抜きゲーみたいな島に住んでるボッチはどうすりゃいいですか?   作:くももん

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過去回想 エピソード0 その1

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯寒いな」

 

肌寒い風が吹く。

 

まだ冬の寒さが少し残る季節。俺こと比企谷八幡は中学校を卒業した。

眠くなるような卒業式を終えて、帰宅の準備をして校門前の駐輪場に向かう。

 

校門の前には、卒業ということもあり羽目を外して騒ぎまくる生徒や、涙を流す生徒で溢れていた。

 

そんな所に目もくれず、俺は駐輪場に向かい自分の自転車の鍵を解錠して、自転車を押しながら歩く。

 

俺はボッチだ。俺には一緒に騒ぎまくる友達もいないし、涙を流すような感動的な思い出があるわけではない。

あるのは、ただ苦く辛い思い出だけ。

 

 

「⋯⋯くそっ」

過去を思い出し、ギリッと歯を噛みしめる。

 

 

俺は中学校に入り、もしかして俺は変われるのではないのかという淡い期待を抱いていた。

 

しかし、待ち受けていたのは勘違いの連続だった。あるときは、他の人に話しかけたのを自分が話しかけられたのだと勘違いし、あるときは、折本というクラスメイトに好意を持たれていると勘違いし、告白をして振られ、あげくの果てにはクラスメイトに周知され嘲笑われた。

 

 

人混みを抜けて、3年間過ごした中学校を去る

 

 

高校は進学校である総武高校というところに受かった。そこでは俺は何も期待しない。俺はボッチだ。それがどうした。変わる必要なんてない。期待なんかしない。期待をするから辛い思いをする。期待をしなければ、誰も辛い思いをしなくて済む。

 

 

自転車のペダルを漕いで、いつも通りの通学路を走り抜ける。心なしかいつもより、漕ぐスピードが速い気がした。

 

 

 

そうだ。俺は何も期待しない。高校生になれば胸躍る青春があるなんて思わない。高校生になれば変われるなんて思わない。

 

 

(そう俺は変化なんて⋯⋯望まない)

 

 

 

そう思った矢先だった。

 

 

目に付いたのは本当に偶然だった。

 

 

 

 

普段は気にも止めない通学路にある路地裏。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一瞬の硬直。何で路地裏で人が倒れてる?、そんなことを考える前に体が何故か動いていた。

 

 

 

自転車に勢いよく降りて、男の下に向かう。

 

 

 

「⋯おいっ、あんた大丈夫か!?」

 

 

 

男の肩を揺さぶる。しかし反応はない。代わりに男は息も絶え絶えで呼吸が荒い。

 

 

そしてあることに気づく。

 

 

「⋯⋯ッッッ!」

 

 

 

男の脇から大量の血が流れていることに⋯⋯

 

 

 

それは中学生が見るには、あまりにグロテスクなものだった。アニメやゲームとは比べものにならないほど悍ましいそれに、一瞬気が動転しそうになる。

 

 

しかし一瞬の後に、これはただの視覚情報というが如く、恐ろしいほと冷徹なまでに、心が冷静さを取り戻していく。

 

 

 

「⋯⋯取り敢えず救急車だな」

 

 

 

119番を押して、救急車を呼ぶ。男の状況、脇に大量の出血が、あることを伝え、直ぐに来てくれという旨を伝えた。あと数分も待たない内に救急車が到着するだろう。

 

 

そして、電話越しに応急処置の方法を聞いて、処置を行う。

 

 

鞄からタオルを取り出し、出血箇所にあたる脇にタオルを当てて強く圧迫する。

 

 

 

 

 

「⋯⋯ぐっ!!!はぁはぁ、⋯⋯⋯君は⋯⋯誰だ⋯⋯」

 

 

 

 

 

男が圧迫されたときの痛みで起き上がった。その目は虚ろで焦点が合っていない。そんな状態で息を切らしながら、こちらに質問してくる。

 

 

 

「⋯⋯ただの通りすがりです。もう少しで救急車が来ます。耐えてください。」

 

 

 

「⋯⋯そう、か⋯⋯君がっ、呼んでくれたんだな、ありがと⋯⋯うッッッ!!、」

 

 

「⋯無理に体と起こそうとしなくていい。痛いかもしれんが、安静にしてくれ」

 

 

 

男の顔色は悪く今にも死にそうな顔をしている。話すのも辛そうなのに、男は話を続ける。

 

 

「⋯私は、仁浦⋯俊明⋯という。⋯⋯知ってる⋯かね?」

 

 

「⋯⋯いや、知りません。有名人か何かですか」

 

 

「⋯⋯はっ、はっ⋯⋯君が、知らないという⋯⋯ことは、私もまだまだだな⋯⋯」

 

 

「⋯⋯いいから、もう喋らなくていい」

 

 

「⋯⋯いや⋯君と⋯少し、話したい。⋯それに⋯私はこんなところでは死なんよ⋯⋯」

 

 

 

何このダンディなおっさん。ちょっとカッコいいと思ってしまった。

 

 

 

「⋯⋯君、名前は⋯⋯?」

 

 

 

 

「⋯⋯比企谷八幡」

 

 

 

「⋯⋯そうか⋯⋯比企谷八幡、か⋯⋯もし⋯私が死んだら⋯その名前を⋯⋯冥土の土産にするかな」

 

 

「いや、冥土の人達困るだろ」

 

 

「⋯⋯ハッハッハ⋯それもそうだな⋯⋯」

 

 

 

というか何でこの人こんなにも元気なんだよ。脇からあり得ないくらい血が流れているのに。人って案外このくらいの血なら大丈夫なのかと勘違いしそうな自分がいる。

 

 

 

その後も絶え間なく、仁浦俊明と名乗った男としばらく会話を続けた。喋らなくていい、という俺の忠告はまるで届いていないようだった。

その内容は本当に他愛もない趣味や好きなものの話だった。

 

 

しかし、そうこうしていると救急車のサイレンが辺りに鳴り響く。

 

 

 

「⋯⋯救急車がきたみたいだな。そんだけ元気なら助かる可能性は高いだろうな」

 

 

「⋯⋯ああ、もとより⋯死ぬつもりはないさ⋯⋯」

 

 

 

「⋯さいですか」

 

 

 

 

何というかこの人はしぶとそうだ。潰されても死なないゴキブリ並みの生命力を感じる。

 

 

救急車が到着して、救急隊員が近づいて男、仁浦俊明をタンカーで担ぎあげる。

 

 

仰向きの姿で仁浦俊明はこちらに向かって言葉を紡ぐ。

 

 

「⋯⋯改めて礼をいう、比企谷君⋯このお礼は必ず返すとする⋯⋯」

 

 

 

「⋯気にしないでくれ。俺が勝手にやったことだ」

 

 

 

 

「⋯⋯っ⋯⋯君は⋯優しいな⋯⋯また、会おう⋯⋯」

 

 

仁浦俊明はタンカーで救急車に乗せられて去っていった。

 

 

 

そうして、短いようで長い俺の卒業式の1日が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

帰宅後、「仁浦俊明」と調べると県知事であったことに驚いた。お偉いさんじゃないですか。

それと気になる単語も見つけた。

 

ドスケベ条例(・・・・・・) そんな頭のおかしい単語が。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

仁浦知事 視点

 

 

 

 

私はドスケベ条例に反対する組織に狙われ攫われた。しかし何とか逃げ出して住宅街に逃げ込み、追手を巻くために路地裏に逃げ込んだ。

 

 

しかし、追手がすぐそこに来ていたこともあったが、逃げる際に脇に銃弾を受け路地裏から動けなくなってしまった。大声を出すと追手に見つかる可能性もある。

運よく民間人が駆けつけてくれても、奴らに見つかれば、奴らは民間人であろうと私を殺すためなら銃を向ける。民間人を危険に晒すわけにもいけない。

 

(⋯⋯万事休すか)

 

 

少なくとも、助けがくるまでこの路地裏に隠れるしかない。近くにまだ奴らがいる可能性がある。

 

しかし、程なくして私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

そして、意識を覚醒させると中学生くらいの男が私の応急処置をしていた。名前を比企谷八幡という。

中学生なら逃げ出しても可笑しくない、グロテスクな出血を見ても逃げ出さず私を生かそうとしている。

 

 

私はそんな彼に少なからず興味を抱いた。

 

 

 

そして、去り際に謝礼の話をすると

 

 

 

 

『⋯気にしないでくれ。俺が勝手にやったことだ』

 

 

 

 

私は彼が本心で言ってることだと確信して、驚いた。私は汚い政治の世界で生きている。そこには善意なんてものはなく、あるのは悪意と策略だけ。

 

 

 

そして、そんな善意の塊のような彼を見て、私は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が性欲にヨガり狂う様を見てみたいと思った。

 

 

 

 

酷い話だ、と私自身もそう思う。しかし、私は確信したかった。人間とはもっと醜く、醜悪なものだと。この世に性善説なんてものは存在せず、あの心優しい善意の塊であるような中学生も性欲に負け醜く腰を振るのだと。

 

 

 

そう思った私の行動は早かった。 

電話で部下を呼び、彼の下に送った。彼の醜悪な姿を見るために。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「なんで〜!!!!なんで、勃たないの!!!!!!!」

 

 

 

急に玄関に押し入ってきた謎の美人さんが涙目でそう叫ぶ。ピンク色の長髪でテレビでも見たこともないようなプロモーションもった美人だが頭のおかしい人だ。確か、仙波光姫 と名乗ってきた。

 

 

こんな状況になったのは、昼頃に小町が「友達とライブに行ってくるー!!」と飛び出して直ぐのことだった。

インターホンが鳴り、「私、仙波光姫っていいます♡小町さんの友人です♡」と名乗り、入れ違いになったから玄関で待たせて欲しい、という言葉を信じたのが運の尽き。玄関先で押し倒され今に至る。

 

何やら耳元で淫語を連発して股間を確認しては、「あれっ、あれっ」と困惑して、服を脱ぎ出して俺の股間を触ったりしてきた。力付くで逃げ出そうと思ったが、抜け出せなかった。この人ゴリラかよ、本当にそう思った。

 

 

そして俺は確信した。この人は痴女だと。

 

 

まさか、存在するとは思わなかった。男の妄想の中でしか存在しないものかと思っていた。まさか本当に存在するとは。

 

というか、これ男女が逆なら普通に犯罪じゃないか。いや、逆じゃなくても犯罪なんだが。あれだ、男が女を痴漢すると犯罪だ、許せない、と非難されるが、女が男を痴漢するとただ男達から羨ましい、という声が挙がるようなものだ。

全くふざけた話だ。これが男女差別か。

 

 

 

そんな、くだらないことを考えてると1人の男が入ってきた。

 

 

 

その顔は見覚えがあった。ほんの数日前に路地裏で会った仁浦知事だ。

 

 

久しぶりの再会。仁浦知事は前に会ったよりも顔色は良く回復したことが目に見えて分かる。

 

 

 

 

 

 

そして、開口一番言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯君はー、あれかね。インポというやつか?」

 

 

 

「ぶち殺しますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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