綾小路 in Cクラス   作:NIES

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いつもより少し長めです


第21話:体育祭

 

 

 

──────体育祭当日。

 

誰もが待ちに待った(多分)体育祭当日がやってきた。どのクラスも、どの学年も今日のために数多くの作戦を練り、徹夜で勝ち方を模索してきたことだろう。その集大成が今日である。

 

 

「楽しみですね」

 

「ああ。そうだな」

 

「まさか、大胆とはいえ慎重な龍園くんが、勝ち確宣言をするとは思いもしませんでしたよ」

 

 

椎名が言っているのは、昨日龍園がHRで発言した内容のことだ。いつも通り偉そうに教卓に腰掛けた龍園は、開口一番こう言ったのだ。

 

『喜べお前ら。クラス対抗は一位確定だ』、ってな。

 

いくらA・C・Dの参加表を把握し、それに合わせて完璧な布陣を完成させているとはいっても、オレもあの発言には驚かされた。

 

 

「まあ、それだけ自信があるということだろう」

 

「綾小路くんは、本気を出すんですか?」

 

 

横に視線を向けると、椎名の瞳が真っ直ぐオレを捉えていた。まるで、心の内を全て見透かされているような気分になる。

 

 

「ああ」

 

「それは、本当の、という意味で捉えてもいいのでしょうか」

 

「本気も何も、オレは今まで本気を出さなかった試しがないからな。今まで通りにやるさ」

 

「……面白い冗談ですね」

 

「………だろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がんばれー」

 

「がんばってください!龍園さん!」

 

「Let's go bro.」

 

 

体育祭第一種目、100m走。その第三走者である龍園を、オレは石崎とアルベルトと並んで応援していた。とは言っても、Cクラス含め全員面子は分かっているので勝敗も既に決している。

 

 

「とんだ出来レースですね」

 

「勝てればいいんだよ、勝てれば」

 

「誰のセリフですか?」

 

「当然龍園だ」

 

「だと思いました」

 

 

隣に座っていた椎名も、龍園に視線を移す。アイツと同じレースには運動が平均より少し上の者しかいないので、圧倒することはないものの追いつける気配もないまま終わった。

 

そして、アイツが終わったということは次はオレの番だ。こんな暑い中走るのは苦痛以外の何ものでもないが、全員参加だしな。やらなくちゃならない。

 

 

「頑張ってきてくださいね」

 

「当然だ。椎名にそう言われてしまってはな」

 

「私が言わなくてもちゃんとしてください」

 

「善処はする」

 

「ふふっ。都合のいい、綾小路くんらしい言葉ですね」

 

「一応、褒め言葉として受け取っておくぞ」

 

 

少し笑った椎名に、そう返してからオレは席を立つ。ちゃんとやる、か。真面目にやっても役に立てるかは分からないが、一先ずちゃんとやってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

その後もオレたちBクラス、そして一之瀬率いるCクラスの快進撃は続き、総合点で紅組に勝ることはないものの、学年別ではしっかりと一位と二位を獲っていた。

 

棒倒しでは協力もままならない紅組に対し事前に綿密な打ち合わせと役割分担を相談していたオレたちでは最早まともな争いにすらならず、二本を連続で取り切り勝利した。

 

騎馬戦では龍園の姑息な‘‘鉢巻きにワックス作戦’’で他を圧倒し、神崎たちと結託することでDクラスとAクラスを蹴散らした。因みに龍園を支える騎馬の一人はオレだ。

 

 

 

 

 

「よろしくな!」

 

「ああ。よろしく」

 

「全力で行こうぜ!俺たちなら一位獲れるぞ!」

 

「だな」

 

 

午前中最後の種目である、二人三脚の時間がやってきた。ついさっき三組目の龍園小宮ペアが一位を掻っ攫った後であり、次はオレと石崎の盤だ。

 

横に並んでいるのは運動神経が普通から平均少し上の者たち、正直石崎がいれば負けることはないだろう。

 

 

 

──────その後、オレたちは全力で走り切り、見事一位を獲得した。石崎には肩を組まれ鬱陶しい思いをしたが、まあこれも青春の一頁に刻まれると思えば悪くない。

 

そんな感じで午前の種目は全て日程通りに終了し、予定より五分だけ早く昼休憩の時間となった。

 

組対抗では相変わらず紅組が無双しており、白組は午後の種目で全てBCクラスが一位と二位を獲らないと勝てないという危機的状況に陥っている。

 

しかしそれとは逆に学年別でのクラス対抗では最早午後の種目をほとんどADクラスに獲られてもまだひっくり返らない程の差が出来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────綾小路くん」

 

 

ここぞとばかりに独りでいた龍園を取り囲みに行く石崎やアルベルトを鑑賞していると、背後から声を掛けられた。

 

 

「椎名」

 

「お弁当作ってきたんです。良ければ一緒に食べませんか?」

 

 

振り返ると、二つの弁当箱を手に持つ椎名が立っていた。何やら思惑があるのか、視線はいつもと違ってオレから逸れている。

 

 

「………嬉しいな。椎名の作った弁当は美味しそうだ」

 

 

オレはそう返しながら、鞄から取り出そうとしていたコンビニ弁当を再び奥に押し込んだ。悪いが、お前の出番は今晩までお預けだ。

 

 

「そう言ってもらえると嬉しいです。早起きして頑張ったので」

 

「わざわざオレの為にか? 申し訳ない」

 

「いえいえ。私が勝手にやったことですし、お気になさらないでください」

 

「なら、美味しくいただこう。午後の為にも、精力を蓄えておかないといけないしな」

 

 

二人で少し人混みから離れた位置に移動してレジャーシートを置く。炎天下に晒されながらの昼食というのは気が進まないが、まあ椎名と二人ならそれも悪くないかもしれない。

 

 

「なんだか、小中学校での遠足を思い出しますね」

 

「………ああ、そうだな。懐かしい記憶が蘇ってくる」

 

 

 

その後も、椎名と好きな小説の台詞や、シーンの話をして盛り上がった。充分な時間をとっていたいた筈の昼休憩は、一瞬で過ぎ去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

午後の部の時間となった。最初に行われるのは午後種目でオレが唯一参加することになっている借り物競争だ。

 

各クラスから男女混合で選出された六名が、四人ずつクラス対抗で競う真っ向勝負。籤運と脚力がものを言う個人技能でもある。

 

 

「クク。俺の背中見とけよ綾小路」

 

「頼りなさそうな背中だな。逸らしていいか?」

 

 

第三レーンの列に並ぶ龍園に声を掛けられる。オレは第四レーンのため、必然的にコイツの後ろに立つことになる。なんか嫌だな。

 

 

「ふざけやがって。三位以下は許さねぇぞ?」

 

「獲る予定はない。何かアクシデントでも起きない限りはな」

 

「例えば?」

 

「お腹痛くなったりしたらどうしようもない」

 

 

オレがふざけてそう言うと、龍園は鼻で笑った。元からこういうヤツなので、特に気にしない。いやホントに、気にしてないからな。

 

 

「昼休憩であんなに甘ったるいシーン見せつけてんだ。その分働け」

 

「甘ったるい? 何か、甘味でも食べたのか? シーン?」

 

「この世間知らずが。まあ、とにかく俺の血糖値が上がってプレーに影響が出たらぶっ飛ばすからな」

 

「それはそっちで何とかしてくれ………」

 

 

そんなことを話しているうちに、龍園たちの番が来た。笛がなった瞬間全力で籤がばら撒かれているところまで走っていき、中身を確認してから白組の応援席まで走っていった。

 

普段不真面目なやつとか、先生にタメ口きいてるやつとかが真面目に走ってるのってなんかシュールだよな。まあ、勝つためなら何でもする龍園には当てはまらないことだが。

 

 

 

 

「俺は勝ったからな」

 

「みたいだな」

 

「お前も勝て。午後はこれだけだろ、全力出せよ」

 

「そのつもりだ」

 

 

龍園は見事、一位で帰ってきた。因みに、石崎を連れて来てた。お題は知らない、石崎にとっていい内容であることを祈るばかりだ。

 

 

 

 

俺の番が来た。笛が鳴ると同時に走り出してから、周りを確認する。参加表通り、Dクラスからは牧田、Cクラスからは網倉、Aクラスからは橋本が参加している。

 

龍園はさっきああ言っていたが、事前に『借り物競争は運だから、気楽にやれ。出来るなら結果を伴って終わらせろ』と証言を貰っている。ので気楽にやらせてもらおう。

 

落ちている無数のくじの中から、直感で一個を拾った。くじを引き直すには待ち時間が発生するので出来れば一発で決めたい。

 

来い! 来い!

 

心の中で願うのを一秒で終わらせ中身を見る。そこに書かれていたのは──────

 

 

 

──────『好きな人』

 

 

 

4ね。無機物に対してここまでの殺意を抱いたのは初めてだった。純粋な、心の奥から出た感情。くたばれ。

 

なんだよこれ、異性に渡ししたらそれはもう告白と同義だし、同性に渡そうものなら明日以降そういう目(・・・・・)で見られかねない。

 

 

ロスタイムである三十秒を待ってから再び引き直す方向にシフトチェンジを決定した。幸いまだ誰も戻ってきてない。こっちに向かってくる気配もない。まだチャンスはある。

 

次に引いたお題──────

 

 

──────『異性の友達』

 

 

よし。そのお題を見た瞬間オレは勝ちを確信し、白組の応援席目掛けてダッシュを開始した。なんてったってオレには椎名がいる。悪いがこの勝負、オレの勝ちだ。

 

 

 

「椎名。来てくれるか?」

 

「は、はい。分かりました」

 

 

テントまでくると、前方に腰掛けていた椎名に声をかけ手を差し出す。まだ誰もゴールしてないはず。一着は無理でも二着くらいまでなら射程圏内だ。

 

 

「行くぞ」

 

 

手を繋いで走り出す。椎名は運動が苦手なので、さっきよりかはペースを落とす。後ろから石崎とアルベルトのひゅーひゅーという声が聞こえてきた気がしたが気のせいだろう。

 

そのまま走り切ったが、ギリギリで紫色の髪をした女子生徒を連れて走ってきた橋本に負けてしまった。悔しいが、まあ甘んじて受け入れるしかないだろう。最初のお題で行くよりは数段マシだ。

 

 

 

 

 

 

 

その後も、オレたちBクラスが負けることはなく、男女混合二人三脚や、四方綱引きでも勝利を収め、三学年混合リレーではニ三年生Aクラス、三年Bクラスに次ぐ四位という堂々たる結果を残した。

 

アンカーを担った龍園は珍しく素直に嬉しかったらしく、こっそり笑っていた。いつもの悪そうなやつじゃなくて、素直っぽいやつ。

 

 

 

 

説明を聞いたときはどうなることかと思ったが、終わってみれば悪くない行事だったな。

 

オレは生徒の熱気がまだ漂っているグラウンドを見ながら、そう思った。因みに、借り物競争のあと龍園には「何一回待ってやがるタコ」って言われた。お題の件を言ったら笑われた。

 




体育祭の結果

組対抗:白組の勝利

クラス対抗
一位:B(龍園)クラス
二位:C(一之瀬)クラス
三位:A(葛城)クラス
四位:D(平田)クラス


クラスポイントの変動
A(葛城)クラス:1474→1424
B(龍園)クラス:866→816
C(一之瀬)クラス:596→496
D(平田)クラス:0→0


因みに、龍園のお題は「不良」です。綾小路はそれを聞いた後「俺がお題だ」って言ったらよかったじゃないかと言って蹴られてます。




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