「センリちゃん、ちょっとその剣貸してもらってもいいかな?」
「はぁ……どうぞ」
センリちゃんが結界内部にいく少し前、僕はセンリちゃんからアーティスト【
これは蒼い伸縮自在の刀で、時間の流れを操る力があるのだとか。
僕もセンリちゃんが初めてそれを見せてくれた時に剣に霊力が宿っているのは感じていた。
宇宙怪獣の死骸から造られているのだから霊力が宿っているのは当然だとも思えたし、特に気にしてはいなかったけれど、その霊力が徐々に増加していっているのには違和感があった。
しかも、その霊力は悪霊のソレと近く術者であるセンリちゃんを蝕んでいるような雰囲気をかもしだしていたからなおさら。
そのまま放置しているとセンリちゃんが少し危ない気がしたから、センリちゃんが結界に入る前にどうにかしておこうと思った。
蒼い刀を握り、そこに霊力を流していく。
すると、景色が一瞬で転移した。
「なにこれ。ていうか、誰君?」
『貴様こそ何者だ? 儂の承諾なく、どうやって入って来た?』
「自分のできることを人にわかるように説明するのって難しいよね。どうやって息してるのって聞かれてもわかんないじゃん?」
宇宙空間に思えるようなその場所で、巨大な眼球を持った全容不明の生物が僕を見ている。
わかることがあるとすれば、それは紛れもなく宇宙怪獣だということと、僕はこれと同じ存在を感じたことがあるってことくらい。
帝国の皇帝が孵化させようとしていた宇宙怪獣の卵。
目の前の宇宙怪獣からは、それとまったく同じ気配を感じる。
多分だけど、あの卵を産んだのがこの宇宙怪獣なんだろうな。
「ていうか聞きたいんだけどさ、センリちゃんになにをしてるの?」
『センリ・ゴールドバーグのことか? アレは儂の娘となるのだ』
「……なに言ってんの? 頭大丈夫?」
『人間如きに儂の考えなど理解できようはずもない。ただ偶然に知性を持っただけの塵芥が、対等に意見などしてくるでない。この世界には、貴様らには到底に理解できぬ真理が存在するのだ』
「へぇ、そうなんだ」
でもなんか、面白いな。
「でっかいだけの魚が真理なんて語ってると、すごく安く聞こえちゃうよね」
僕は腰のホルスターに手をかける。
取り出したのは2枚の式符。
『貴様、人間如きが儂を愚弄するか?』
「あぁ、理解できてないのか。たしかに言ってなかったもんね。僕、今すごく怒ってるんだ」
こいつはセンリちゃんを害そうとした。その時点で僕にはこいつを護る道理がない。
僕は詠唱を始める。
「
勾陳の完全顕現。それは勾陳以外の『式神の武具化』の力。
「天后、手伝って」
現れたのは白銀の錫杖。天后を武具化したそれは、強い退魔の力を宿している。
『なんだ……やめろ……それを儂に近付けるな!』
「あぁ、わかるんだ。暴走もしてないみたいだし、僕らの宇宙より外のどこか遠くにいるわりと強い宇宙怪獣だったのかな? まぁどうでもいいや。でも僕は優しいから教えてあげる。君の間違いは、卵と自分を接続できるようにしていたことだよ」
錫杖を閉じた瞼の上から突き入れる。
抵抗はなかった。錫杖が触れると同時にその肉体は光に包まれていく。
勾陳の完全顕現は天后の浄化の力をさらに強化していた。
「じゃあね。名前も知らない宇宙怪獣くん」
『こんなあっさりと、儂の生涯が幕を閉じるというのか……? 貴様、一体何者……』
その光は、数キロメートルはありそうなその宇宙怪獣の全身を包み、断片すら残さず消失させた。
同時に僕の視界は宇宙船の中へ戻る。
目の前には不思議そうな表情をしたセンリちゃんが立っていた。
「ありがとうセンリちゃん。返すね」
「はい。ぼーっとされていたようですが、大丈夫ですか?」
「うん、心配してくれてありがとう。それとその剣に宿っていた……呪い? みたいなヤツは解除しておいたから存分に使うといいよ」
僕がそう言うと、センリちゃんは少し困ったように笑う。
「あなたには敵う気がしません」
「だったら反抗しないでほしかったんだけどな……?」
「敵わないことと自分の意志を曲げることはイコールではないと思います」
「そうだね。もう止めはしないよ。でも、ちゃんと勝ってね。君が死んだら僕は悲しい」
「はい!」
センリちゃんは強く頷いた。
◆
「抜刀……」
蒼い刀を引き抜くと共に、周囲の時間が減速する。
同時に、敵機『ベルセルク・レクイエム』とその背後の棺より現れた6機のTWが動き始める。
まずは見る。
敵の方が数は多く、全TWは完全に初見のフォルムと武装を搭載している。
どんな手札が飛び出してくるかわからない以上、不用意に突撃するわけにはいかない。
そんな風に構えていれば、【レッド・ノヴァ】と呼ばれた赤い機体が腕から炎を噴射してくる。
よく見れば、両脚や肩からも炎を吹かしている。
それは通常のTWよりも優れたブースターを搭載しているようで、半減しているにしてはかなり速く感じる。
高機動力+宇宙空間に炎をまき散らす面制圧型の攻撃性能。
それが赤いTWの特性。しかし、炎自体の速度はそうでもないし、機体速度も半減している以上こちらが上。回避に難はない。
同じように他の機体の武装も解析していく。
【ブルー・ライオット】……青い装甲を持つTW。両肩に砲門を搭載していて、そこから放たれる弾丸には『氷結効果』が存在する。
着弾と同時にその部位が氷漬けになり、操作が効かなくなるのはかなり厄介だ。
【イエロー・デルタ】……プラズマ系の武装を多く搭載しており、電磁シールドやスタンブレードなど近距離での戦闘能力も高い。
どれも刹那的に電子機器を麻痺させる効果があり、この数との戦闘ともなればその一瞬は致命的な隙となる。
【グリーン・ロック】……かなり大型のTW。迷彩柄の装甲を持ち、両腕に巨大な物理シールドを搭載している。正面からの遠距離攻撃はほとんど無効化される。
愚鈍ではあるが、硬いTW。
【ホワイト・ファング】……グリーンロックと似た大型の白いTW。相違点は防御性能ではなく、近接攻撃力に特化した兵装。
両手の武器は棘の付いたナックルで、巨大なサメの歯のようにも見える。それを噛み合わせて行ってくる攻撃は並みのTWなど一瞬で粉々にするだろう。
【ブラック・ナイト】……黒いTW。どういう原理か不明だが引き寄せる力と弾く力を併用する。斥力と引力による行動阻害は面倒だが、その効果領域はブラック・ナイトの腕に搭載された兵装が向いている方向に一直線。距離限界は3kmほど。
大体把握した。
これに、私が負ける要素は皆無だ。
火炎放射は距離を詰められさえしなければ一方的に攻撃できる。
装備は速度特化ではあるが、【
距離を取りつつ、ミサイル系の兵装で煙幕を張り、裏を取って斬り伏せる。
「一つ」
氷結は当たれば厄介だが、当たらないから意味はない。
回避しながら近づき、最後の一発を物理シールドで防ぐと共にシールドを手放し、蹴り飛ばしたシールドを傘にして『大鉄刀』で叩き潰す。
電気攻撃は効果範囲は他の機体に比べれば少し広いのが厄介だが、プラズマの動きには法則性がある。それを見切ってしまえば回避は容易。
シールドに使われていた電撃と私の砲撃が混ざったEMPが【イエロー・デルタ】を襲い、動きが止まったところに左右に展開した6連ミサイル計12発を撃ち込む。
「二つ、三つ」
盾持ちはいてもいなくても変わらない。重量がありすぎて戦闘速度に追いついていない。あれでは味方を庇うことすら満足にできはしない。近接攻撃特化はもっと無意味だ。これも速度特化型機体のようだが、私には追い付けない。つまりただ間合いが狭いだけ。
それに近接戦闘にまで持ち込まれたとしても、操作精度と速度に優れるこちらが有利。盾を掻い潜り、ジェネレーター部分を刺突で破壊する。
「四つ、五つ」
黒いTWは少々厄介だが、常に視界に入れていれば予備動作から攻撃方向は予測できる。
掠める程度の斥力と引力ならブースターで振り切れるし、正中線さえ捉えられなければ問題はない。
それに斥力や引力を操作するという規格外の性能のせいか、タメが異様に長い。
周囲を揺蕩うTWの残骸に紛れながら接近し、一瞬で両腕と首を跳ね飛ばす。
「六つ」
最終的に脅威なのはその『数』だけだった。
しかしそれもまた速度に二倍の差がある私と彼らでは、極めて単純な戦術によって勝敗が決す。
要するに、敵の攻撃をすべて避け、こちらの攻撃だけを命中させられれば勝てる。
「これで終わりですか?」
その声を通信に乗せれば、アレクセイ・ヴァシリエフからすぐに返答が来る。
『終わりだと思うか? これほどのTWの残骸が存在するこの空間で、たった6機のTWを生み出すことに私が千年の時間を使ったと本当にそう思うか?』
「出し惜しみはあまり感心いたしません。それは、私たち程度の戦力しか持たない者には無用の戦術です」
換装――【レーザースネーク】。
翡翠色の光の弾丸は、幾重にもフェイントを混ぜた難解な縦横無尽の動きで敵TW 『ベルセルク・レクイエム』へ駆け抜ける。
『そうだな。たしかに私は君の戦力を侮っていたよ』
私の放ったレーザースネークが、自身を抱き締めるように動いた棺の翼によって阻まれる。
『特殊機構【
六つの棺が開く……おそらくはあの棺自体に白桜の【
「なるほど……」
しかし驚くべきはその中身だった。先の6色のTWとはまったく別物。棺の中に入っていたのはすべて『ベルセルク・レクイエム』と同一の機体だった。
『【
6機のベルセルク・レクイエムの翼の棺から、さらに6機のベルセルク・レクイエムが姿を現す。
『【
視界を埋め尽くすほどの量へ、それは増殖していく。
隊列を造る動きを見ればわかる。AIによる自動操縦じゃない。
けど、どうやってそんな数のTWを操縦しているのか、まったくわからない。
自分を機械にアップロードしたメルさんとは別の方法で、アーティファクトによって『千年』を生きた彼の脳力は、人知を超越するレベルで進化しているとでも言うのだろうか?
最終的に150機近い数に増えたベルセルク・レクイエムは、さらに先ほどと同じ6機のTWを召喚していく。
『私よりも可能性の高い邪龍討伐の作戦があると言ったな? ならば、邪龍への道を切り開かんとする英雄よ。最低限、一騎当千の力くらいは見せてくれ』
1000を越えるTWの群れ。
そんな数の相手と1機で戦った経験なんてあるはずがない。惑星『ホープ』でイフさんと戦った時もTWの数は300にも満たなかったし、すべてAIによる自動操縦だった。
それに、この機体一体一体の性能もイフさんが使っていた量産型より遥かに高い。
考えたくもないほどに絶望的な状況……
だとしても……ここで退くわけにはいかない。
「了解しました。それであなたに納得していただけるのであれば全力で撃滅させていただきます」
ポシェットから取り出した虹色の水晶玉を握り、私は小さく呟く。
「臨界」
【臨界の宝珠】。
それは使用者の存在を昇華させる。
TWもまた私の一部と認識されることはすでに実証済みだ。
『黄金と白銀が混ざったようなオーラだ。それも君のTWに搭載された機能なのか?』
「いえ、これは二つ目のアーティファクトの力です」
『アーティファクト……君もそうか……』
氷刀【
速度も、耐久力も、反応も、読みも、
「いきます」
『来い』
翔ける――
敵のTWの群れの中に
すべての敵の速度は半減し、私自身の能力はこれまでとは雲泥の差と言えるほどに強化されている。
あらゆる面で白桜の性能は、彼らの5倍近い力を持っている。
敵の数は千倍。そこへ挑むための私の切り札はやっぱり【
「くっ!」
豪火が、氷結が、雷撃が、引力が、斥力が、私を襲う。
私の遠距離攻撃は幾重にも展開された盾に防がれ、群がってくる白いTWから逃れるために常に最大限の警戒と先を見据えたルート取りを迫られる。
【
時間と共に、負荷が増していく……
『身体が交換できたとしても、脳はそう簡単に復活できるものではない。その機構も、二つのアーティファクトの併用も、君には過ぎたる力だったということだ』
……その通りだ。
『才能があったのだろう。活躍できていたのだろう。だから勘違いしたんだろ? 自分はすごいと、なんでもできると、手が届くと。けれど敵は【宇宙怪獣】という名の天災だ。本物の英雄以外は受け付けない最強だ』
千年戦い続けたあなたに私が意見できることなんてない。
『エリートくらいじゃ足りないんだ。天才くらいじゃ意味がないんだ。君じゃ足りないんだよ。だから早く、偽物はこの戦場から消えてくれ』
偽物……本当に、その通りだ。
「換装――【シールドジェネレーター】!」
半透明な緑色の壁が、白桜を雷撃から護るように展開される。
『回避できずに受けに回ったか? 足が止まれば物量で潰されるだけだと理解していないのか?』
ずっと、ずっとずっとずっと、あの人と出会ってから私はずっと負け続けている。
理想の自分に追いつけない自分自身を嫌悪し続けている。
努力では届かないのかもしれないと、諦めかけたことなんてもう数えきれない。
そもそもここに来るのだって、タナカさんにTWの操縦方法を教えれば私が来る必要すらなかった。
それでも私がここに来たのは、単なる私の我儘だ。
私だってこの人となにも変わらない。
ただ、理想の自分になりたいだけ!
【雪華】を鞘へ仕舞い込み、もう一方の手に持っていたビームサーベルも捨て、両手を開ける。
目前に迫ってくる赤いTWへ突撃し、向けられた火炎放射器を腕ごと蹴り飛ばす。
そのまま組み付いて、首を捩じ切る。放射され続ける火炎を敵に向け近付いてくる機体を牽制。
放たれた氷結弾を首から上の装甲を投げつけて相殺し、雷撃に対して首から下を蹴り飛ばして避雷針にする。
『近接戦闘……武装の奪取……面白い戦い方だ……』
千体の遠距離攻撃を捌くなんて現実的に不可能だ。
不可能……その言葉を突き付けられ続けた人生だった。故郷が滅びた時。軍の不正を知った時。宇宙海賊に捕らわれた時。タナカさんに拾われて、あの人の戦いを見ている時も……
だから私は、不可能には慣れている。
私には都合のいい覚醒なんて起こりはしない。
使える技能と機能を見極め、限りなく敵を分析し、『普通』に勝つべくして勝つ。
私にできるのはそこまでだ。それでも、そんな私が烏滸がましいと自覚していたとしても、私はあの人のような、タナカさんのような……最強に憧れる。
助けを求める声を無視したくない。
救いを求める人々を見殺しにしたくない。
「私は、この戦場からあなたを救って見せる」
『恩着せがましい……ヤツだな……俺は俺が選択してここにいる』
「それでも、苦しんでいるのなら誰かが助けてあげないといけないと、私はそう思うのです」
『ッ…………理想論だ』
「理想を求めることは間違いですか?」
だから私は戦い続ける。
飛翔を止めず、換装を連続し、敵の動きを視界に捉え、先を予測し続ける。
能力ではこちらが勝る。理論上、ミスを一切しないのであれば勝つのは私だ。
すべての攻撃を無傷でいなし、こちらの攻撃だけを一方的に命中させ続ける。
エネルギー残量の問題は【
問題は私の気力と体力と集中力……
すべてが理想通りに運ばなければ持ち帰ることのできない勝利か……私が挑戦するものとしてこれほど相応しいことはない。
集中しろ。没頭しろ。
食事も、睡眠も、戦闘に無関係なすべてを自分の中から削ぎ落せ。
そして残った先にある
「私はこれから、不可能を解読する」
そう考えたその瞬間、私の頭の中は真っ白になった。
考えてから動いていない。直観的にTWを操縦できる。
桜色の軌跡が、私の行くべき道を示す。
それに従って、私は白桜を操縦する。
斬撃も、ミサイルも、プラズマも、ビームも、あらゆる選択肢の中から最適な一つが状況に合わせて直観的に浮上する。
今まで蓄積された戦闘経験から来る、直観的状況判断……
一つずつ、確実にそれを紐解き、実行し、実現し、私はそこへ至る。
6色の機体が戦闘時間に比例して、着実に数を減らしていく。
その光景を情報を処理するために眺めながら、次を考え続け……
一体どれくらいの時間が経ったのだろう?
モニターの時計を見れば、ここへ入ってすでに8時間が経過していた。
『なにか余計なことを考えたか? そこだ!』
棺桶を付けた翼が、白桜の身体を締め上げる。臨界の宝珠を発動している白桜の出力ならこれくらい退けるのは簡単なことだけど、敵の脅威は圧倒的な数だ。
巻き付いた翼と、近距離にいるベルセルク・レクイエムなど関係ないとばかりに、色とりどりの遠距離攻撃が飛来する。
赤い炎、青い氷、黄の雷が巻き付いた翼の上から白桜を襲う。
「……油断した?」
モニターに出力される無数のダメージアラートを眺めながら、私は小さくそう呟いた。
「違う。私は、勝ったから戦うのをやめたんですよ……」
これが私が千体のTWを撃滅する
これは、私がアレクセイ・ヴァシリエフに敗北を認めさせる
『戯言を!』
「TWの配置学……まぁ、こんな空間で隊列をヴァージョンアップさせる必要はないですから……かなり古い隊列だったので分析に少々時間がかかりました」
『なんの話だ?』
「あなた自身が搭乗したベルセルク・レクイエムが、どこにいるのかという話ですよ」
ここまでの戦闘記録からすでに、彼本体が搭乗するベルセルク・レクイエムにマーカーは付けてある。
「コマンドコード【パージ】」
シニカさんに取り付けてもらった特殊機能。
それは【
攻撃が集中する最中、頭上へ飛び出した白桜に即座に次の命令を送る。
「コマンドコード【ヘルスリセット】」
即座に、白桜の予備パーツが召喚され白桜は万全な状態へ戻る。
そして、この一瞬――すべてのTWは私の変わり身に攻撃を集中させているが故に、それらすべてを統括する指揮機への道が開かれる。
TWとはそもそも宇宙戦闘における最速の存在。白桜はその中でも速度特化の機体。それが雪華の効果によって倍速になる。
この疾走は、止まらない!
『俺を殺すか?』
メルさんからの依頼は彼の殺害。
だけど、それはメルさんが彼を愛しているからこその依頼。
愛なんて私にはわからないことだけれど、それでも彼はここで死ぬべきではないと、私は思う。
「いいえ」
外装を見れば、構造は粗方特定できる。
だから、コックピットとジェネレーターを傷つけないように手足、首を切断する。
雪華のビームサーベル以上に鋭利な切断能力があれば、重要器官が爆発を起こすことなく解体することは――可能。
「結界を解除してください」
動体を持ち上げ、刃をコックピットに当てがいながら私は告げる。
私たちを囲むTWはまだ300近く残っている。
それでも、それらの攻撃が私へ命中するよりも彼の命を私が絶つ方が早い。
『どうやら君の勝ちのようだな……』
「はい」
『信じていいのか? あの怪物を討伐する手段があると……』
「はい」
『英雄……そう在り続けるという誇りだけが俺を俺でいさせてくれた。それを失った俺に最早、生きる意味はない。殺せ』
彼がそう言うと同時に、結界が解除されていく。
宇宙船との通信が開いた。
「降伏した相手を殺すことは戦争法によって禁止されています」
『はは……そうだな……その通りだ。そもそも俺は英雄でなくなった時点で死んでいる』
その言葉を最後に、彼は何度呼びかけても応答することはなくなった。
代わりに、ソレは動き出す。
――ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
巨龍が咆哮を上げる。
そして――
『バトンタッチだ。よく頑張ったねセンリちゃん、それじゃあ終わらせてくるよ』
最強の傭兵は、付き物が取れたような気楽な声色で戦場へ歩き出す。
『
祝詞が通信機越しに聞こえてくる。
けれどそれは、今まで聞いたことのある11の式神のどれとも異なる詠唱だった。
12体目、最後の式神をタナカ・テンメイは呼んだ。