これ、なんてギャルゲー?   作:千之鴎

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毎日投稿するのは大変ですね。もしかしたら明日も投稿できないかも。


5話

 親友キャラ。

 それはギャルゲーにおけるキーパーソンの一人だ。

 ヒロインとの関係性を教えてくれたり、物語を進展させたりと便利なお助けキャラでもある。

 俺の現状がギャルゲーとよく似た状況ならば、親友キャラが一人はいるはずなんだが。

 

 「居ないんだよなぁ」

 

 高校生までボッチだった俺を舐めないで欲しい。

 幼馴染は愚か、最古の友達は最新の友達とイコールの男だぞ。

 しかもその友達がヒロイン役ときた。何これ、字面だけみたらすごいラブコメだ。

 もっとも、現実は少しだけ厳しいが。

 

 「何が居ないんですか?」

 「ほら、友達だよ」

 「私は?」

 「それ以外の」

 「なるほど」

 

 考え込む仕草を春空は取った。程なくして軽く言い放つ。

 

 「要らないんじゃないですか?秋野くんには」

 「はぁー⁈とんでもないこと言うなお前……」

 「豚に真珠、猫に小判、馬の耳に念仏––––––」

 「あぁもう良いよ!全部同じ意味じゃねぇか!多少は違うことわざ入れろよ」

 「この間の小テストの点からして、一つじゃ分からないかもと思いまして」

 「……余計なお世話だ」

 

 今日もキレキレの発言である。

 しかも、これは無自覚に言っているのだからタチが悪い。

 最近分かってきたが、春空は自覚がある時は僅かに口角が上がっており、ない時は淡々と言ってくるのだ。

 そして今回は淡々と言ってきたので無自覚だ。トッピングに国語の小テストの点数を配慮した余計な善意を乗せて。

 別に特別俺が悪かった訳ではないんだがなぁ。平均点も50点を切った難しめの小テストだったはずだ。

 逆に春空が出来すぎている。現にあの時、点数マウント取られたが隣にいた町田さんも流れ弾を食らってげんなりしていたし。

 

 「それに秋野くんは私一人いれば十分ですよ」

 「–––––っ!そ、それはどういう意味で……」

 

 こちらを一瞥(いちべつ)した後に春空がボソっと溢した言葉に一瞬ドキッとする。

 深い意味はない。絶対ない。分かる。伊達に一ヶ月近く春空と友達している訳じゃない。

 と、思ってはいながらも身体は緩むことを許さなかった。

 次の春空の発言を聞くまでこの体は鈍く動くだろう。

 パンを千切る手が今だけはやけに重く感じる。

 

 「だってマスターキーなんですから。他の人と時間作るなんて論外です」

 「……左様ですか」

 

 はい、分かってた。分かってましたよ。畜生っ!!!

 俺は落ち着くために一度深呼吸を挟む。

 鼻腔をくすぐる匂いは互いの昼食、そして僅かに香る骨董品たちの独特な空気だった。

 今更だが、今日も今日とて俺たちは四階の用具室にいる。

 昼休みになると毎回春空はここに逃げむのだ。

 どうも人との接触を極端に避けており、辛うじて友達判定の俺、近くの席の町田さんとしか会話はしない。町田さんに至っては本当に最低限の会話で済ませており、なんとも言い難い状況だ。

 本人の性格的に避けているのだろうと思ったが、ここまで徹底していると他に理由があるのではないかと疑いたくもなる。

 が、それを聞いて良いのかどうか。

 対人スキルレベル1の俺にはどうにも判断出来ない。

 そもそも俺がそこまでして理由を知りたい訳も選択肢の一件があるからだ。

 

 ギャルゲーは基本的にヒロインに巣食う闇を取り除く事が物語の大筋となる。

 その線で行くと、春空も何かしら問題を抱えていることになる。

 目下でその問題らしきものは何かと言えば、この極端な対人関係だ。

 だから、選択肢のことを知るならここをつつくのが一番手っ取り早いんだが–––––、

 まぁ、焦る必要はない。

 

 ヒロインは出揃っていなければ、親友キャラもいない。

 となると物語の進展はまだ先だろう。

 何より、急いで聞いて春空との友情が壊れる方が怖い。

 それが俺の隠すことのない本音だった。

 

 「で、秋野くん。聞いてました?」

 「え、悪い。聞いてなかった」

 「そうでしょうね。秋野くんはすぐ物思いに耽る癖かありますから。今も大体そんなとこだろうと思ってました」

 「よく分かったな」

 

 やはり、時間が成せる友情の技か?

 

 「えぇ、アホ面でしたから」

 「さいですか」

 

 だろうな。春空がまともに認めるわけねぇわ。

 

 「愚かな俺のためにもう一度説明お願いします」

 「良いでしょう」

 

 春空は得意げに鼻を鳴らす。

 御し易いやつだ。普通に聞いてもまた何か言われそうだったのであえて仰々しくやってみればこの通り。

 調子のいい奴だな、なんてツッコミを入れればまた話が停滞するだろう。

 俺は言葉にしかけた口にパンを詰め込み、続きを待った。

 

 「今度、遠足があるじゃないですか。いい感じに人と避けれる方法を知りませんか?」

 「遠足?高校生になってもか?」

 

 初耳である。

 そんな行事あったか?

 十中八九、俺がボーっとしているホームルームの時間に連絡されたことだろう。

 

 「あるんですよ。聞いていませんでしたか。いや、半ば予想通りで安心しました」

 「そうかよ」

 「先生の話を一言一句聞き逃さない秋野くんは秋野くんじゃないので私は心底ほっとしました」

 

 これ見よがしにホッと一息つきやがって……!

 けれど、これも俺が悪いので何も言い返せない。

 これからはちゃんと先生の話を聞こう。あんまり長続きする自信ないけど。

 俺が決意を新たにしていれば、春空はコチラを見てくる。

 何で、って。そうだ。話の続きだった。

 

 「遠足でいい感じ人を避ける方法なんてないだろ」

 

 端的に答えを述べる。

 事実、遠足で人を避ける方法は存在しない。

 遠足ということは、班活動もしくは、集団での移動が必須。そんな人まみれの状況で人を避ける?どんな忍者だよ。

 

 「前置きはいいですから」

 「お前なぁ」

 

 答えがあることをまったく疑っていない。

 信頼、というのだろう。

 俺はいい友達を持った。その信頼が負の方面ということに目を瞑ればな。

 

 「良いだろう。一般的に人を避ける方法は学校遠足には存在しない。

 小中の遠足経験から考えて例え、俺でもクラスメイトから話しかけられるはずだ。珍しい奴としてな。

 ならば、春空はそれ以上の人間から声をかけられるだろう。クラスの垣根を超えて、転校初日の悪夢再来だ。これを避けるなんて不可能」

 

 神妙な表情で春空は聞く。こんなに真剣に俺の話を聞くなんてこと今まであっただろうか。

 俺は変な感動を覚えながら話を続けた。

 

 「ただし、俺を除いてな!」

 「おぉ!」

 

 春空が立ち上がる。

 やべぇ、すごい優越感だ。

 こんなことで優位に立ってもなんの役にも立たないのに。

 しかし、上がり切ったボルテージはそれを些細なことと捉え、俺の口を滑らかに動かす。

 

 「俺は小学校の3年生の頃、中学校の2年生の時、遠足で話しかけられることにうんざりしていた。大して趣味の合わない人間と身も蓋もない会話を続けるのはもう苦痛で苦痛で。気がつけば腹が痛くなったんだ。

 そしたらな、俺は最後尾に移ったんだ」

 「ど、どうして?」

 「保険医の先生が、最後尾だからだ」

 「––––––っ、なるほど……やはり秋野くんを頼った私は間違い無かった、ということですね」

 

 二人の間に戦慄が走る。

 春空は偶然と言えど、自然な流れで離脱した俺に対する畏怖で。俺は全てを話さずとも理解をする春空に対する賞賛で。

 互いに高め合う空気に俺たちは震えた。

 

 そう、保険医の先生は後方に待機する。それは、怪我を負った子。体調を崩した子に無理をさせないためだ。後方であればペースを気にする必要はなく、また最悪離脱も簡単だ。

 だから多くの場合、保険医は後方に待機している。

 それがベストポジションなのだ。

 後方というのは、後ろから人がやって来ない。言わば自然の壁を背にしているため、人見知りのベストポジション。

 しかも、遠足は前に進む関係状、逆走がしにくい。俺たちに話しかけたくても人間の作り出した弁が逆走を咎める。

 これらを踏まえた上で、最強の一言「ちょっと今体調が悪くて」を使えば何人も話しかけることは許されない絶対防御体制が完成する。

 

 これをあれだけの会話で理解するとは、春空。流石だ。

 

 「なぜ、世間はこんな逸材を放っておくのでしょうか。私は失望しました……」

 「そういうなよ」

 

 空を仰ぐ彼女は、嘘偽りなく本当にそう思っているのだろう。

 目尻に浮かぶ涙が隠すことのない本音を語っている。

 だから、慰めじゃないが。一言、そんな彼女に俺は言葉を贈る。

 

 「世間が俺を放っておいてるんじゃない。俺が世間から離れているのさ。次元が違えば見つけられないのは当然だろ?」

 「っ、カッコ良すぎませんか⁈今まで見てきた中で一番イケメンな秋野くんしてます!」

 

 興奮した春空が叫ぶ。

 はははっ!俺たちはどうやら冷静さを欠いてしまっているらしい。

 その春空のあり得ない一言に俺たちはスンと冷静になった。

 

 「まぁ、一番手っ取り早いのは休むことですよね……」

 「そうだな」

 「当日休みましょか」

 「そうしよう。どうせ皆勤賞狙ってる訳じゃないし」

 「そうですね」

 

 こうして、俺たちの狂った昼は終了を告げる鐘と共に終わった。

 

///

 

 下校中、俺は奇妙な人間に出会うことになった。

 あれは一体何をしているんだ?

 太陽に手を伸ばし、空を仰いでいる。

 遠目からだから少年か少女か分からないが、背の高さと背負っているランドセルからして小学生か?

 俺の帰り道はこのまま直進だ。だから、必然鉢合わせることになる。

 その人間の正体を確かめるため、俺は徐々に足を早める。

 何をしているのか。人間、好奇心には勝てないのだ。

 

 「秋野。ダメだよ。こんなことしてちゃ」

 

 近づいて姿を捉えようとすれば、突然そんなことを言われた。

 

 ––––––は?

 

 「……君は俺と、どこかで会ったことあるか?」

 

 俺は足を止めてそう聞いた。

 返事は横に首を振る動作だけだった。ここからはそのシルエットだけで、まだ声の主の正体は分からない。

 しかし、確定している事実として小学生の知り合いは俺には居ない。当たり前だ。この小学生も会ったことがないと言っている。

 ならば誰かの兄妹?春空に兄妹が居た。なんて話は聞いたことがない。

 しかし、春空から俺のことを知ったというのは、あり得る線か。

 

 「君は春空の弟くんか、妹さん?」

 「違うよ」

 「そうか……」

 

 違うと迷いなく言い放った。

 まるで春空を知っている口ぶりだ。

 ますます分からない。

 俺は慎重に言葉を選んで会話を進める。

 

 「じゃあ君は誰なんだ?」

 「あー、そうだね。分かりやすく言えば神、とかどうかな?」

 「神、だと」

 

 気取った小学生の戯言、と俺には切り捨てることはできなかった。

 選択肢という超常の現象が起こった以上、それを否定する材料は俺にはない。

 何より、否定すれば俺の名前を知っていることの説明がつかない。

 色々俺の名前を知る方法はある。春空か俺の妹か。

 先ほど奴は春空の線を否定した。となると、残る線は俺の妹なる。中学生の妹で今、丁度三年生だ。

 そんなアイツの知り合いに小学生なんてあり得ない。大きく見積もっても目の前のコイツは小学生四年生に見えれば良い方だ。そのくらい幼く見える背格好。

 

 次にかける言葉が見つからない。

 なまじ信じられるからこそ、俺はこれ以上聞きたくない。

 もう考えごとは選択肢でお腹いっぱいだ。

 だが、近づけば今頭を悩ます選択肢について何か分かるかもしれない。

 相反する二つの考えが俺を詰まらせていた。

 

 「大丈夫。秋野、そんなに深く考える必要はないよ。そうだな、言ってしまえば僕は親友キャラだ」

 「おいおい、大きく出たな……」

 

 乾いた笑いが出る。

 親友キャラ?神が?冗談。スケールが大きすぎる。

 俺の認識ではこの世界は日常系で進んでいるはずなんだが。異能力バトルは起きてないし、怪奇現象だってない。神の介入する要素がどこにある。

 

 「あー、まぁ君の考えは正しいよ。ただ、神の介入する要素だけは正しくない」

 「ナチュラルに思考を読んできたな……」

 「まぁ、神だし」

 「……」

 

 容姿は銀髪ロリ美少女でお願いします。ランドセルは赤色。服は白と黒のシンプルなゴシックで萌える容姿にしてください。

 

 「思考が読まれるって分かったら悪口を言ってくる人は居るけど、このパターンは初めてだったな。すごいね、恥ずかしくないの?」

 「うっわ、マジで読めてる……」

 「恥ずかしくなさそうだね。心臓チタン性かな」

 

 神は呆れ半分、関心半分といった声音でこちらに近づいてくる。

 やがて俺の視界に収まると、俺は失明した。

 美しすぎる。俺のオーダーを完璧に反映した萌える美幼女。口調は大人びており、目はやや吊り目。服装も相まってか、知性を感じさせながら幼くも見える。

 神の御姿に俺は平伏した。

 

 「すごい、こんなに崇められたの何百年ぶりだよ。え、もう当分はこの姿でいいかも」

 

 今ここに俺は神の(しもべ)となることを決めた。

 

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