これ、なんてギャルゲー?   作:千之鴎

6 / 7
とても、とても難産でした。説明パートって難しいです。
出来るだけ頑張ったんですが、読みにくいかも。
なので、超ざっくりあらすじみたいなのをあとがきに載せときます。
読んで訳わかんなかったら最後に書いてあることを覚えてれば大丈夫です。


6話

 「と、まぁアイスブレイクは十分かな」

 

 目はもう大丈夫?神はしれっとそんなことを言うが、気遣いまでできて最強かよ……

 

 「褒めすぎじゃない?」

 「このくらい普通ですよ」

 「なんかいつの間にか敬語だし」

 「敬う気持ちが先行したので」

 「君の友達の春空とはえらい対応の違いだ……」

 

 神は「んんっ!」と喉を鳴らし、話の軌道を修正する。

 

 「とりあえず話を戻すよ」

 「なんの話でしたっけ?」

 

 そもそもどういうきっかけで話かけられたんだっけ?

 

 「秋野。このままじゃダメだ」

 「あぁ、そうだ。確かさっきもそんなこと言ってましたけど、何がダメなんですか?」

 「良くない方向に進んで行っている」

 「良くない方向?」

 

 何が、と言おうと思ったが心当たりが一つ。

 選択肢だ。

 選択肢によって選んだ未来が良くない方向だってことか?

 

 「そう、そうだよ。秋野」

 「心読めるって便利ー」

 「君は今日、春空の問題に踏みこもうした時、選択肢があるから躊躇したんだよね」

 

 神は俺の発言に対して、めちゃくちゃスルーを決め込む。

 話の腰を折られたくないのだろう。

 俺は大人しくその流れに乗ることにした。

 

 「躊躇っていうか、まぁはい」

 「だから今日君の前に現れたのは選択肢についての疑問を解消させるためだ」

 「あー、やっぱり選択肢って俺由来の力じゃないのか」

 「がっかりした?」

 「いや、どちらかと言うと安心しました。力の出どころが分かったのはやっぱりデカいです」

 

 そうか、選択肢は神から与えられた力だったのか。

 ただ、そうなるとどうして俺に?

 

 「それについて答えると、君が一番都合が良かったからだ」

 「……都合?」

 

 思わず眉を顰める。

 まるで誰でも良かったという口ぶりだ。

 力を与えるに対象に俺である明確な理由が欲しかった訳ではない。

 けれど、与えられたからにはちゃんとした理由が欲しいというのも心情。

 やばい、面倒くさい彼女みたいになってる。

 俺の心を読んだ神は申し訳なさそうに告げる。

 

 「悪いな。誰でも良かった、というのは紛れもない事実だ。否定のしようがない」

 「そう、ですか……」

 

 正直、気分が落ちる。

 俺は特別な人間だと心のどこかでは思っていたのだろう。

 可愛いヒロインが居て、人には見えない力がある。これから先、どんどん可愛い子だって出てくるかもしれない。平凡だった日常が大きく変わっていく予感。

 この普通の学生に不相応の環境が俺に優越感を与えていた。

 それが否定された今、気を落とすなというのはまだまだガキである俺には厳しいことだった。

 

 「そう気を落とさないで欲しい」

 「そう言ってもですね、やっぱりちょっと……」

 「誰でも良かったけど、君じゃなければ良くない理由も確かにある」

 「えっ?」

 「春空、君の友達が大きく関係しているんだよ」

 「春空が?」

 

 春空が関係しているってどういう了見だ?

 思い出してみても心当たりがない。

 春空とは昔から幼馴染だった、とか?あり得ない。生粋のボッチを舐められては困る。幼稚園の頃から人と接するのは苦手だったぞ。

 それに、選択肢が生えたのは春空と会う前。

 そんなの春空と会うことが確定してないと出来ない所業じゃないか。

 

 「秋野。少し未来の話をしよう」

 「急にロマンチックなこと言い出しますね。未来の自分に手紙でも書きますか?」

 「違う。未来の出来方についてだ」

 「出来方?」

 「例えばだな。君がコンビニに行こうと家を出た。すると、どうなる?」

 「コンビニに着く?」

 

 当たり前のこと過ぎて俺はやや迷いながらも答える。

 どうやら当たっていたらしく神は大きく頷いた。

 

 「人はこうしよう、ああしようと決めたら大体その通りに物事が進む。

 あの大学に行こうとか、将来はこんな仕事をしたいとか、そういう目標なんかもそうだが、コップを取ろうと席を立つ、起きようとしてベッドから離れる、こんな細かい動きもそうだ。

 そして、未来とは人々の細かい動きを束ねたものになる」

 「おー」

 

 どうしよう。そうなんだ、くらいの感想しかない。俺は今世界の真理を説かれているはずなのにまるで興味がないぞ。

 

 「……悪いが大切な話だからもうちょっと付き合ってもらうぞ。

 それでだな、未来はそうやって出来るから多少は予測のしようがあるんだ。完璧な未来予知とまではいかないがな」

 「つまり、春空と俺はいずれ出会うことになっていたってことですか?」

 

 神は配慮の塊なので、出来るだけ俺に分かるように話してくれる。

 なんか、申し訳ないので俺もできるだけ一を聞いて十を出力できるように頑張って理解した。

 お陰か、俺の解釈は間違っていなかったらしく神からも肯定の首肯貰えた。

 

 「そうだ。春空は君の席の後ろに座ることは確定していた。だから、君に選択肢を与えたんだ」

 「な、なるほど」

 

 ヤバい、理解しようとしたけど急に話が飛んだな。

 なんで選択肢を与えたんだよ。

 

 「君が特異点だからだ」

 

 俺は途中で居眠りでもかましたか?いきなり聞いたこともない単語が飛び出してきたな。

 

 「安心してくれ。一から言葉の意味を説明していこう。それで納得がいくはずだ」

 「わ、分かりました」

 

 本当か?なんか、スケールが大きくなる予感しかしないんだけど。

 しかし、話を遮る訳にもいかないので俺は言葉を待った。

 

 「未来は細かい動きの集合だと説明したな。そして、細かい動きは日常のちょっとした動作だ。コップを取る、ベッドから起き上がる。こんな些細なことだ。では、これらを妨害することはできると思うか?」

 「出来そうな気もしますけどね」

 「周りに人はいない状況だとしたら?」

 「後出しはずるいですよ。そんなの出来ないに決まってます」

 「そう、無理だ。基本的には出来ない」

 「でも周りに人がいれば出来るじゃないですか!」

 

 俺は非難がましく声を上げる。

 

 「君は見知らぬ人の行動を突然邪魔するかい?」

 「……いや」

 

 意地張って出来る、と言おうと思ったが心が読まれるのであった。

 大人しく俺は否定する。

 

 「と、まぁこんな風に創作物で未来はいくらでも変えられるなんてあるが、細かい動きの集合である未来は予定調和で決まった結果に収束することがほとんどだ」

 「なんか、聞く人が聞いたら生きる希望を失いそうな真実を聞いてしまった……」

 「ふふ、そうかもしれない。でも、安心して欲しい。世の中には特異点と呼ばれる人間が存在する。彼らは細かい動きに干渉できる。言ってしまえば未来を変える力を持った人間だ」

 「それが、俺……!」

 

 なんか、選ばれしものみたいだ!

 

 「ちなみに1000人に1人の割合でいる」

 

 日本の人口が1億7000万は超えていたから……ってことは17万人は軽くいるじゃねぇか。街を歩けば二人くらい簡単に見つけられそう。

 

 「その点で言えば誰でも良かったってことになる。ただ、春空知り合える人間という枕詞がつくが」

 「ギリ選ばれし者だったのか、俺……」

 

 よ、良かった。

 何に対しての安堵なのかは俺もよく分からないが、モチベーションとかそこら辺のものだろう。多分。

 と、選択肢を与えられた理由は分かった。

 だが、一体この選択肢とは何なんだ。

 

 「未来の綻びを視覚的に示したもの、というのが分かりやすいと思う」

 「未来の綻び?」

 「未来は集合だと言ったね」

 「ええ、耳にタコが出来るくらい聞きました」

 「けど、未来はガッチリと隙間なく集まっている訳じゃないんだ。所々付け入る隙がある。この隙が綻びであり、効率的に未来を変えることができるポイント」

 「それが、選択肢」

 

 神のセリフを奪うように俺は言った。

 口にして不思議なくらいしっくりきた。

 選択肢を選んだからと言って俺の行動がラジコンのように第三者から制御されるわけではない。

 あくまで、俺が動かなければならなかった。

 

 「選択肢はただポイントを提示してるだけだったのか」

 

 なら、別に無視して行動してもペナルティはない?

 

 「ないね。残念ながら。君の意思に任せるしかない」

 「そうなのか……」

 

 知ったところで今のところ逆らう気はないから良いが、いざという時は逆らってもいい、その事実が知れたのは助かる。

 そんな状況が来るのか、と言われたら疑問だが。

 

 「まぁ、良いや」

 

 これ以上は気にしても無駄だ。

 また、いつものように俺は選択肢を選ぶだけ。

 しかし、このままではダメか。

 そんなダメ出しをすに来るくらいなら神が自分でやれば良いのに。

 突然降って湧いた力。おまけに何も知らせず、春空が関係しているだろうな、と仄めかす程度。意味が分からない。

 

 「君には不便を強いるね。申し訳ない。ただ一つ弁明させて欲しいんだが、神だって自分たちで守護できるなら守護したいさ」

 「守護?」

 「神には人柱に一人巫女がいる。巫女ってのは重要でね。巫女がいる限り神は実在できるし、巫女が消えれば神は死ぬ。

 僕で言えば春空がそうだ。だけど、巫女は何かと危険な目に遭う事がある。神の存在を疎ましく思う勢力は多いから。現に春空は死ぬ未来が確定しつつある。

 巫女が死ぬことは神が死ぬこと。それは僕たちも避けたい。

 だから巫女を護るため、今回から導入されたシステムが君を介した代理守護ってわけさ」

 「なんで代理に」

 

 そんな重要な役割自分たちでやれば良いのに。いや、出来るならしたいって言ってたから何か制約が–––––––、

 

 「違うよ。制約なんかない。ただ神は人の心が分からないんだ」

 「は?」

 「巫女は大体呪い殺される。証拠の残らない呪殺は今も昔も便利で、対象は段々と精神を病んでやがては自分でザシュッ!と、そんな感じであっさり死んじゃうんだよ」

 「まるで見て来たようだな……」

 

 真に迫った物言いに俺は思わず唾を飲む。

 神が自身の首を掻っ切る様はリアリティに溢れていた。

 本当に見て来た映像をそのまま再生しているかのよう。

 

 「そりゃ見てきたから」

 「マジかよ……」

 

 言葉を失う。

 実際に見たという言葉に現場を想像してしまったというのもあるが、それを軽々しく言う神に人との明確な違いを感じた。

 ボードゲームで駒が一つ潰された、そんな軽さだった。

 

 「僕たちは自分の命に興味はない。平等に他人の命も大した物とは思わない。そのせいだろうね。人の気持ちが分からないんだ。

 だから心を治すとかそういうのが苦手で逆に巫女を追い込んじゃって失敗。これが今までのパターン」

 

 お手上げだったよ、諸手をあげて神はやれやれと首を振る。

 さっきまでとは違う意味で俺は神を感じる。

 超常的な力、人とは隔絶した存在。それが神だと思っていた。

 けど、目の前にいる神はなんだ。

 人とは精神の構造が明らかに違う。

 命はおもちゃ。自分のも他人のもの、まるで失うことを怖がっていない。

 怖い、尊敬とは別の畏怖をはっきりと自覚した。

 

 「勘違いして欲しくないんだけど、別に死ぬのが怖くないだけで普通に死にたくはないよ。まだまだ遊び足りないし」

 「もう、そういう考え方が俺たちは少し違うんですよ」

 「そうかな。これでも僕は他よりはマシな部類だと思うけどね」

 

 容姿と言動が合っていないのはもう慣れた。しかし、人の形をしていながら精神構造が違うのは生理的に厳しい。

 これで親友ポジションってどの口が。

 

 「親友はお助けキャラでもあるんだろう?」

 「なるほど……」

 

 確かに今お助けしてくれている、ということか。

 気分的には助かったというよりも疲弊の方が強いんだが。

 

 「種族的な差だね。もうそこは我慢して」

 「……うっす。そう言えば神って何人いるんですか」

 

 一体どれだけの失敗をしてこの案に至ったのだろうか。

 俺はそこが気になってしまった。

 

 「分かんない。八百万(やおよろず)って言うしめっちゃいると思うよ。失敗した数も底が知れないね。人間と同じくらい死んでそう。僕ら不老なのに」

 「自分たちですら把握できないのか」

 「興味ないからね。ただ死にすぎたから、そろそろ対策しようって。これ以上は世界を管理するのもままならないし」

 「ん?世界の、管理?」

 

 神だし当たり前だが、今目の前の神が世界を管理と言ったのか。

 幼女の姿だからか、なんか想像しにくい。

 

 「この姿は君のオーダーなのに……」

 「あぁ、いや。想像できないだけで、管理しているのは信じますよ。神ですし、そりゃあしますよね。しま、すよね––––––ッ!」

 

 俺は気づいてはいけないことに気がついてしまった。

 これ以上死にすぎたら世界の管理もままならない。つまり、今目の前の神を死なせるわけにはいかない。

 けれど、現状俺は良くない状態にあるらしい。主に選択肢で間違いの択を取り続けていると思っていい。

 このままいけば春空は自殺する可能性があるってことか?

 軽く想像してみた。あの春空が病んでいって、自殺するところを。あり得なすぎる。

 想像もつかないとは正にこのこと。俺の中の春空は今も元気に「ロリ姿の神なんて変な夢見てないで宿題したらどうですか?」と言ってきているぞ。

 だが、事実読心という超常的な力を持った神が目の前にいる。これは夢じゃない。俺が選択肢という力を手にしている、それすら知っているのだから間違いない。

 神か。それが死んだらまずいのか。

 

 「もしかして、俺今世界の命運握ってたりします?」

 「するね、割と」

 「Oh〜」

 

 ヒロインが死ぬ、世界が滅ぶ。

 よくあるテンプレのシナリオだ。

 ははは、それに自分が巻き込まれるとは。

 冗談ではない!

 

 「この役目、俺以外に渡せたりしないですか?」

 「さっきも言ったけど、君が適任。それに望んでたんだろ?選択肢のある日常」

 「どうしよう、反論がない」

 

 望んでた。

 確かに望んでたんだ。

 僅かにスリリングで楽しい日常を。劇的なドラマがあって退屈しない。可愛いヒロインに囲まれて会話劇を楽しんで。最後は笑って終われる結末。

 そんなゲームのような生活は望んでいた。

 しかし、現実にしてみれば、俺には荷が重い。

 世界が滅ぶかもしれない、そんな状況で、もうまずいとこまで来てると言う。

 誰が楽しめるんだ。

 俺にどうしろと。

 

 「まだ、まずくないよ。もう直ぐまずくなる」

 「慰めになってないですよ」

 「ありゃそうかい?」

 

 右手を額に当てる。

 ここから頑張るしかないのか……

 やだなぁ、世界の命運がかかった生活。

 うわ、どうしよう。お腹痛くなってきた。

 キリキリとストレスで痛む腹を押さえて、俺は最後に聞く。

 

 「あと、どのくらい猶予がありますか?」

 「んー、一ヶ月か二ヶ月。君の頑張り次第かな」

 「そうですか」

 

 そこそこ長い。

 だが、一年とかじゃなくて良かった。そんなに気を張った生活が俺に出来るとは思わないし。

 

 「頑張ればそこまで伸びるかもよ?」

 「マジですか……」

 「というか、春空の抱える問題を解決出来れば次の週でも気の張った生活とはおさらばの可能性がある」

 「本当に俺の頑張り次第なのか」

 

 俺は二度頬を叩く。

 気合い十分。

 よし、明日から俺は救世主になる!

 

 「うん、良い覚悟だね。じゃあ僕も親友キャラとしての役目を果たすか」

 「何かくれるんですか?」

 「何もあげないよ」

 「ケチだ。世界の命運握ってるんだから何かくださいよ」

 

 RPGの王様だってもうちょっと初期装備とか金貨とかくれるぞ。

 

 「その代わり情報をあげよう」

 「情報?」

 「今の春空のメンタルとか、どこにいるとか。そう言うこと。神が持ってても使えないからね。君なら上手くやるでしょ?」

 「場合によります。まぁ、善処はします」

 「いいよ。それで。そうだなぁ、君、僕の名前を考えてよ」

 「な、名前?」

 

 突然だな。

 しかし、名前か。

 春空と関係した神で、ゴシックの服を着た神。

 うーん。幼女という要素も追加して––––「幼女は君の趣味だけどね」––––そうだな。よしっ!

 

 「春宵(はるよい)なんてどうですか?」

 「うん、春空とこの容姿から取った良い名前だと思う」

 「良かった」

 

 名前付けなんて初めてでヒヤヒヤした。

 相手が神だから尚更。ゴミみたいな名前だったら天罰を食らったかもしれない。

 

 「そんなことしないよ?」

 

 神はそういうが、見た目は当てにならないとさっき学んだから。

 

 「この姿は君の趣味じゃん……もういいや。

 とにかく、秋野。春空のことで知りたいことがあったら心の中で春宵、と僕の名前を唱えてくれ。駆けつける」

 「おぉ、なんか親友キャラみたい」

 「だろ?」

 

 じゃあ、僕はこれで、と神。もとい春宵は後光に包まれ消えていった。

 神が見せる力というのは何度見ても心臓に悪いものばかりだ。

 人間脅かさないと気が済まないのかよ。

 

 こうして、無事?俺は春宵という神の協力を得られるようになった。

 そんな神のフォロー付きの日常は生半可な気持ちで選択肢を選び続けていては世界が滅ぶという責任付きの日常だ。

 セーブ、ロード、バックログ、ポーズ。当たり前だが、現実にそんなものはない。一発限りの勝負の連続。

 俺の世界の命運をかけた生活が今から始まるのだ。

 




なんやかんやあって主人公、秋野は世界を滅びから救う重要な人物であると分かった。しかし、そのためには春空問題を解決する必要がある。選択肢を適切に選んで未来を変えて世界を滅びから回避しよう!
なんとそのために春宵、と名付けた神が親友キャラとして協力してくれることになった!春空の居場所やメンタル状況を教えてくれる便利な奴さ。
さぁ、頑張れ主人公!

……みたいな感じです。
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