綾小路 in Cクラス   作:NIES

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何気に伊吹をまともに書くの初めてかも


第13話:ルールの穴を突け

 

 

 

オレが豪華客船に戻ってから、五回目の朝が訪れた。今日は、無人島試験が終了する日だ。

 

龍園がどんな立ち回りをしてこの試験に勝利したかが気になっているオレは、試験終了時刻である正午より前に、メインデッキを訪れている。

 

 

「…………風が気持いいな」

 

 

今日はむし暑いというよりも爽やかな天気で、潮風に晒された肌の温度が下がっていくのを直に感じられた。遠目に見える無人島の砂浜に目をやれば、人だかりが出来ているのが見える。

 

 

 

「──────結果、楽しみですか?」

 

 

オレの隣に立った椎名が、そんなことを訊いてくる。ここは、素直に答えておくとしようか。

 

 

「ああ、そうだな。だが勝つのは当たり前だ、気になっているのは作戦の方だな」

 

「当たり前、ですか。流石ですね」

 

「それは龍園の方に言うことになるさ」

 

「前に言っていたリーダーすり替えの穴、彼はどう活かすと思いますか?」

 

「そうだな…………。恐らくアイツなら──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一位、獲ってきたぜ」

 

 

船内五階のカフェで羽を休めていたオレに、後ろから声が降り注いだ。こういうと優しい声のように思えるかもしれないが、実際は邪悪で禍々しいものだがな。

 

 

「そうか」

 

 

大体の生徒は無人島試験での疲れを癒すため自室にいる今、このカフェには店員を除けば、オレとコイツしかいない。思う存分話したいわけじゃないが、労いも込めて応じてやるか。

 

 

「獲って当たり前、みたいな言い草だな。綾小路」

 

 

二人席の空いていた正面の椅子に腰かけた龍園は、髭も髪もぼさぼさで、どれだけ苦労した生活を送っていたのかを察するには十分な様相だ。シャワーを浴びたのか髪はマシだが、匂いは結構キツイ。

 

 

「仮にもAクラスを目指すんだ。あの情報を活かせないようじゃお前に協力するのも飽きてしまうからな」

 

「ハッ、どこまでも上からだなお前は」

 

 

龍園は自嘲を混ぜたような笑みを溢してから、ガラッと雰囲気を変える。ここからが本題だということだろう。オレも自分の中で表情筋を締め直す。

 

 

 

「──────どうやったのか、訊かねぇのか?」

 

「大体の予想はついてるからな。だが、聞かせてくれるのなら願ったりだ」

 

「そうかよ…………

 

 

 

──────今回、オレはお前にルールの穴を聞いてから、当初の作戦を改良した。Aクラスに渡す情報には証拠が必須だから、スパイだけじゃ不安ではあったからな」

 

 

そう、龍園は語り出す。Aクラスに他クラスのリーダー情報を渡す代わりに、毎月2万プライベートポイントを全員が龍園に払う。派閥争いをしている葛城の立場も考えて勝ち星を与えるいい作戦だから、無駄にはしたくないだろうしな。

 

 

「リーダーすり替え、これを伊吹や石崎が帰った後にやられちゃ俺の面目も丸潰れの上に、Aクラスも問題も終わっちまう。だから、俺は考えた。どうすりゃ、絶対に証拠を掴めて、最後のリーダーを知れるかってな」

 

 

ここまで聞いて、オレは自身の予想が合っていたことを悟る。だが、最後まで龍園に話させてやることにした、暫くは勝利の愉悦に浸らせてやろうというオレからの計らいだ。

 

 

「そして、オレはスパイに選んだ二人も最初は俺に反発してたやつだと改めて気づいた。なら、こう考えるよなぁ? コイツらならまだ陰で反発してる(・・・・・・・・・・・・・・・)って思わせられるんじゃないか(・・・・・・・・・・・・・)ってな」

 

 

「…………相手は甘っちょろいBクラスと、脳の足りてない烏合の衆だしな」

 

「ああ。だから、俺はあえてアイツらにこう指示した。 対象クラスに潜り込んだら、数日間は大人しく協力して、最終日前日付近でリーダーすり替えという穴をバラせ(・・・・・・・・・・・・・・・・)ってな」

 

 

…………そう、龍園とはこういう男なのだ。オレが教えてやった勝つ秘策を、躊躇いもなく手下にもバラし、その上他クラスにも伝えさせるという裏切りにも近い行為。

 

だが、あえてその秘策をバラさせることで伊吹と石崎は他クラスからの一時的な信頼を買い、龍園が先生たちが待機するテントで見張ることで、証拠入手を確実とする。

 

 

「考えたな、龍園」

 

「馬鹿言え、俺に言った段階で、この作戦を望んでたんだろ。部下じゃなく、俺自身が証拠を確実に抑えることをな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────遡ること五日前。綾小路たちが船に戻った後のこと。

 

 

 

 

「じゃあ、俺たちはもう行きますね」

 

「私も早く済ませたいんだけど」

 

 

今回送り出す予定のスパイ二人と向かい合いながら俺、龍園翔はゆっくりと口を開く。今から言うことは、ついさっき思いついたばかりの奇策だ、反応が楽しみだぜ。

 

 

「ああ、だがその前に追加で指示がある」

 

 

それぞれB・Dクラスのベースキャンプがあると思われる方向に歩き出そうとする二人を呼び止める。

 

 

「何よ?」

 

「何ですか、龍園さん」

 

「お前らの役目は、キーカードの現物か渡したカメラでの写真撮影だ。だが、もし確保できても、最終日前日まで残れ。んで、ある程度信用された段階で、こう言え。‘‘実は龍園を嵌める策がある。自分がキーカードの証拠を渡すから、その後にリーダーを変更すればいい’’ってな」

 

 

さっき綾小路から聞いた、ルールの穴。現リーダーをリタイアさせてしまえば、代わりの後釜を用意できる。そんなものがあるなら、利用しない手はない。

 

 

「は?」

 

「リーダー変更って…………出来ないって龍園さんが言ってたじゃないすか」

 

 

二人の反応は想像通りのものだ。説明するのは面倒だが、しないことには向こうで説明させることも出来ねぇ。仕方ないな。

 

 

「俺もさっきまではそう思ってた。だが、気付いたんだよ。『正当な理由』さえありゃ出来るっつー言い回しだってな。リーダーのリタイアは正当な理由になんだろ?」

 

「流石です!龍園さん!」

 

「…………確かに、意地の悪いこの学校ならあり得るか」

 

 

二人とも納得したらしい。綾小路の存在を隠し通すのは難しいかと思ってたが、この様子なら余裕そうだな。油断はしないが。

 

 

 

「穴ってのは知らなけりゃ脅威だが、知ってりゃ利用できる罠になる。同じ手は使えないだろうが、ここでは契約の履行を優先する。俺を騙すため、んで後から変えれるなら証拠も自分らから差し出すだろ。変えないなら変えないで余裕だからな」

 

「分かったら行け。失敗は許さねぇぞ」

 

「うっす!」

 

「当然」

 

 

自信ありげに頷く二人を見送ってから、俺はこれから一週間どう過ごすかを考え始める。手始めに食料と水分の確保だな。

 

 




なんか、石崎って忠犬みたいですよね
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