名探偵コナン 〜桜下の操り人形(マリオネット)〜   作:ワンピース 夢幻の炎

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沈黙の捜査線

夜を通して進められた捜査。

窓の外はわずかに白み始めていた。

捜査本部とは別に用意された、服部平蔵用の会議室。

そこで、平蔵は事件の資料に目を通していた。

 

コンコンコン

 

「……どうぞ」

 

不意に鳴らされたノック。

部下であるならば、「失礼します」と声をかけ入室してくる。

それがない事に一瞬の間が生まれた。

 

『失礼します』

 

見慣れないスーツの男が静かに部屋に入り一礼する。

 

「誰やったかな?」

 

記憶にない顔、しかしこの部屋に入ってきたという事は、捜査関係者。

普段から細く閉ざされている平蔵の目が男を見定める。

 

『公安のものです。単刀直入に本件についてですが』

 

スーツの男は淡々と資料を置く。

 

『捜査本部の規模を縮小していただきたい』

 

服部平蔵 の細い目がわずかに動く。

 

「……理由は」

 

『未来博への影響を最小限に抑えるためです』

 

「死人が出とる」

 

『承知しています』

 

男は一切表情を変えない。

 

『ですが、これ以上騒ぎが大きくなれば、国際的な信用問題に発展する』

 

「せやから、捜査を畳め言うんか」

 

『いいえ』

 

男は静かに首を横に振る。

 

『以降は、我々が引き継ぎます』

 

その瞬間、平蔵の狐目が、左だけゆっくりと開く。

鋭い眼光。

 

「公安が?」

 

『国家レベルの案件です』

 

「……ほぉ」

 

『既に官邸にも話は通っています』

 

空気が張り詰める。

 

「つまり、“上”の判断っちゅう訳か」

 

『ご理解いただけると助かります』

 

平蔵は机に肘をつき、開いた左目で男を見据える。

 

「理解は出来る」

 

低い声。

 

「納得は出来んがな」

 

「『………』」

 

互いの沈黙が、会話を終わらせた。

男は、一礼して部屋から出て行った。

扉が閉まったところで、平蔵はスマホを取り出し電話をかける。

 

「あぁ、ワシや…

ちょっと部屋まで来てくれるか」

 

呼び出しを受け、部屋に姿を現したのは遠山銀司郎。

 

『それにしても、公安か…。

随分と大きな話になったな』

 

向かいに座る 服部平蔵 は腕を組んだまま動かない。

 

「国家案件や。来ても不思議やない」

 

淡々とした声だった。

驚きも、焦りもない。

遠山は苦笑混じりに肩をすくめる。

 

『未来博っちゅう看板がある以上、上も神経質になるわなぁ』

 

平蔵はコーヒーを一口飲み、視線を落とす。

机の上には、公安側から渡された引き継ぎ資料が置かれている。

 

『しかし、妙やな』

 

「何がや」

 

『動きが早すぎる』

 

平蔵の細い目がわずかに向く。

 

『まだ事件発生から一日も経っとらん。

せやのに、もう公安が出てくる』

 

「……」

 

『まるで、“最初から待っとった”みたいや』

 

沈黙する平蔵。

遠山は続ける。

 

『数年前の件を思い出すわ』

 

その言葉で、平蔵の狐目が更に細くなる。

 

『あの再開発絡みの失踪事件』

 

「……ああ」

 

『あん時も、公安が絡んどったな…』

 

平蔵は黙ったまま、更にコーヒーを口に含む。

 

『結局、犯人は捕まらず、迷宮になってもうたが……』

 

「妙な話やった」

 

遠山は小さく鼻で笑う。

 

『そん時も、“上”が騒がしかったなぁ』

 

平蔵は窓の外へ目を向ける。

夜明けの光が、未来博会場の建設地をぼんやり照らしていた。

 

「今回も、似た匂いがする」

 

遠山は腕を組む。

 

『ほな、どうする』

 

一瞬の沈黙。

平蔵はゆっくり立ち上がった。

 

「どないもこないも、引き継ぐしかないやろ」

 

『……せやろな』

 

平蔵は飲みかけのコーヒーに砂糖を入れた。

その動きに遠山は反応する。

 

『珍しいな…』

 

遠山は何気ない口調で言う。

平蔵は何も答えない。

静かにコーヒーを混ぜるだけだ。

 

だが、長年の付き合いの中で、ブラックを好んで飲むこの男が砂糖を入れる。

それだけで十分だった。

平蔵は視線を上げない。

 

『ほな、資料作りは大滝にでも投げとくわ。

それはそうと、平次はどうすんねん?

誰に似たのか、すぐに首突っ込もうとするやろ』

 

「ほっとけ。

あいつは警察やない…」

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