綾小路 in Cクラス 作:NIES
「──────さて、グループ決めを始めようか」
「ああ。そうだな」
「なるべく、公平に決めたいものだ」
真嶋によって試験の説明が改めてなされ、オレたちにはそれぞれ小グループ形成の為の時間が与えられた。散らばっている各クラスの生徒の中心に、三人の人物が集まる。
一人は、未だ坂柳と政権争いを繰り広げている葛城。二人目は、我らが王様である龍園。三人目は、一之瀬から男子を任されていると思われる神崎だ。
Dクラスを仕切っているのは平田という生徒だと聞いていたが、名乗り出てくる素振りはない。と思ったが、少し気だるげな足取りで前に出てきた。金色の髪を持つ好青年だ。
「僕も、話し合いに混ぜてもらえるかな」
「随分と足取りが重いじゃねえか。引っ込んでたっていいんだぜ?」
顔は少し瘦せていて元気もない。明らかにクラスを率いている器じゃない平田に、龍園が帰るように促す。しかし、平田は下がらなかった。
「これ以上、クラスの皆を退学にさせるわけにはいかないんだ。話し合いを、続けよう」
「まあ、そうだな。では小グループ結成についてだが、考えていることは恐らく半分が同じだろう」
「そうだろうな。特に堅実な葛城とは、一致すると考えている」
葛城の発言に神崎が頷く。それを黙って見ていた龍園も、ようやく口を開く。上手く折り合いをつけて欲しいものだが、はてさてどうなることやら。
「クク。信じらねぇかもしれねぇが、俺も同じだろうぜ。四クラス、若しくは三クラスで結託して絶対一位を獲れる小グループを作ろうってな」
「─────同じだ」
「─────Cクラスもだ」
「僕も、それが理想だよ」
今回の試験は、ペナルティを見ればかなり痛いように見えるし実際痛いのだが、それは各クラスがいがみ合っている場合にのみ起きる。四クラスでなるべく数の多い小グループを形成し、一位を獲れればペナルティなどないも同じだからな。
どうやらどのクラスも同じ結論に至ってくれたらしい。龍園も当然気付いていたし、オレの出番は無さそうだな。
「話は、まとまったな。一年男子の母数を考えれば数は大体十二か十三あたりが妥当。各々クラスで優秀な人物を派遣し、二三年の小グループは話し合いで決める。どうだ?」
「それが丸いな」
「差は縮まらないかもしれないが、安全策を取ることが重要だ。これからも特別試験はあるだろうからな」
「残る問題は…………」
平田が、言いずらそうに言葉を濁す。全員が気付いている、この作戦唯一の欠点。それは──────小グループの責任者をどのクラスの生徒にするか。というものだ。
「正直、A~Cまでは全然覆るポイント差だ。それこそ、試験が二つありゃCがAになることだってあり得る。だが、Dクラスは違う。だろ?」
「それは…………」
「そう、だな。無駄に揉めるのも好かん。ポイントが入るだけでも俺としては有難いからな」
「うちもだ。差はあまり変わらないと思うが、それでも構わん。それよりも上二クラスに責任者をやられる方が困るからな」
意外にも、龍園から言い出し、全員が考え付いていたこの問題の結論。各々の思考する最適解が一致した瞬間だった。
──────Dクラス、平田に責任者を任せる。それが、各クラスのリーダーが出した答えだった。本来ならもっとバチバチやるかとも思ったが、葛城も神崎も平田も、ポイントが入るだけでも助かる位置だからな。
「おい。今から呼ぶ奴は学年最強の小グループに入れる。すぐに来い」
龍園が、のんびり待っていたオレたちに声を掛ける。恐らくオレは呼ばれないだろうから、正直助かったな。大変な役回りは石崎にでもお願いしよう。
小グループのメンバーの内訳はAクラスから三人、Bクラスから四人、Cクラスから四人、Dクラスから二人となった。これはクラスポイントと責任者ボーナスを加味した結果だ。
「まず金田、お前は駅伝は兎も角座禅・スピーチ・筆記試験での活躍を期待してる」
「はい、分かりました。全力を尽くします龍園氏」
まず呼ばれたのは金田だ。運動以外大体何でもこなす奴だから、抜擢は必然だ。問題は残りの二人。できればオレは選ばれたくない。五人に一人の確率とはいえ、優秀な奴だと思われると正体云々以前に期待されてしまうからな。
「んで三人目は、金田の運動神経という穴を埋める且つ、俺の言うこと聞ける石崎。お前だ」
「ありがとうございます龍園さん!」
「実力で選んだだけだ」
いや、明らかに最後私情入ってたよな?言ってたもん最早。『俺の言う事聞ける』って。確かにまだ、全員が龍園の言う事聞けるわけじゃないけども。
さて、問題は最後の一人。龍園はある程度勉強ができるらしく運動神経もいい。金田と石崎で両方いい感じの実力。となると最後の一人はどちらもある程度できる且つ、輪を乱さないような奴が選ばれるだろう。
あれ、このクラスにそんな器用な奴いたっけか。いや、いる絶対いる。若しくは、試験どれかを蔑ろにしてでも点数差がある駅伝を取る為に運動神経がいい奴を入れるのかもしれん。
「そして最後。文武どちらも出来る且つ、輪を乱さずに高得点に貢献できる奴を選ぶ。お前だ
──────綾小路」
オレかい。なんでだよ、もっといい人選あっただろ…………と言いたくなったが、案外妥当な選択かもしれない。オレは試験ではいつも六十後半から八十弱を獲っているし、体育では龍園に嘘の平均を言われて結構いい記録を出してしまったこともある。
事実か、そして望んだかを無視すれば、オレは功績だけでいえばクラス内では上位だ。仕方ない、言い訳しても悪目立ちしそうだし、運命を受け入れるか。
「小グループ、同じになったな」
「ああ。そうだな」
「龍園さん、誘ったらトランプやってくれると思うか?」
「やってくれるだろ。アイツ、意外とイベントは楽しむタイプな気がするし」
「一先ず、一週間よろしくなっ、綾小路!」
石崎に背中を軽く叩かれ、オレたちは龍園と金田の後を追う。このときBクラスの男子から向けられていた怪しみの視線に、オレは気が付かなかった。
「この面子で一週間か」
「濃いな」
「協調性とかは………言うだけ無駄か」
数分後、一位を獲るための小グループのメンバー全員が集結した。正直、オレは絶対釣り合ってない。帰りたい、アルベルトや石崎たちとトランプしてたかった。
メンバーは以下の通りだ。かなり濃い、濃すぎて数分ごとに部屋の換気をせざるを得ないであろうと確信できるくらいには濃かった。
Aクラスからは「葛城康平」「橋本正義」「町田浩二」
Bクラスからは「綾小路清隆」「石崎大地」「金田悟」「龍園翔」
Cクラスからは「神崎隆二」「柴田颯」「浜口哲也」「渡辺紀仁」
Dクラスからは「平田洋介」「幸村輝彦」
その後、大グループ形成の為の時間がとられ、オレたちの所属する小グループは南雲生徒会長と同じ大グループになった。
三年生も比較的優秀そうな人材が集まり、総合で一位を狙うには十分すぎる面子となった。問題は、オレが南雲側であること。学には悪いが、表の勝負では手助け出来そうにない。
「──────そっちはどうだ?」
「こちらは特に問題ありませんよ。先程話していた男の人の方のやり方と同じです」
夕食に充てられている一時間、それだけがこの混合合宿で男子と女子が接触できる時間である。オレはいつも通りではないが、椎名と夕食を共にしている。当然、椎名と話したいからというのもあるが、情報共有の為だ。
「そうか。一応聞いておくが、同じ大グループの三年生に小柄で、薄紫色の髪のお団子頭をしている女子生徒はいたか?」
「見た覚えはありませんね…………その方がどうかされたのですか?」
「いや、見てないならいいんだ。一応、同じ小グループのメンバーを聞いても良いか?」
「ええ。Aクラスからは坂柳さん、神室さん、森下さん。うちからは私、伊吹さん、木下さん、矢島さん。Cクラスからは網倉さん、一之瀬さん、津辺さん。Dクラスからは小野寺さん、櫛田さん、松下さんですね」
「随分と豪華な面子だな」
「勝ちに行ってますから」
しかし、坂柳が同じ小グループにいるのか。
「椎名」
「なんでしょう」
「坂柳には気をつけろ。椎名のことだから無駄な情報を伝える可能性はないと思うが、オレの中では最重要危険人物だ」
「Aクラスのリーダーですしね。分かりました、気をつけます」
「ああ」
オレたちはそこから話題を変えていき、食事を終える頃には結局好きな小説の台詞の話になっていた。