宇宙海賊狩りのタナカ   作:水色の山葵

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第40話『襲撃』

 

 超能力――それがタナカさんを襲った力。

 タナカさんによれば、相手は何もないところから炎や光を出現させたという。

 手品の類であるという可能性は、警察に捕まった件の超能力者が『自害を計り成功させた』時点で斬り捨てていいだろう。

 ネビュラ・プライム・ハブの警察はそこまで無能ではない。

 

 だとすれば可能性は二択。

 タナカさんやアーティファクトのような『異能』か、もしくは秘匿されている『最新技術』か。

 

 マーセルのプライベート空間でトラセウムのニュースを一通り確認したが、正直私の情報収集能力はミロクさんの足下にも及ばない。

 なんとなくトラセウムという国家体系について改めて調べる程度だ。

 

 そうしていると客人用のチャイムが鳴った。

 

『入室希望者:傭兵支援機構統括管理AIメル』

 

 自分が創造している空間なのだから、やろうと思えば無断で入って来ることもできるだろう。

 それでもわざわざチャイムを鳴らすのは、性格なのだろうか。

 いや、AIに『性格』なんて言葉を使うのはおかしいのかもしれないけど。

 

 入室の許可を出すと、机を挟んだ向かいの席にメルさんが転送されてくる。

 

「おはようございます。センリさま」

「おはようございます。なにかご用ですか?」

「傭兵団『海賊狩り』のランクアップが決定いたしました。今後は指名ではなくともAランクの依頼を受注できます」

「そうですか」

 

 まずは一段階か。まだまだタナカさんの元のランクには及ばないが、着実に進んではいる。

 

「それと、センリさまがご所望だと思われる情報をいくつか」

「私の望む情報?」

「【超能力者】と呼称される者たちについてです」

「……どうして私がその情報を求めていることを、あなたが知っているのですか?」

「昨日、トラセウムで起こった誘拐事件の調書を読んだからです。警察の方には快く提供していただきましたよ」

 

 首都コロニーの警察が協力するって、どれくらいの権力なんだろう。

 やはり、このAIは底が知れない。

 

「それで、超能力者のことまで知っていると?」

「はい。結論から申し上げましょう。超能力者を製造しているのは、トラセウムの7大メガ・コーポの一つ。『アロン・ケミカル』社です」

 

 アロン・ケミカル。聞いたことはある。

 たしかに主に薬品や医療用ナノマシンの研究開発、販売等をしている会社だ。

 

「それがゼノ・エナジー社の令嬢を狙う理由は?」

「今回はシニカ・ゼノ・ブラックルートの軽率な行動から事件性の高いものに波及し、少し大事になりましたが、トラセウムでは企業間紛争は毎日のように行われていることです。7大メガ・コーポともなれば規模が増すのも当然のこと」

 

 すべてが金で決まる国。

 法律的に免罪符のような仕組みすらあるらしい。

 誘拐や殺人、洗脳すらも企業間の紛争の1種ということか。

 

 ふざけた話だ……

 

「それが、あなたが私に伝えたかったことですか?」

「今朝……捕縛した超能力者が自害した瞬間を目撃した警官4名が暗殺され、そして超能力者の死体を保管していた病院が襲撃を受けました」

「それは……つまり……」

「目的はおそらく、超能力者という極秘情報を実際に目撃した人物および記録の抹消。だとすればもう2名、彼らの対象になりうる人物が存在します」

 

 タナカさんが、狙われている!?

 すぐにログアウトして向かわなければ!

 

「お待ちください」

「なんですか? 今少し、急いでいるのですが……」

 

 メルを睨みつけるが、彼女は無表情のまま淡々と続ける。

 

「相手はきっと超能力者でしょう。しかも1度超能力者を退けているタナカさまをまた狙うということはそれだけ自信があるということ。それでも、勝てると思うのですか?」

「ご心配なく、我が団長は誰にも負けません。そして私も誰にも負けるつもりはありませんから」

 

 そう言い残し、私は出現させたホログラムウィンドウからログアウトのコンソールをタップした。

 

 

 ◆

 

 

 もうちょっと、もうちょっとでHPバーが削り切れ……

 

「パリィして、コパンして、防御が下がるから下段から上投げして、空中で身動きできなくなったところをゲージ技でどーん」

「うっ」

 

 あと1ミリだったのに、負けた……

 

「もっとハンデいる?」

 

 今回はシニカちゃんのHP3分の1で始めたのにギリギリで負けた。

 かれこれ30連敗くらいしてる気がする。

 

「ねぇ、僕上手くなってるかな?」

「まぁ、多少は?」

 

 シニカちゃんが目を逸らしながらそう答える。

 多少ってどれくらいなんだろう。

 

「じゃあ、協力ゲームする?」

「でも僕迷惑かけると思うよ?」

「いいよ。その方が楽しい」

 

 ちょっと煽られてる感じもしなくはないけれど、シニカちゃんの悪気のなさそうな笑みを見るに彼女にそんな意志はないんだろう。

 

「じゃあ、お願いしてもいい?」

「うん。テンメイはどんなジャンルが……」

 

 そう、シニカちゃんが言いかけたところで彼女は言葉を止めた。

 陽が指していた窓に影が差したからだ。

 

 それにその影の出所は「ブンブンブン」と蜂の数十倍の大きさのプロペラ音を鳴らしながら、こっちに近付いてきている。

 しかも、そのヘリコプターには2丁の連射式光線銃が搭載されていた。

 

「あれってシニカちゃんの知り合い?」

 

 ふるふると、シニカちゃんは顔を横に振る。

 

「へぇ。あ、もしかしてシニカちゃんの知り合いの誰かからのサプライズプレゼントとか?」

 

 さすが、財閥の令嬢はすごいなー。

 なんて思っていると、光学式の機関銃が稼働を始める。

 その銃口は完全にこっちを向いていた。

 

「あ、違うみたい」

「そうだね……」

 

 逃げ場はないし、僕の身体能力じゃどうしようもない。

 

「シニカちゃんってさ、まだ死にたいって思ってる?」

「え? いや、もう思ってない。やりたいこと、見つけたから」

 

 そっか。よかったね。

 

「じゃあ僕に依頼してよ。傭兵として君の依頼を完遂するよ」

「いいの? あの力は秘密にしてるんじゃないの?」

「もういいや。めんどくさい。それにシニカちゃんにはゲームを教えてもらった恩があるから」

「……ふっ、ありがと。じゃあテンメイ、お願い。私を護って」

 

 こんな風に思うのはセンリちゃん以来だ。

 どうしてか、彼女は僕の力を見ても怖がらないんじゃないかって、期待できる。

 

「調和の吉将・()たる中道・東の星――名を【六合】」

 

 唱えながら、ヘリが向かってくる方向の窓ガラスへ触れるとビル全体に六合の結界が行き渡る。

 

「【朱雀】」

 

 そして、円を描くように窓をなぞるとその外側に3羽の朱雀が顕現する。

 弧を描く軌道で朱雀がヘリへ飛来すると共に、ヘリが一気に大爆発を引き起こした。

 

 でも、まだ終わっていないらしい。

 

 シニカちゃんにはバレてもいいけど、他の人にバラす気はない。

 悪いけど、君たちを霊に変えさせてもらうよ。

 

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