宇宙海賊狩りのタナカ   作:水色の山葵

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第12話『チームアップ』

 

 1.098.743.713CMと、僕のペンシル型ホログラム端末に入金額が表示される。

 

「以上が今回入手した鉱石の売却金に依頼料である50万CMを上乗せした最終金額となります。しかし本当にこれだけでよいのですか? 私としては依頼料をもっと多く……」

「いや、それをすると契約違反になっちゃってめんどくさいから。だからまた困ったことがあったら依頼してよ」

「ありがとうございます!」

 

 センリちゃんが決めた予定通り、僕らは1週間でビクトリアまで帰って来た。

 ニノミヤさんの依頼は完遂され、僕らは別れの挨拶を交わす。

 

「ニノミヤさまはこれからどうされるのですか?」

「10億も手に入ったんだからやっぱり悠々自適にスローライフとか?」

「実は商業国家トラセウムで起業しようかと思っています」

 

 トラセウムは宇宙に3つある大国の1つだ。

 宇宙の商業の中心とも言われるトラセウムの首都コロニーでは、罪の償いすら金で買えるという。

 

 とはいえ、金を稼ぎたい人間にとっては他の国よりも圧倒的に人気がある場所だ。

 

「どんな仕事をするつもりなんだい?」

 

 ミロクがそう聞くと、ニノミヤさんは照れたように言う。

 

「今回のことでメタロ星人の採掘能力が危険な惑星での採掘業務に貢献できると自信を持てました。将来的には傭兵や他の企業と契約し、そういった危険惑星で採掘を熟す会社にしたいと思っています」

 

 すごいな……

 

 僕がこのまま40代まで生きたとして、それから夢や希望のようなものに向かって人生を歩めるのだろうか?

 

 今ですらそんなことはできていないのだから、普通に考えればできるわけない。

 

「なんか最初に船に来た時に比べてキラキラしてるね」

「そうでしょうか? だとしたらそれはきっと皆さんに出会えたおかげだと思います。それでは」

「うん、またね」

「ありがとうございました」

「それじゃあね」

 

 そうしてニノミヤさんは僕らの宇宙船から降りていった。

 

「それじゃあミロク、センリちゃん……分け前の話なんだけど、どうすればいいと思う?」

「私はタナカさんの決定に従います」

「僕としてはミロクに船の管理費を100万くらいあげて、残りは半々でいいと思うんだ」

「毎度思うけど私の扱いが酷いと思わないかい? それにセンリ・ゴールドバーグのTWの借金はどうするつもりかな?」

「たしかに、あれは払わないとな。ってことは僕とセンリちゃんで2億5000万ずつ?」

「きゅっ」

「テンメイは本当に金銭感覚がバグっているよね。傭兵団になったことで今後経費だってかさむかもしれないし、ある程度は団の資金として貯金しておいた方がいいと思うよ」

 

 TWには定期的なメンテナンスが必要だ。

 

 それにセンリちゃんは作戦とかしっかり考えるタイプっぽい。

 依頼内容に合わせた武装を新規購入することも多そうだ。

 

 それを全部給料から出させるわけにはいかない。

 

「それにテンメイにお金を持たせるとロクなことがないからね」

「うるさいな」

「……?」

 

 僕だってしたくて無駄遣いしてるわけじゃないよ。

 

「じゃあ、取り敢えず借金返して、残りの半分を団のプール金にして、さらに残りを僕とセンリちゃんと半分こってことで。宇宙船のメンテナンスとかバージョンアップに必要な費用は団の資金から使っていいから」

 

 ということは、僕の懐に入るのは1億と少しか。

 10億稼いだにしては少ない気がするが、満足のいく休暇を過ごすための資金としては申し分ない。

 

「あのタナカさん、私のTWの借金は私の給金から……」

「それはダメ。あそこの傭兵団は団長のせいで超絶ブラックだって噂が立ったら僕のメンタルが砕け散る」

「……たしかに世間体は大事ですね。わかりました、では今後の依頼で活躍して必ず恩返しします!」

 

 うん、仕事に打ち込む理由になるのならいいことっぽい。

 

 僕なんて惰性でしか働いたことないし……

 センリちゃんまでグータレてしまったらこの傭兵団は終わる気がする。

 

「これからもよろしくね、センリちゃん」

「当然です。では私は少し用事があるので、ここで失礼させていただきます」

「センリ・ゴールドバーグ、食事はどうする?」

「昼食は外で食べてきます。夕飯はお願いしてもよろしいでしょうか?」

「了解した」

「ありがとうございます」

「いってらっしゃい、センリちゃん」

「はい、行ってきます」

 

 そう言ってセンリちゃんも船から降りていく。

 

 きっとこれは〝普通〟のやり取りなんだろう。

 

 でも、僕にとってはすごく〝希少〟なやり取りで、自然と顔が綻ぶ。

 

「さて、僕も少し街を散歩しようかな」

「あぁ、構わな……いや、すこし待ってくれ」

「どうしたの?」

 

 ミロクは、少し考えるように止まる。

 これは頭の中で、メールかなにかを読んでいる時の間だ。

 

「依頼が来た」

 

 傭兵の仕事には2種類ある。

 傭兵()選ぶ仕事と、傭兵()選ぶ仕事だ。

 

 依頼が来た、その言い回しはつまり後者、『指名の依頼が来た』時の言い回しだ。

 

「誰から?」

「傭兵支援機構からだね」

「絶対めんどくさい内容じゃん」

「そうだね、しかも今回は他の傭兵団と合同。つまりチームアップの要請だ」

 

 基本的に、傭兵支援機構のやることというのは傭兵とそれ以外との『仲介』だ。

 

 依頼者、銀行、兵器開発会社。

 それ以外にもいろいろな個人、団体、企業と傭兵を『繋げる』ことが彼らの職務のすべてと言ってもいいだろう。

 

 そんな機構が主体となる依頼なんてスーパーイレギュラーだ。考えるだけで頭が痛くなってくる……

 

「緊急の依頼らしく、詳細の説明をするからすぐに『マーセル』に来て欲しいと書かれている。どうする?」

「断りたいのはやまやまだけど……」

 

 センリちゃんのTWを買う時にお金を借りた恩もあるしな……

 

「まぁ、話を聞いてから考えるよ」

 

 

 ◆

 

 

 傭兵支援機構は物理的な星や施設をほとんど保有していない。

 

 傭兵支援機構のあらゆる機能は、すべてインターネット上で処理されるからだ。

 

 しかし、傭兵どうしの情報交換や交流のための集会所のような場所が必要という理由から、この『街』は建造された。

 

 傭兵の街『マーセル』。

 

 それは、情報収集、装備製作依頼、訓練施設、他にも傭兵に必要なあらゆる機能を備えている『仮想世界(メタバース)』の街である。

 

 VRマシンと傭兵としてのアカウントがあれば、誰でも、いつでも、どこからでも、この街に入ることができる。

 

 マーセルにある施設の1つである『傭兵ギルド』の『プライベートルーム10番』。

 

 ミロクは僕のライセンスに紐づけられたAIとして同行できるようになっていて、僕とミロクは待ち合わせ場所として傭兵支援機構から通達された場所に向かう。

 

 部屋番号と一緒に送られて来ていたパスワードを入力し、僕らはその部屋へ入った。

 

「やっと来たか」

「初めまして、タナカ・テンメイさま」

「お久しぶりです」

 

 上下前後左右のすべてに宇宙が広がったプラネタリムを模したような部屋の中央には、豪華な意匠の机が1つと椅子が4つ置かれている。

 

 僕らを待っていたのは椅子に座る20代くらいの男女と、上座に立つ1体の機械(AI)だ。

 

 僕らは男女の対面の席に腰を下ろし、おそらくはチームアップの相手であろう対面の人物に目をやった。

 

 男女のうち女性の方は真面目そうな人物だった。

 

 紫っぽい黒髪に同色の瞳。軍服っぽさを感じさせるジャケットとタイトスカートに着崩しはなく、ふちなしの眼鏡が知的さを高めている。

 

「わたくしはアマネ・フェルティ、傭兵団『マグドラ』で副団長を務めております。そしてこちらは団長の……」

「ドラ・カムイだ。あんたに会える日を楽しみにしてたよ。よろしくな、タナカさん」

 

 そう言って握手を求めてくる男は、一言で言うなら『赤髪ドリルリーゼント』って感じの姿をしていた。

 

 僕より30cmは高い背丈と、威圧的な低くて重い声。

 羽織った黒い特攻服の後ろには、赤い刺繍(ししゅう)で『怒罹琉(ドリル)』の文字が大きく入っている。

 

 仮想空間とはいえ、ここでのアバターは衣服も含めリアルの姿が再現される。

 

 物理と精神、両方の意味でかなり特徴的な頭をしている人みたいだ。

 

「お? 俺のリーゼントがそんなにイカすか? さすが、見る目あんじゃねぇか」

「はは、変形とかしたらもっと面白いと思うよ」

「するぜ?」

 

 シャキン、と音を立ててカムイのリーゼントが硬質化し、本物のドリルのように姿を変えた。

 

「するんかい」

「どうやら彼は半機械(サイボーグ)のようだね」

 

 ミロクが小声で補足してくれる。

 

 人体を機械化することで超人的な身体能力や機能を得た者達をサイボーグと呼ぶ。

 

 けど、()の部分を機械化してる人は初めて見たな……

 

「握手、してくれねぇのか? タナカさん」

 

 差し出した手をアピールするように彼はそう言う。

 

 普通なら当たり前に僕はその手を握り返すだろう。

 

 だけど相手は傭兵で、チームアップの相手になるかもしれない。

 

 仮に僕がこの手を取ったとして、僕の力がどれくらい露呈した時、彼は僕と交わした手を後悔するのだろう。

 

 きっと、センリちゃんほど特別な人間はそう多くはない。

 

 僕は彼の手を取ることはなく、最後の1体の名前を呼んだ。

 

「メルちゃん」

「はい」

 

 それは人の形をしてはいるが、肌も髪も眉もまつ毛も、衣服まで、全身を『純白』に染め上げている。

 

 それは人というにはあまりにはかけ離れた姿をしていた。

 

 体からはいくつもの管が伸び、ゴシック系のスカートの周りでそれが意志を持っているかのように遊んでいる。

 

 彼女は、傭兵支援機構の全システムを管理する統括AI『メル』。

 

 この仮想世界においては、全知全能(ぜんけんげん)を保有する神みたいな存在だ。

 

「僕らにチームアップは必要ない」

「今回の依頼内容は概要しか伝えていません。どうしてそう判断できるのでしょうか?」

「今まで僕はずっと1人でやってきた。それ以上の証拠が必要?」

「それは……」

「タナカさま、少々失礼ではありませんか?」

 

 メルちゃんの言葉を遮るようにアマネと名乗った女性が立ち上がり、言葉を挟む。

 

「我が団長の親交を無碍とし、あまつさえその目の前で能力を否定する。あなたが元Sランクだったとはいえ、それはあまりにも……」

 

 そんなアマネちゃんの不愉快を隠す気もない表情を受け止めるかのように、ミロクが立ち上がった。

 

「それはおかしいな。君たちマグドラは数万人の構成員を持つ巨大な傭兵団だ。対してテンメイは元とはいえ単独Sランクの傭兵。そして、Sランクとしての順位はテンメイの方が上だった」

 

 人を馬鹿にしたような表情で、ミロクは喜々として語る。

 

「群れなければなにもできない君たちの能力を、危ぶむのは当然のことだろう?」

「人工知能風情が、喧嘩を売っているのかしら?」

「人間風情が、矮小な身の丈を自覚しろと言っているんだ」

「やめろアマネ」

「やめなよミロク」

 

 僕とカムイがそう言うと、2人は数舜睨み合ったあとに顔を背け、椅子に座り直した。

 

「悪かったねカムイ、別に君を否定するつもりはないんだ」

「いいや、気にしてねぇよ。そっちの人工知能が言ったことは事実だ」

「そんなことはないさ。でも、やっぱり僕は君たちとは依頼を受けたくない」

 

 霊能力なんてものは、人に見せてもいいことは何もない。

 チームアップなんて僕にとってはリスクさえあれど、メリットなんて1つもない。

 

「そうか。そんじゃあ仕方ねぇな。けどあんただって傭兵団になったんだろ? Bランクまで落ちてた時は驚いたぜ。だが、その仲間は信頼できるのに、俺は無理な理由はなんだ?」

 

 センリちゃんとカムイの違い。

 

 なんだろうな。わからない。

 

「それとも、その仲間のことも大して信頼してるわけじゃないのか?」

「いや、センリちゃんのことを僕は信頼している。だけど……」

「だけど?」

 

 センリちゃんはきっと強いのだろう。

 

 才能があって、努力ができて、人間という枠組みの中では最高と言える強さを持っている。

 

 けれど、僕が信頼しているのはセンリちゃんの強さじゃない。

 

 僕はただ、センリちゃんの生き様に憧れているだけだ。

 

 でも、それは本当に『信頼』と呼べるものなのだろうか?

 

 わからない。

 

「僕は今まで傭兵の仕事を1人でやり遂げて来た。単純に他の誰かは必要ないんだ。これは信頼していないってことになるのかな?」

「さぁな。俺は仲間がいねぇとなんもできねぇから、あんたの悩みはわかんねぇ。けど……仲間がいた方が楽しいだろ?」

 

 カムイはそう言ってキザに笑った。

 

「まぁ、それはそうだね」

「だったら、今はそれでいいんじゃねぇか?」

 

 なるほど、たしかにマグドラは数万人規模の傭兵団なんだから、その団長ともなればきっと僕とは対極の存在に違いない。

 

 人との関係の理解力で、僕が勝てるはずもないか。

 

「それともう1つ謝っとかなきゃいけないことがあってな」

「なに?」

「うちのTW部隊の隊長(エース)が、そっちのセンリちゃんとやらに喧嘩を吹っかけちまったみたいなんだわ。メル、映像を出してくれ」

「かしこまりました、カムイさま」

 

 メルちゃんが小さく頷くと同時に机の上にホログラムが展開される。

 

 灰色の大地。大気が存在しないことを示すような暗闇を星々が彩る天蓋。

 

 月面のようなその場所で、2機のTWが交戦していた。

 

 その一方は、センリちゃんのTWである【白桜】に酷似している。

 

「これは仮想空間(マーセル)内に存在するTW闘技場のリアルタイム映像です」

「うちのエースはセンリってヤツに因縁があるみたいでね。あんたらの名前を見た瞬間、勝手に果たし状みたいなメールを送っちまったみたいなんだよ」

「へぇ、それで? センリちゃんを使って僕に何か要求でもするつもり?」

 

 カムイを睨にながらそう聞くと、彼は飄々とした態度で答えた答えた。

 

「まさか、そんな気はさらさらねぇよ。けど、あんたが信頼し、同行させるセンリちゃんが負けた時は、俺たちのことも信頼してくれるよな?」

 

 宇宙海賊より面倒くさい。

 

 Sランク傭兵団の団長っていうのは皆こういうのなのだろうか。

 

「〝信頼〟するっつうのはよぉ、そいつの行動に自分の運命を託すってことだ。なぁ、信頼してるってあんたはそう言ったよな?」

 

 仲間なんて僕にはいた試しがない。

 センリちゃんとの距離感も正直よくわからない。

 

 でも、僕も〝団長〟になったのだから――

 

「はぁ……わかった。いいよ、センリちゃんに勝てたら考えてあげる」

「ありがとよ、タナカさん」

 

 僕らはホログラム画面に視線を移す。

 

「いいのかいテンメイ? このままだとセンリ・ゴールドバーグは負けるよ?」

 

 ミロクが小声でそう声をかけてくる。

 僕にはTW戦の心得なんてないからありがたい。

 

 でも珍しいな。

 初めて会った時も、ミロクのテストを受けた時も、ワームと戦った時も、センリちゃんの戦いぶりは無双と言っていいものだった。

 

 それがたった1機のTWに負ける?

 

「相手はそんなに強いの?」

「まぁそれもあるけれど、センリ・ゴールドバーグは〝本気を出していない〟からね」

「え? なんで?」

「さぁ?」

 

 あれは仮想世界での模擬戦闘だ。撃破したって死人が出るわけじゃない。

 それはセンリちゃんもわかっているはずだ。

 

 この映像が偽物ってこともないだろう。

 そんなことをしてもすぐにバレるし、バレた時に僕との関係がどうなるのか予想できないほどメルちゃんはバカじゃない。

 

「団長、わたくしはTW戦闘は基本的なことしかわからないのですが、相手機体に肩の装備が搭載されていないように見えるのは何か理由があるのでしょうか?」

「まぁ、軽量化目的で武装を外すことはあるわな。それに操縦も単純になるから、初心者用のモデルだとああいうのもたまにある」

「つまり、相手の操縦者はあまり強くないと?」

「そんなヤツ相手にうちのエースがあんなに時間かけるかよ」

「……つまりどういうことですの?」

「知らん」

「……使えませんわね、団長」

「わかんねぇんだから仕方ねぇだろ!」

 

 たしかに、映像に映る戦闘ではセンリちゃんは押されている気がする。

 

 だけど、センリちゃんも負けようとしているわけじゃなさそうだ。

 必死に攻撃を回避している。

 

「ミロク、センリちゃんと通信繋げる?」

「あぁ、もちろん可能だよ」

「タナカさま、ここは仮想空間ですわよ? 何を言って……」

 

 そんなアマネちゃんの言葉を否定するように、僕の目の前にホログラムウィンドウが表示される。

 

「そんな……」

「へぇ……」

 

 アマネちゃんは困惑し、カムイは面白そうにそのウィンドウを見ている。

 

「タナカさま、それならこちらで……」

「要らないよメルちゃん。テンメイは私にお願いしているんだ」

 

 焦ったようなメルちゃんの言葉に、笑みを浮かべたミロクがそう返した瞬間、ウィンドウからセンリちゃんの吐息が聞こえた。

 

『はぁ……』

「やほ、センリちゃん」

『ぴゅ……あ、え、タナカさんですか?』

「そうだよ。今センリちゃんの戦いを観戦してるんだけどさ、大変そうだね」

 

 ここは仮想世界。

 機械による演算によって構築された世界だ。

 

 ミロクは憑依する人工知能のスペックを120%引き出せる。

 

 ミロクは、おそらく宇宙でも有数であろう傭兵支援機構が使う最高スペックのAIよりも、さらに高い性能を保有している。

 

 そして、その世界のセキュリティシステムを突破したという事実は、今この瞬間この世界の神がミロクになったことを意味する。

 

「まさか、傭兵支援機構をハッキングしたというのですか……?」

「マジかよ……笑えてくるな……」

「ミロクさま、いつもやめてくださいと言っているではありませんか」

「君が脆弱なのが悪いんだろう? まぁ、今のところ君に危害を加える気はないから安心したまえ」

 

 例えば、ミロクにハッキングさせて敵の機体を撃破したり、大量のデバフを与えることなんて簡単なことだ。

 だけど、そんなことをしたらセンリちゃんが納得しないのは目に見えている。

 

『見ているのですか……不甲斐なくて申し訳ありません』

「いや、そんなことは思ってないよ」

『やはり、私ごときの強さでは期待には値しませんか?』

「ごめんね。僕にはセンリちゃんの強さは良くわからない」

『いえ、謝られるようなことは何もありません』

「センリちゃんさ、傭兵にとって必要なことって何かわかる?」

『……人を殺せることですか?』

「あぁ、そんなことも言ってたね。それもそうなんだけど、それ以上に大事なことがあるんだ」

 

 センリちゃんが息を呑む音が通信を通して聞こえた。

 それに、何故かカムイやアマネちゃんも興味深そうに僕を見ている。

 

『なんでしょうか?』

「勝つことだよ。傭兵は負けられない。だって負けたら死ぬから。傭兵は逃げられない。だって逃げたら報酬は貰えないから。だから、傭兵の最低限にして最大限の能力っていうのは〝勝つこと〟だ」

『なるほど……そうですか……』

「うん、じゃあ頑張ってね」

 

 僕が応援すると、センリちゃんはゆっくりと深呼吸して言った。

 

『はぁ……ふぅ………………わかりました』

 

 

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