綾小路 in Cクラス 作:NIES
表向きは坂柳率いるAクラスとマネーゲームをしているように見せかけ、裏では既に初期の頃に組むことを受諾した生徒を中心としたペアを決定していく。
クラス単位での協力関係はなかったものの、龍園の作戦は見事なまでに成功していた。対する坂柳も、試験には全力で挑んでくるためブランド力を生かし学力が中間層~上位層手前の生徒たちを獲得しているように思える。
「────お前ら、全力で挑め。退学は絶対にない組み合わせにしたが、クラス順位二位以上に入るのは絶対だ。手抜いたりしたらぶっ殺すからな」
ペア筆記試験を明日に控えた今日、龍園はそう言ってSHR後の決起集会を終わりにした。オレとしては、明日に向けて手は打ってあるが全力は出さないので申し訳なく思う。
すまんな、龍園。明日相方の斎藤(一年Cクラスの生徒)が0点だった場合はオレの合計点数が501点になるようにするから許してくれ。
『そちらは上手くいったようで。何よりです』
「そういうそっちはどうなんだ?」
『順調ですよ。龍園君が仕掛けてきた存在しないポイントを使ったマネーゲームへの対策も講じましたから』
夜中、坂柳から掛かってきた電話に出ると、そんなことを言われる。Aクラスとしてはまだクラスポイントの差があるから余裕なんだろう。
「『Aクラス』というブランドの価値に対する見方がおまえと龍園じゃ真逆だからな」
『ふふ。まぁ、まだAクラスから落ちる予定はないので簡単に死なないでくれるだけで有難いですよ』
坂柳にとっては、クラス間競争も特別試験も、全ては卒業までの暇潰しでしかない。そして、オレと表舞台で戦うまでのアップといったところか。
「龍園はまだ強くなれると思うぞ。それに、Aクラスへのチケットは今もう手元にある」
『おや? まさか、本格的にクラスの育成でもする気になられましたか?』
少し嬉しそうな声で言っていることや強敵との戦いを望む坂柳の性格を踏まえれば、朗報となったか。こちらとしても、明確な敵がいるのはやりやすい。
「クラスのことは気に入っている。ただ、育成とは少し違うな」
『ならどういう意味でしょう?』
「──────
──────だからこそ、これは坂柳にとってこれ以上ない朗報となるだろう。オレの、表舞台で戦ってやってもいいという言外の告知。
『………嬉しいです。そう言っていただけて』
「まだ、完全に決めたわけじゃないがな」
『その可能性が少しでも上がると言うのなら、とても嬉しい報せですよ』
「精々、クラスの調和を整えておくことだ。万全の状態ではない敵と戦ったところで、オレや龍園の心が躍らないことは自分を見てれば分かることだろ?」
『ええ、ええ。そうですとも。こちらも準備は完璧にしておいて損はないということですよね?』
「ああ。龍園にとっても、お前が高い目標であればある程やる気も湧いてくるだろうしな」
『叩き潰してしまっても文句はなしですよ?』
「そう、だな。少し残念に思うかもしれないが、それまでだ。文句は言わないさ。ここは実力至上主義、だからな」
『お分かりいただけているのなら結構です。そういえば、以前聞いた時はまだでしたが、ペアの方は平気なのですか?』
坂柳が心配しているのはホワイトルームからの刺客についてだろう。オレの場合は組まれたら詰みの状態にあったからな。
「ああ、その件なら数日前に片を付けた。問題ない」
『なら良かったです。綾小路くんの点数、期待していますよ』
「当たり前だが、多少高い点数しか獲らないぞ」
『やはりそうでしたか。少し期待していただけに残念です』
「いつかは、点数で競うときが来るかもしれない。そのときまで待っておけ」
『首を長くして。では、おやすみなさい』
「ああ。またな」
坂柳との通話を切る。当たり前だが、坂柳は真正面から戦うとなると強敵だ。それに、龍園のような盤外戦術を龍園よりも高品質で行うこともできる。
もし仮に今の坂柳率いるAクラスとうちで直接対決をするのなら、内容にもよるが駒の質で不利な戦いになるだろうな。そんなことを考えつつ、オレは洗面所に向かって歩き出した。
五月一日。今日はプライベートポイントが振り込まれる日でもあり、特別試験の結果発表の日でもある。ついでに言うとOAAの更新日だ。盛り沢山だな。
「…………待たせてしまいましたが、特別試験の結果発表を行いたいと思います。皆さん手元のタブレットを開いてください。既に結果の画面まで飛ばされていると思います。自分で見るのが早いかと」
坂上に言われた通り、結果に目を通していく。一番最初に確認すべきことは退学者がいないかどうか。………杞憂だったらしいな。退学者は0、最低合計点数も640ちょいと余裕だ。
坂上には、ペアの合計点数が500を下回っていない場合は購入した点数の追加は不必要だと伝えておいて正解だった。ここで全教科満点なんて獲ったら注目を集めてしまうからな。
「─────見ての通り、退学者はいませんでした。クラス順位もAクラスに次ぐ二位。おめでとうございます」
1位:Aクラス 平均736点
2位:Bクラス 平均694点
3位:Cクラス 平均635点
4位:Dクラス 平均623点
上々だと、冗談抜きに言える結果だな。Aクラスには学力で圧倒的に劣っている分勝てる見込みは薄かったのに加えCクラスは学力の低い一年生も抱え込んでいた、ある意味なるべくしてなった結果だろう。
因みに、オレの点数は各教科以下の通りだ。
現代文:86点
数学 :80点
化学 :81点
日本史:89点
英語 :85点
かなり高い点数を獲ることになってしまった。だが、流石にあれ以上の支出はしたくなかったからな。元々それなりの点数だったし、そこまで疑われることもないだろう。
「綾小路君って結構頭いいんだね」
「勉強したからな。流石に最後の方は難しかったが」
声を掛けてきたのはこの間の席替えで隣の席になった西野だ。龍園や他の男子に臆することなく意見ができる貴重な生徒でもある。
「日本史とか、学年二位じゃん」
「歴史は日本世界問わず好きだからな。それなりの点数は獲れるさ」
オレの教室内の位置は、最後列の中央。一番教師からの視線を感じる席でもある。だが、隣の彼女は意外と話せるので気は楽だ。
「さっすが。優等生は違うね」
「金田やひよりを見たらオレなんて霞むと思うが」
「結果見てから言いなって。あんたクラス二位よ?」
「む、本当か?」
西野にそう言われ、オレは手元のタブレットを操作し個人合計得点順にクラスメイトを表示する。すると、一位は安定のひよりだが、その僅か一点後ろにオレがつけている。その後ろは多少点が開いて金田だ。
「霞みはしなかったな」
「不動の上位二人に食い込んだのにまだ言うんだ」
「得意分野だったんだ」
そんな会話をしていると、前を向いていた石崎がこちらに振り向いた。オレの一つ前の席に座っているため、必然的に正面を向いていたオレと目が合う。
「綾小路っ! やっぱお前凄ぇな!」
「そうか? ありがとう」
「金田も頭いいけどよ、それ抜くなんてやるじゃんか!」
「まぐれかもな」
石崎に肩を揺すられながら、オレは結果の続きに目を通していく。石崎はクラスの丁度中間層、か。西野はその少し上。下の方にいっても280点以下はいなかった。
龍園が去年の夏休み明け頃から言っていたクラスの平均学力の底上げは、少しずつしかし確実に成功へと近づいていっているな。
綾小路清隆のOAA・5/1時点
学力 ───A-(85)
身体能力 ───B-(63)
機転思考力───C+(57)
社会貢献性───B(66)
総合 ───B(68)
1・2年生合同ペア筆記試験終了時点クラスポイント
A(坂柳)クラス :1741
B(龍園)クラス :1201
C(一之瀬)クラス:579
D(平田)クラス :0