綾小路 in Cクラス   作:NIES

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第3話:違和感の正体

 

 

入学して丁度1週間となる今日、オレは食堂へと出向いていた。何故かって?

 

椎名に言われるも自炊は面倒だという理由でコンビニで買った弁当や総菜ばかりを食べていたら、彼女から直々にお説教を受けたからだ。

 

といってもいきなりご飯が作れるようになるわけではないので、初めての食堂にチャレンジしようとしているわけである。

 

 

…………因みに、他に誰か誘おうとしたが断られたら立ち直れないという理由で断念したのはここだけの話だ。

 

 

 

 

 

「席、ありますかね」

 

「流石に満員ということはないだろう。どこかにあるさ」

 

 

並んで立つ椎名があたりを見回す。オレも倣って食堂内を散策すると、奥の方に二人掛けの席が空いているのを見つけた。

 

幸か不幸か二人席、他の誰かを連れて来ていたら座れなかったから、オレの判断は間違っていなかったということになるな。よし、オレは悪くない()

 

 

 

「で、どこに行けばご飯が出てくるんだ? 誰か、店員にでも言えばいいのか?」

 

 

席に座ると、オレは目の前に腰掛けた椎名に尋ねる。なにせ、こういった場所に来るのは初めてだから仕様が分からない。

 

無知を晒すのもどうかと思ったが、彼女はそんなことを気にするタイプの人間ではないだろう。少なくとも、数日関わってきた中でオレはそう彼女についての結論を出した。

 

 

 

「…………綾小路くん、博識だと思っていたのですが、こういったところに来るのは初めてですか?」

 

「親が厳しくてな。中学でも、友達と遊んだりすることはなかった」

 

「そうでしたか。ここの場合はあちらに見える券売機で頼みたい料理を選び、食券を提出して待つ仕組みです」

 

 

椎名も最初は信じられないようなものを見る目で視てきたが、訳を説明すれば納得してもらえた。教えてもらってばかりでは申し訳ないから、機会があれば豆知識でも披露しよう。

 

 

 

 

 

「節約家になったのですか?」

 

 

オレの前に置かれた山菜定食を見て、椎名がぼやく。こちらに疑念の眼差しを向けてきているのを見るに、オレは未だに散財する大馬鹿者だと思われていたらしい。心外だな。

 

 

「只より高い物はない。無料で食欲を満たせると言うのなら、それに越したことはないだろ?」

 

 

そう、オレの頼んだこの山菜定食はなんと無料だ。名前の通り薄い味付けのされた山菜のみを主食とした定食。一見まずそうにも見えるが、食べてみれば意外と美味い。

 

 

「それはそうですが、初日に大量の菓子類やらアイスやらを買い込んでいた綾小路くんからその言葉が出るのは違和感があります」

 

「10万が手元にあるとしても、やっぱり節約は大切だからな。来月になったらまた10万だし、今度はもっと高いやつを買ってもいいかもしれないな」

 

 

オレは、龍園の言っていた『来月は10万は振り込まれない可能性』について少し興味が沸いたため、会話の中にそれを織り交ぜてみた。

 

ここ数日の関りで彼女が聡明であるのは疑いようのない事実であると確信しているが、椎名は坂上の発言の違和感に気付いているんだろうか。

 

 

 

 

「…………来月も、10万ポイント」

 

 

オレの発言を繰り返すように椎名は呟く。そして、きりっとした瞳でこちらを見つめた。

 

 

「綾小路くんは、本当に来月も10万ポイントが貰えると思っているのですか?」

 

 

いつもの彼女なら見せないような。こちらを試すような、値踏みするような視線。龍園と同じように、彼女も勘づいていたらしい。

 

 

「坂上の話をそのまま受け取るのなら、そういう解釈になる」

 

「私も、一度は違和感をスルーしました。ですが、よく考えずとも教師である坂上先生が事実を隠す理由はありません」

 

「忘れていた、ってことはないか」

 

「ええ。忘れていたのではなく故意に黙っていた場合、考えられる事実は一つ。月初めに振り込まれるポイントは変動する、ってことじゃないですか?」

 

 

まぁ、彼女の言っていることも分かるな。坂上は仮にも教師、大事な連絡をせずに忘れていたなんて理由で通る筈もない。

 

 

「…………アイツの言ってたことは、あってたか」

 

「あいつ?」

 

「いや、何でもない。それに、どうせ来月になれば全部分かるだろうしな」

 

「なるべく、節約しましょうか」

 

「だな」

 

 

龍園のことを思い返し、自然に出た独り言を流す。オレみたいな普通のヤツなら恐らく来月まで気づきもしないであろう事実に初日で勘づいた男、か。

 

ここもただの高校ではないみたいだし、オレは進路選択を間違えたのかもな。自嘲を含む笑いを溢してから、オレは山菜定食を口に運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

オレと椎名が節約を決意した翌日、教室内はやけにうるさかった。いつも騒がしいが、今日は特に男子がやかましい雰囲気を醸し出すというより解き放っている。

 

 

「…………今日は、何かあるのか?」

 

「恐らくですが、水泳の授業があるからではないでしょうか」

 

 

クラスの前方で騒いでいる石崎や小宮たちを見ながら小声で尋ねると、小説に目を落としていた椎名が小声で返してきた。

 

が、問と解が一致しない。水泳の授業だからって、あそこまで騒ぐものか?

 

 

「うちのクラスには、余程泳ぐのが好きなやつが多いんだな」

 

「綾小路くん…………」

 

 

何故か椎名には呆れられている顔をされてしまった。水泳の授業があるから騒ぐなんて言われたら、そうとしか解釈できないだろ。あ、いや待て、そういうことか?

 

 

 

 

「──────理解したぞ」

 

「そうですか」

 

「デリカシーに欠けるがな。もう少し、静かに喜びを噛み締めて欲しいものだ」

 

「その通りですね。知性があまり感じられないです」

 

 

…………ったく、いくら授業でクラスの女子の水着姿が見れるからってそこまで浮かれるなよな。

 

確かにこの学校は美人や可愛い子が多いのは認めるが、やはり慎んだ態度を取るべきであることは否めない。

 

 

 

 

「因みに、椎名は運動できるのか?」

 

「いえ、全くと言っていいほどできません。体力なんて小学生くらいしかないですよ」

 

 

能力を全て知能と思考力に振った結果がこれなのか。まぁ、何か一つでも特技や誇れるものがあれば十分だろう。オレには何もないから尊敬だ。

 

 

「そういう綾小路くんはどうなんですか?」

 

「得意でも不得意でもないな。平均くらいじゃないか」

 

「テストの点もそれくらいって言ってましたよね。ザ・平均を目指してるんですか」

 

 

事実、全て得意でも不得意でもないんだから仕方ないだろう。運動は平均より多少上かもしれないが、得意とはとても言えない。

 

凡人という言葉が同学年で誰よりも似合うのがオレという人間なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日。

 

龍園は、寮の自室への道を歩きながら脳内では今後のことについて考えていた。坂上の発言の違和感から掴んだ、恐らくの真実。それをどう利用するのかについてだ。

 

 

(綾小路、か…………。あの態度、フリってわけじゃねえだろうが、演技なら大したもんだ)

 

 

周囲を確認することもなく、龍園はニヤッと嗤う。何か策を思いついたかのような、突破口を見つけたかのようでもないただの獰猛な笑みを。

 

 

(──────来月まで待つ。アイツが使えるんなら、利用するのはその後でも遅くねぇ)

 

 

夕焼けの日差しが彼の影を地面に伸ばす。彼の内面と同じ黒に辺りが染まるように、着実に夜が近づいていた。

 

 

 

 




更新遅くてすみません
実はゲームにはまってしまい、すっかり投稿するのを忘れてました

綾小路くんのヒロイン誰にしよっか?

  • No.1 椎名ひより(王道)
  • No.2  伊吹澪(ダークホース)
  • No.3 龍園翔(王道)
  • No.4 アルベルトきゅん()
  • No.5 石崎大地(変化球)
  • 綾小路は恋なんてしないっ!
  • その他(希望あれば感想まで)
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