綾小路 in Cクラス 作:NIES
もっと各編を長くした方がいいのでしょうか
──────体育祭が終了してから一週間と少しが経った今日。この日は皆が待ち望んでいた(諸説あり)中間試験の結果発表が行われる日である。
龍園主催の勉強会で日々努力を多分重ねている者にとっては、待ち切れない日だっただろう。うちのクラスで体育祭でのペナルティを受けた者は椎名のみ。彼女が赤点を獲るわけもないので、数点のペナルティなどないに等しいだろう。
「──────嫌になっちゃいますね」
「何がだ?」
「ペナルティですよ。まあ諦めてますけど、身体能力ではやはり役に立てません」
オレがぼんやりと空の上の方にある雲を眺めてると、隣席で椎名が嘆く。悲観する程のことでもないと思うんだがな。
「その他の分野で役に立ってるのなら問題はないと思うがな」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「椎名は今回の試験、自信はあるのか?」
「ええ、まあ。それなりにはありますよ」
「流石だな。オレは少し不安だぞ」
「ふふ。相変わらず演技が下手ですね」
そんな会話をしていると、坂上が教室に入ってきた。仕方ないから会話を切り上げる。もうちょっと遅く来てほしかったな。そう思いながら視線を再び空に戻した。
──────ペーパーシャッフル。その特別試験の存在が知らされたのは、今日のSHRでの出来事だった。期末試験の代わりに行われる、学力に特化した特別試験。
龍園も坂上の話を聞いた一瞬は苦い顔をしたが、数秒経てばいつも通りの悪人面に戻っていた。大方、悪い案でも思いついたんだろう。
『綾小路。Dクラスに仕掛ける』
『だろうなと思ってた』
『AやCには学力じゃ勝てないからな』
『お得意の奇策は?』
『ひよこが目の前でよちよち歩きしてんだぜ? 態々罠張って鷲に喧嘩を売る馬鹿はいねぇよ』
ひよこ…………まあ、ひよこか。酷い言われようだが、事実だから否定はしない。庇う義理もないしな。
『狙いはいいが、Dクラスは皆の狙いどころだと思うぞ』
『んなこた分かってる。だから、金で解決すんだろ?』
『プライベートポイントで狙いを確定させる権利を買うのか』
『ああ。放課後坂上に聞きに行ったら30万だとよ』
『意外と少ないな』
『ああ。貯金を使えばなんなく払える。不満はあるか?』
『ない。今回の試験は、学力で下のクラスを相手にしてしまえば、負けることはない』
…………自クラスから裏切り者が出ない限り、そう心の中で付け加える。今まさにAクラス街道まっしぐらなBクラスから裏切り者が出るとは考えずらい。
それに、相手がDクラスな時点で裏切るメリットも存在しないだろう。クラスの長が龍園であることも、裏切りづらい要因の一つ。言うまでもないだろう。
『それと、坂上の言ってた小テストについてはどう思う?』
ペーパーシャッフルとは、二人一組で受ける特別試験だ。全五十問百点満点の試験を計八種受ける。ペアの各科目の合計が六十点以下、ペアの全科目合計がボーダーライン以下またはその両方の場合、ペアは両方退学処分となる。
『小テストの結果次第でペアが決まると坂上は言っていた。何か、法則があるだろうな』
『ああ。俺は、それが成績の低い奴と高い奴を組ませるものだと踏んでる』
『………同意見だ』
オレと同じ結論を、既に出していた龍園に、最早驚きはしない。徐々にだが、コイツは策略だけでなく思考方向までオレに似てきてる。このままオレを必要としなくなってくれればいいんだがな。
『坂上は例年、Dクラスで一から二ペア程度の退学者が出てると言った。毎年の不良品が集まるDクラスがだぞ?
──────どう考えても
『不規則にペアが決まるのなら、もっと出ても良い筈だな』
『ああ。だからこそ、退学者が出過ぎないような法則になってる。考えられるのはこれくらいだろ』
学校側が出す試験問題ならば多少難易度が下げられてる可能性も否定できないが、これはクラス対抗戦だ。敵クラス相手に情けをかける馬鹿はいない。
『だな』
『とりあえず方針は決まった。あとは俺がやっていいな?』
『ああ。王はおまえだ。決めるのも当然王だろ』
『クク。…………いつか、お前に挑んでみてぇもんだな』
『オススメはしない。曲り形にもクラスの仲間だ、故意に負かしたくはない』
『有難い忠告に感謝するぜ。それじゃあな』
そう一方的に宣言すると、龍園からの電話は途切れた。試験問題の製作などは金田や椎名に任せればいいし、今回はオレの出番は無そうだな。
龍園からの電話が切られた後オレは、一息ついてから今度は別の人物に電話をかける。今は夜の十時、まだ流石に起きてるだろう。二回コールして出なかったら明日の朝だな。
『──────もしもし?』
意外にも目当ての人物は一コール目で出てくれた。有難いな、無駄な時間が省けた。
『──────もしもし。お久しぶりです、
『よせ。もう引退したんだ。
目当ての人物──────堀北学は、そう言って電話に出た。
『じゃあ、堀北先輩。実はお聞きしたいことがありまして』
『話すのは夏休み期間以来か。それでいきなりそんな話か?』
『オレに近況の報告でもしろと?』
『冗談だ。本題に入れ』
彼と最後に話したのは、夏季休暇中にケヤキモールでうっかり出くわしたときだったな。確かそのとき堀北は、お団子頭の女子生徒と一緒にいた。名前は確か橘。
『お聞きしたいのは、
『ほう?
『ペーパーシャッフルという特別試験についてです』
…………坂上は、‘‘例年通りならペア合計点のボーダーラインは七百点前後’’だと答えた。ここで違和感を持ったのは、恐らく龍園も同じだろう。
‘‘例年’’、この言葉が嘘じゃないのなら過去にも行われていた可能性が高い。それも、一年生時に。
『確かに、あったなそんな試験が』
『やっぱりそうでしたか。試験内容を教えるのは生徒会的にアウトでしたっけ?』
『生憎ともう所属してないんでな。俺を縛るものは何もない』
『無敵の人ってことですか。頼りになります』
『やはりお前に教えるのは止めにするか』
『冗談じゃないですか』
そんな会話をしながらも、オレは向こう側の雰囲気が変わったことを察した。ここからは真面目に話す時間だ。
『…………ペーパーシャッフルの全ての内容が同じとは限らないぞ』
『ええ。それも当然把握しています。訊きたいのは本番ではなく小テストの方でして』
『小テスト?』
『本番のペアを決めるための小テストです。堀北先輩の代では行われませんでしたか?』
『いや、作戦面の方を訊かれるかと思っていたから驚いただけだ。ペア決めの法則の確認だろ? 教えてやれるが、見返りは欲しいところだな』
『何が望みですか?』
『止めて欲しいヤツがいる。学校でも可能性があるのはお前くらいだ』
『──────詳しく、聞きましょう。それと、それなら後一度の協力を──────』
翌朝、オレは龍園の説が正しかったことだけを報告した。誰から聞いたのかは明言しなかったが、アイツも堀北の優秀さは知っている。条件もオレと同じだから気付くだろうな。
そういえば作中ではもうすぐ綾小路&龍園の誕生日ですね
この二人の双子説あるけどどうなんでしょうね…………