綾小路 in Cクラス 作:NIES
第26話:ミッション「不利な試験に立ち向かえ」
──────山に向かってます。バスで。
「よっしゃ俺あがりっ!」
「Oh my God.」
「石崎氏、イカサマはよくないですよ」
「してねぇっつの」
「アルベルト氏もそう思いますよね?」
「sure.」
いつかのグループ別試験を思い出させるような面子で、トランプを繰り広げる。ババ抜きという泥試合になりやすいゲームで一番に抜けた石崎に対して、金田が冗談を言う。
「あ、綾小路。俺はやらねぇ奴だよなぁ?!」
バスの中、席が隣ということもあり肩にしがみついてくる石崎を牽制しつつ、オレは自身の手札を眺める。ハートのジャックに、スペードのキング。それとジョーカーだ。
「うーん、どうだろうか」
「そこは嘘でも否定してくれよ!」
「否定できるほどの要素がないんでな」
そう返しながら、オレはオレの次の引き手であるアルベルトにジョーカーを引かせる。視線や指の動きだけでも、誘導は可能だからな。
「oh....」
落ち込むアルベルトの肩を叩きつつ、金田が何を引いたかを見定める。誰かが抜けるまで手を抜いていたが、これには帰った後でのジュース奢りの罰ゲームが懸かっているので勝たせてもらうぞ。
──────結果、アルベルトが負けた。オレは二番目に抜け、ラストは一枚対二枚の運勝負。見事にダイヤのエースを引き当てた金田に軍配が上がったわけである。
…………話を戻して、オレたち一年生は今、大型バス計四台にクラス毎に乗せられ、山の中を運行中である。目的地はまだ知らされていない。だが、ニ三年生も同時に向かっているので、特別試験が行われるのはほぼ確定だろう。
新年早々面倒なことが始まってしまった。しかし、他学年の情報を得る貴重な機会でもある。この機を逃さず、他学年にも友人を…………
大富豪も佳境に入ってきた頃、前方の席に座っていた坂上が腰を上げた。何やら真剣な顔をしているので、これからの試験についての説明だろう。なるべく簡単でありますように。
「皆さん。目的地で行われる特別試験についての説明をするので、一旦真剣に聞いてください。一応ルールの記載された紙は配布しますが、到着と同時に回収するのでお忘れなく」
そう前置きしてから、特別試験のルール説明が行われた。今回の試験を端的に言うなら、『三学年混合種目別試験』だろう。名称は『混合合宿』と名付けられていて、一年生から三年生までが入り乱れたチームで試験を行う。
詳細なルールはこんな感じだ。多少面倒だし個人に負担が掛かることもあるが、無人島試験などに比べればまだマシだろう。まあ経験してないから分からないが。
・学年別男女別で六個の小グループを作り、責任者を決める。
・後からのメンバー変更は不可能。また、小グループ形成には最低二クラスの生徒が参加している必要がある。また、このメンバーで七泊八日の共同生活を行う。
・学年別の小グループが三つ合流することで大グループを形成できる。順位は大グループ全体の成績で決定されるが、試験の採点はどちらのグループも行われる。
・最終日には試験があり、内容はそれぞれ『禅』『筆記試験』『スピーチ』『駅伝』である。メンバー一人一人の点数を平均したものがグループの成績であり、それで順位付けが行われる。
・報酬は二クラス混合の場合は等倍、三クラス混合の場合は二倍、四クラス混合の場合三倍される。また、グループメンバーの数÷10の値が基本報酬となる。
・小グループ責任者のいるクラスの生徒の報酬は、基本報酬・クラス混合数の合算をした後に四捨五入され二倍される。
以下基本報酬とペナルティ。
一位:1万プライベートポイント+3クラスポイント
二位:5千プライベートポイント+1クラスポイント
三位:3千プライベートポイント
四位:5千プライベートポイント
五位:1万プライベートポイント+3クラスポイント
六位:2万プライベートポイント+5クラスポイント
・六位のグループを形成する小グループの中で学校の指定するボーダーラインを割った小グループがあった場合、責任者と責任者が指定する生徒一名を退学とする。
一番ヤバそうなのが連帯責任で一人を退学に出来るって話。正直これで狙い撃ちにされたら大人しく現実を受け入れるしかないだろう。
それに加えて、今まで他クラスに喧嘩を売りまくってきたBクラスにとって、他クラスと協力せざるを得ないこの試験はかなり向いていない厳しいものになると予想される。
龍園がどう動くかは分からないが、もしオレたちのクラスを抜いた一年全員で小グループを組まれようものならオレたちは為す術もなくペナルティを受けるしかないしな。
「…………仕方ねぇ。今回の試験、守りに行く。Dクラス以外には結託の余地は残ってるからな。気に食わないが、可能なら四クラスで美味い報酬を貰ってペナルティを帳消しにするのが最適解だ」
声を上げた龍園の台詞に、反抗する者はいない。体育祭あたりから、アイツの人望に多少の回復の兆しが見えてきている。暴君も、結果を出せば文句は出ないからな。
試験ルールの記載されたプリントを一瞥してから再びトランプを始めようとする石崎に苦笑いしつつも、オレは念の為
「──────あ゛~~、寒いな」
オレは白い息を吐きながら、口を両手で覆い隠す。こんな冷え切った空気を肺に入れたら呼吸困難になってしまうからな。
「なんだ綾小路。寒いのは苦手か?」
目的地である山寺に着いたのち、教師陣の準備の間オレたち生徒には待機命令が出されていた。ならバスの中で待たせろよと思うが、これもこの寒さにたえるためなのかもしれん。
「そうだな。暑いのも寒いのも苦手だ。春と秋が好きだ、特に秋」
隣に立った石崎の世間話にそう返す。ずっと変わらない温度湿度の場所で過ごしていたからか、夏や冬は苦手だ。初夏の空を見るのは気持ちいいんだがな。
「俺も秋好きだぜ。紅葉綺麗だし、丁度いい気温だし、雨降らないしな」
「どうやらオレたちは親友みたいだな。石崎」
「おお! 小グループも一緒に組もうぜ、綾小路!」
「龍園の許可が出たらな」
そんな会話をしていると、少し離れたところから視線を感じた。見てみれば、三年生の乗って来たバスと三年生がたむろしている空間があった。その中で、一人の男から熱烈な視線を向けられてる。
堀北学である。オレが先程、試験のルールを聞いた後に『身近な人間のグループ配置には気をつけろよ』と忠告していたからである。今回は全学年混合、その中には当然学が警戒している南雲雅もいるからな。
彼の話では約束は守るが、どんな手段を使ってくるか分からない相手でもあるらしい。面と向かって敵対しているのなら、彼ではなく彼の周囲に攻撃をすることもあるかもしれない。
『試験の最後のルールは南雲が生徒会権力で付けたと聞いた。それもこの為と思うか?』
『ええ』
オレがそうメッセージを送ろうとすると、今まさに金髪の男子生徒が学に声を掛けに行った。現生徒会長である、南雲雅だ。
南雲に対応しつつまだこちらを見る学に、ほらなという顔をプレゼントする。内容はどうやらどっちのグループが高順位を獲れるかで勝負をするらしい。
が、あくまでそれは表向きの話。裏でどう動くかなんて分からないんだ。約束通り、南雲止めの為の忠告はした。これでもまだ甘えるようなら、情報だけ貰う役割に変更しないとな。
そういえば、ペーパーシャッフル後のクラスポイント載せてませんでしたね
A(まだ葛城)クラス:1424→1324
B(龍園)クラス :816→916
C(一之瀬)クラス :496→596
D(平田)クラス :0