"喝采"のアーカイブ!   作:むめい。

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1話 転生

 

 砂漠の真ん中で、3人の生徒と預言者が向き合っていた。

 

 巨大な影の中心で、ビナーが砲身を展開している。熱が歪み、空気が悲鳴を上げる。

 

 それを見て、諦めかけていた二人の前にユメ先輩が立った。

 

「ホシノちゃん、カイリくん……下がってて」

 

 笑っている。

 

 守るための盾は、もう割れているのに。

 

 ──無茶だ。

 

 分かっているはずなのに、ユメ先輩は一歩も引かない。

 

 砂嵐の向こうで、ビナーの砲身が収束していく。光が一点に集まり、地面が震えた。

 

 光が放たれようとした瞬間、ユメ先輩が盾を構え……そして振り向いてこう言った。

 

「2人とも、大好きだよ!」

 

 その言葉が呪いになるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、なんで?」

 

 朝起きたらベッドが無くなっていた。というか部屋に何も無い。

 

 そもそも、ここ俺の部屋じゃなくね?……どこかのアパートの一室のようだけど。

 

 そう気づいたのもつかの間、身体に違和感を覚えた。

 

 不思議なエネルギーが体を覆っている。まるで薄い影のように見えるそれは、どこか見覚えのある色合いをしていた。

 

「まさか……呪力?」

 

 そんなまさかだ、そもそも創作の中の力だ……現実、それも普通の高校生である俺が持っているようなものではない。

 

「そうか、これはあれだな!夢だ!」

 

 目を覚ましたら知らない場所で不思議な力を持っていた〜なんて、俺は異世界転生物の主人公かよ!って……自分の夢にツッコミいれるのちょっと恥ずいな。

 

 そういえば、意識がある状態の夢を明晰夢というらしい。実際に体験してみると現実とほとんど区別がつかなくてびっくりだ。

 

「外はどうなってんだろ」

 

 ここは見た感じ洋式の普通の部屋みたいだし、外も恐らく日本の街中風のどこかだと思う。

 

 玄関に行き、扉に手をかける。外の光が扉の隙間から入るのを見ながら俺は扉を開いた。

 

 まず初めに目に入ったのが広大な青空、そしてそこに浮かぶ謎の輪っか。視線の下にはよく見る街中の風景が広がっていた。

 

「……ほんと、やけにリアルだな」

 

 太陽の光が暖かい。まるで毛布で包まれているかのように安心する。

 

 さて、外に出たはいいが……行く宛てが無い。

 

 良い天気の中、ただ街を歩くってのも悪くない……が、せっかくの夢だ。もっと派手なことをしたい。

 

「う~ん……空でも飛んでみるか!」

 

 玄関前の塀に登り。空を飛ぶイメージを頭の中で想像した。

 

「……?飛ばない。こうか?」

 

 鳥のように腕をバタバタさせてみるが、重力はうんともすんとも言わない。

 

「あれぇ?」

 

 ……キレていいか?

 

 飛べねえじゃん!誰だよ夢の中なら飛べるって言ったやつ。

 

 諦めて塀を降りようとしたその時──

 

 ガチャ

 

「えっ?!」

「ん?」

 

 後ろから扉の開く音が聞こえると同時に、声が聞こえた。

 

「は、早まらないで〜!!」

 

 振り返ろうとしたその瞬間、後ろから抱きつかれて俺はバランスを崩して落ちた。

 

「はっ?」

 

 ドサッ

 

「いたたっ」

 

 アパートの2階だったから良かった。特に大きな怪我もなく、俺は尻もちをついただけだ。

 

「わわっ!ごめん!大丈夫!!?」

 

 隣の階段からコツコツと足音を立てて一人の女性が降りてきた。水色……?随分派手な髪色だ。

 

「ん?あぁ、大丈夫だけど……」

 

 自然と女性の頭に目が行く。

 

「天使?」

「まだ死んでないよ?!」

 

 ……この人なんか頭に浮いてるんですけど。天使じゃなかったらなんなんですか?

 

「その頭に浮いてるのは?」

「え?ヘイローのこと?」

 

 ヘイローというのか、……天使じゃん。

 

「って、そんなことより!君!まだ若いんだから諦めちゃダメだよ!?」

「……?なんのことです?」

「とぼけないでね!さっき飛び降りようとしてたでしょ!」

 

 飛び降り?まさか……あぁ、なるほど。全部合点がいった。

 

「さっきのはあれです……えーと、空飛べないかな〜って」

「……悩みがあるなら私が聞くよ?」

 

 ダメだ、完全にイカれてる枠に入れられた。

 この人多分いい人なんだろうけど……どこか抜けてるな。

 

「悩みって……あ〜そうだ。夢から覚める方法ってなんかありますかね?」

「今聞くことじゃない気がするけど……えーと、頬をつねるとかかな?」

 

 痛みで目を覚ます。定番だなー、ん?痛み?そういえばさっき……

 

 俺は違和感を感じ、自分の頬をつねってみた。

 

「…………痛い」

「当たり前だよ!?」

 

 なんでだ?夢って普通、痛みとかないよな!?もしかしてずっと──

 

「えーと、つかぬ事をお聞きしますがここって日本だったり?」

「……?ここはアビドスだよ!」

 

 アビドス……地名だよな、聞いたことないぞ。

 

 ……ここは異世界、なのか?もしかして俺いつの間にか転生してた?

 

「ってことは最初から……」

 

 じゃあ今の俺は呪力を持ってるってことか?術式なんだろ……っていうかどうやって元の世界に帰れば──あー!くそ。気になることが多すぎる!

 

「大丈夫……?すっごく深刻な表情してるけど」

「え!あぁ大丈夫です!」

 

 ていうかさっきの鳥の真似見られてないよな?うん、きっと見られてないはず。見てたら俺はもう一度飛び降りるぞ。

 

「……そっかぁ。あ!そうだ、自己紹介まだしてなかったよね!──私は梔子ユメ!3年生だよ!」

「俺は一年なんで、先輩ですね」

「ふふっ!ユメ先輩って呼んでね!」

 

 元気の良い先輩だ。

 

「俺は朝霧 灰里です、学校は……無所属?」

 

 ここに来る前はもちろん高校に通っていたが……こっちに同じ高校は無いだろう。

 

「あれっ?カイリくん。私と同じアビドス高等学校だよね?」

「え?」

「だってその制服……」

 

 視線を下に向けてみると、確かに制服を着ていた。意識してなかったから気づかなかった。

 胸ポケットに膨らみがあったので探ってみると、学生証が入っていた。

 名前はちゃんと俺の……住所もあるし。

 

「ここってアビドスの寮であってます?」

「そうだけど……どうしたの?」

「いえ、ちょっと確認を……」

 

 どうやら俺の家はここらしい。さっき目を覚ました部屋がそうだろう。

 色々用意されているが、なぜ家具のひとつも置いてくれなかったのか。

 

「ユメ先輩の部屋の隣が俺の部屋ですね」

「えぇ!いつ引っ越してきたの!?全然音もしなかったし……」

「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないですか!」

 

 知らない方がいいこともある!俺も気になるけど、多分神様の気まぐれ的ななにかだと思う。はぁ……。

 

「そろそろ学校行きますか?」

「あ!そうだった!カイリくん!早く早く!」

 

 ユメ先輩がいきなり大きい声を出したかと思うと、小走りしながら手招きをしてこう言った。

 

「遅刻だよ!」

「ええっ!さっきまでなんでそんな悠長だったんですか!?」

「うぅ、忘れてたんだよ〜!」

 

 俺は急いでユメ先輩の後ろに着いていく、俺は恐らく転校生みたいな感じだろう。初日から遅刻なんてめっちゃくちゃ怒られるじゃないか!

 

 てかユメ先輩、遅!道知らないから後ろついていくしかないのに。

 

「うへぇ〜ホシノちゃんに怒られるぅ!」

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……」

 

 謎に寮から学校が遠いせいで、かなり時間がかかってしまった。

 

「確実に遅刻ですよね」

「うぅ……ごめんねぇ」

「こちらこそすみません。俺が変なことしてたから……」

「あ、それは大丈夫だよ!私が家を出た時から遅刻だったから!」

 

 ふふんっ!と、堂々と胸を張るユメ先輩。

 

「ならもっと急いだ方が良かったですね」

「えへへ」

 

 何笑ってるんですかね……もしかしてあんまり先生怖くないのかな。

 

「職員室ってどこですか?」

「え?」

「え?」

 

 なんでユメ先輩驚いてんの?

 

「職員室に行ってなにするの?」

「えっと、先生に俺の教室どこなのか聞こうかと」

 

 俺がそう言うと、ユメ先輩は困ったように口をもごもごとさせる。

 

「うーんとね?アビドスも昔は先生が居たんだけど……」

「ど?」

「今は先生を雇うお金が無くて……居ないんだ」

「雇うお金が無い……?」

 

 つまり?どういうことだ?

 

「学校の運営費って市とか国から出るんじゃないんですか?」

「外の世界はそうだって聞いたけど……キヴォトスでは学校が自地区を収めてるんだよ」

「そうなんですか……え、それまずくないですか?」

 

 だって中心の学校が先生を雇えないくらいお金が無いんだよね?ってことは自地区の運営費は……

 

「うん、アビドスはほとんど崩壊状態。人もどんどん居なくなっていくし……うぅ」

 

 ユメ先輩の目に大粒の涙が浮かぶ

 

「だ、大丈夫ですか?」

「ごめんね……。──アビドスはね、昔は人も沢山いて、すっごく大きな学園だったんだよ?でも砂嵐のせいで……」

 

 砂嵐……街の至る所に砂が積もってたのはそのせいか。

 

「そうだったんですね……」

「ぐすっ、恥ずかしいところ見せちゃったね!よしっ!こういう時はホシノちゃんに慰めてもらおう!」

「その人もアビドスの生徒なんですよね?」

 

 俺がそう聞くと、ユメ先輩はにぱっと笑い。嬉しそうに話し始めた。

 

「ふふっ、ホシノちゃんはね?優しい子なんだっ!厳しいことも言うけどちゃんと学校のことを考えてくれるし!それとね、すごく可愛いよ!」

「なるほど!俺も早く会ってみたいです!」

 

 校内を歩いて少し、ユメ先輩がある扉の前で止まった。"生徒会室"ここにホシノさんがいるのか。

 

 ユメ先輩がそっーと扉を開けようとすると──

 

 バンッ!!

 

 扉がいきよいよく開き、中からピンク色の髪をした子供が飛び出してきた。背中にショットガンらしきおもちゃを背負っている。

 

「ユメ先輩!また遅刻ですか!?何度言ったら……誰ですか」

 

 俺の方を見てそういう。恐らくこの人がホシノさんなんだろう……いやホシノちゃん?

 

 思ったより小さいな……もしかして高校生じゃない?

 

 俺は腰を屈めて同じ目線にしてから話を始めた。

 

「えっとね、お兄さんは今日ここに──」

「……馬鹿にしてるんですか?」

「え?ユメ先輩、この子がホシノちゃんで合ってますよね?」

 

 見ると、ユメ先輩が無言で首を振っていた。違うのか?

 

「ホシノ……"ちゃん"?あなた、何年生ですか」

「一年だけど」

「私"も"一年です、子供扱いしないでください」

「えっ、てっきり初等部か中等部の生徒かと」

「ぶん殴りますよ……?」

 

 ……つまり?俺は同い年の高校生相手に幼い子に対応するかのような話し方だったわけか。

 

 理解した途端冷や汗がでる。

 

「すみませんでした……!」

 

 できる限り誠意が伝わるよう綺麗に土下座をした。……でも、見た目目つき悪い以外普通の小学生なんだから俺悪くないと思う。

 

 あとは髪がピンクだが、この世界はそういうものだと思う事にした。

 

「……そこまでしなくていいです。よく間違われてますから」

「やっぱり?……あっ」

 

 しまった、と口を手で塞ぐ。

 

「ちっ」

 

 どうやら俺はファーストコンタクトに縁がないようだ。

 

 ……でもこれは俺が悪い。

 

 

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