刺激するだけだぞ。仲間を危険に晒すだけだ」
「・・・それはっ」
「逃げることは別に悪いことじゃない。逃げることは、恥だが役に立つという言葉もある。そんで、そのまま逃げて学園を卒業して、働いてこの島からも逃げればいい。」
どこか言い訳にも聞こえる言葉を俺は吐いた。
そうだ、逃げることは間違いじゃない。彼らには彼らの主張があり、俺らにも俺らの主張はある。しかし、より少数のものが折れることによって、多数のものが幸せになる。
このクソみたいな理論を、俺はこの島に来てからずっと見てきた。
どうしようもない、仕方がない、だから諦める。だから逃げる。
それが正解だ。それが正しい。そう自分に思い込ます。
「・・・でも、それは出来ない」
「・・・何でだよ?」
「逃げることは、悪くない。現状俺達は逃げているだけだしな。でも立ち向かわないといけない。」
「・・・それが、家族や友達とやからを犠牲にしてもか?そんなものは欺瞞だ。そんなものに、俺や・・・妹さんたちを巻き込んでやるな」
自分で言った言葉に嫌気が刺す。
酷い欺瞞だ。橘兄がじゃない。
俺の言葉が何よりも欺瞞だ。
橘兄や橘妹を片桐を守りたい?そんな高尚なものじゃない。俺は自分のために言葉を発している。自分には出来ないこと、
「でも、それじゃあ・・・」
俯いた顔を上げて橘兄の顔はこちらを真っ直ぐ向く。その目には確かに信念のようなものが感じられた。
「それじゃあ、何も、
『それじゃあ何も変わらないじゃないっ!』
「ッッッ!!!」
脳裏に存在しないはずの記憶がチラつく。
空気が変わる。
何故だろう。何でこいつの言葉にここまで心動かされる。
その真っ直ぐさが、記憶にない誰かを呼び起こす。
「仮に俺達が無事にこの島から逃げられたとしても、また第2第3の俺達が生まれてくるだけだ!繰り返すだけなんだよ!」
ああ、確かにそんなものは・・・そんなものは、
「そんなものはクソくらえだ!!」
熱い視線が俺に向けられる。憧れる。羨ましい。そんな目を、情熱を持てたなら、どれだけ良いか。
「頼む!!比企谷っ!!俺は今、確信した!」
「NLNSにはお前が必要だ!」
「一緒にドスケベ条例をぶっ壊そう!!!!」
その言葉を皮切りに、部屋は静寂に包まれる。
3人は俺の返答を待っている。
それに対しての俺の返答は・・・
「・・・だが、断る」
どこまでいっても、
淳之介が主人公になりそうなところを急ブレーキしました。
このままNLNSに入るのもいいけど、急遽方向転換しました。比企谷八幡がNLNSのやんややんやしてる風景も見たかった。
広げた風呂敷を綺麗に畳めるか、今から不安です(^_^;)