綾小路 in Cクラス   作:NIES

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第16話:‘‘組まないか?’’

 

 

 

時は巻き戻り、優待者がメールにて確定した直後。俺、龍園翔はクラス全員の参加するチャットグループにて指示を飛ばしていた。

 

内容は単純明快、『全員個人チャットで俺にメールのスクショを送れ』というもの。素直に従う下僕どもは黙ってそれを容認し、数分後にはクラス39名分の画像が俺の元に届いた。

 

 

『あとはお前の出番だ』

 

『任された』

 

 

そして俺は、自身の駒の一つである綾小路にチャットと画像を送信した。今までの学校の行動から‘‘優待者’’なるものが各クラス均等に三名ずついるのは予測ができる。だが俺は更に、その優待者の割り当てに規則性があるのではないかと期待したわけだ。

 

違ったならそれはそれで別に困らないが、もしあるのならば事をより優位に進められる。綾小路に任せれば、あるなら数分ありゃ十分だろう。あとは期待するだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜十一時。全グループの初日のグループディスカッションが終了し、早い者なら就寝しているこの時間。俺は、カフェの個室にてとある人物を待っている。

 

 

「おせぇな」

 

「──────悪かったな。少し遅れた」

 

 

二人掛け席の壁側のソファにふんぞり返って待っていると、俺の独り言に返事がきた。二分の遅刻、まぁ許容範囲ってことにしてやるか。今の俺は気分がいいんでな。

 

俺は目の前の座席に腰掛け、こちらを真っ直ぐ見つめる瞳を見つめ返す。黒い瞳の中には、いつもより少しだけ上機嫌な俺のニヤケ面が映っていた。

 

 

「許してやるさ。今は気分が良い。

 

 

──────さて、無人島試験に引き続き(・・・・・・・・・・)仲良くしようじゃねぇか。葛城(・・)

 

「…………何が狙いだ。龍園」

 

「この試験、俺は既に勝利に王手をかけたと言っても過言じゃない。まだお前を失墜させるわけにはいかねぇからな。仕方なく引き上げてやるって言ったんだ」

 

 

─────俺の狙いは、最初からこれ(・・)だ。坂柳有栖と葛城康平によるAクラスの政戦を継続させ、内部分裂を加速させること。それが、地力実力共に俺たちの上を行くAクラスを引き摺り下ろす隙だからな。

 

そのためなら、一度や二度甘い蜜を吸わせてやることには何の躊躇いもない。最終的には、全員が俺に遜ることになるからな。

 

 

「そうじゃない。何故貴様はそこまで自信ありげに話を進められる。まだ試験は始まったばかり、手を組むことは視野に入れてもいいが、その訳を聞かせろ」

 

「鈍いぜ葛城、シャツがきつくて脳に血が行ってないのか? 俺は、既に全クラスの優待者を把握してる。試しに、お前のクラスの奴を当ててみてもいいぜ」

 

「何…………全クラスだと?」

 

「ああ。お前のクラスの優待者は石田、福山、六角の三人だ。違うか?」

 

「…………合っている」

 

 

そりゃそうだろうな。うちの綾小路が発見した規則に従って指名しただけだ。グループの干支の番号と、グループ内の五十音順の一致。それが、この試験における優待者決定の規則だ。

 

 

「理解したか? なら、その上でもう一度聞くぜ。俺と手を組まねぇか?」

 

「貴様に何のメリットがある。俺たちとの差は埋まらないぞ」

 

「んなこたぁ分かってる。俺はクラスポイントよりプライベートポイント重視なんでな。お前が一番分かってんだろ」

 

 

無人島試験で交わした契約。Aクラスの生徒(坂柳を除く)は全員俺に毎月二万プライベートポイントを寄越す。それが、アイツらが一位の代償に差し出したものだ。

 

その契約を履行する上でも、葛城たちにとっては金はあるに越したことはない。その上、この夏休み期間の試験に坂柳は参加できない。ここで派閥争いを優位に進めるための一手を打つことは奴にとっても理想だろう。

 

 

「………俺と坂柳を争わせ、その間に機を窺うのが貴様の策略か」

 

 

ま、そりゃお前程度の頭脳がありゃ分かっちまうよな。だが、分かっていようがいまいが関係ない。お前は、ここで俺と手を組む。それ以外の選択肢は、生憎用意してないんでな。

 

 

「隠す気はねぇよ、その通りだ。だが、断った場合も予想はついてんだろ?」

 

「Dも加えて三クラスで結託し、Aクラス(俺たち)を引き摺り下ろす…………」

 

「その通り。無人島では一泡二泡吹かせてやったが、利しかない作戦だ。きちんと契約書さえ用意すりゃ当然乗ってくるだろうさ」

 

「だろうな。一つ聞かせろ、葛城派()には裏切り者がいるのは分かる。だが、そいつでも優待者三人を把握できるとは思えない。手を組めば、何故貴様が優待者を当てれたのかも聞かせてもらえるんだろうな」

 

「そりゃ、一時的とはいえ仲間だからな。俺はこれでも仲間想いなんだ。聞かせてやるさ、この試験の絡繰りも全てな」

 

「──────作戦について、詳しく聞かせてもらおう」

 

「そうこなくっちゃな。この試験、俺とお前で終わらそう」

 

 

差し出された葛城の右手を、俺は素早く握り返した。この勝負、俺らの勝ちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験開始から丁度一日くらい。朝食には少し遅い九時前に、オレ綾小路清隆はビュッフェに来ていた。好きなものを好きなだけ食べれるこれが結局一番だな。

 

カリカリのベーコンや温かいウインナー、いい具合のスクランブルエッグなどを口に運んでいると、隣に誰かが座った。

 

 

「ん?」

 

「よっ、綾小路」

 

 

もうピークは過ぎガラガラなのに何故オレの横なのかと思い隣に視線を移すと、満面の笑みを浮かべた石崎がいた。

 

 

「石崎か」

 

「隣いいか?」

 

「ああ。断る理由もない」

 

 

承諾の意を示すと、石崎はトレーに乗せてきたハンバーグを大胆に口に運んだ。そして、うっめーと感嘆の言葉を洩らす。

 

 

「やっぱ食事は誰かと一緒がいいな!」

 

「そうだな。同感だ」

 

「ところで綾小路。最近椎名とは良い感じか?」

 

「ああ。友達として良好な関係性を築けていると思うぞ」

 

 

そう返すと、石崎は少し間を開けてからハハっと笑い、話題を変えていった。その後は予定があるとかで去っていったが、久しぶりに話せて少しは退屈を紛らわせた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾小路が優雅に朝食を満喫していたのと同時刻。昨夜手を組んだばかりの二人の計画が、早くも動き出そうとしていた。

 

 

『決行は今夜九時で間違いないな』

 

『ああ。申グループを除いた(・・・・・・・・・)全グループの試験を、今夜終わらせる』

 

『取り分は契約通りに』

 

『最高のショーの幕開けだ』

 

 

 

 

 




大体五日に一話くらい出せないかなーって思ってます
思ってるだけかもしれないです
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