綾小路 in Cクラス 作:NIES
「──────今日は、月城理事長代理に少し頼み事をしに来ました」
「………はぁ、君も聞き分けのない子だ。今日は忙しいというのに」
やれやれ、そう言いたげに手の平で顔を覆う月城を一瞥してから、オレは頼み事の内容を話し出す。暫く黙っていた月城はオレが話し終えるとすぐに答えを出した。
「分かりました。しかし、本当にいいんですね?」
「ええ。初めて、利害が一致しましたね」
「一度言ったことは取り消せませんよ? 君がここを出れば、それと同時に動きます」
「構いません。なんならそっちの方が好都合ですよ」
「分かりました。無人島サバイバル、楽しみにしていてくださいね」
学校に潜むホワイトルーム生、その正体を看破することは現時点では難しい。なら、どうするか。長期戦を望まない月城の背中を軽く押すだけでいい。
翌日、朝。学校がオレに送り付けてきたのは『追加』のカードだった。効果はプライベートポイントの報酬を2倍にするというもの。上位70%に入れれば得をするカードだ。
「おはようございます。清隆くん」
「ああ。おはよう、ひより」
いつも通り、ひよりが隣に並ぶ。しかし、いつもに比べて顔が明るいような気がしなくもない。何か、いいことでもあったんだろうか。
「清隆くんのカードはどうなりましたか?」
「オレは『追加』のカードだな。ひよりは?」
「私は『半減』のカードでした」
ひよりは『半減』のカードか。効果は下位5グループに入った際のペナルティを半分にするというもの。6人グループなら50万で済むわけだ。
「お互い、まあいいカードを引けたな」
「ええ、そうですね。それで、清隆くんは今回の特別試験どうするつもりなんですか?」
「どうする、とはグループの話か?」
「ええ、そうです。私と組んで欲しい、なんて烏滸がましいことは言えませんが、できれば安心できる人と組んで欲しいです」
「非常に言いずらいが、オレは今回の試験については単独で挑むつもりだ」
「っ?! どうしてですか」
「足手まといを連れて歩くのはリスクが高すぎる。オレ1人なら臨機応変に対応できるからな」
ここで変に取り繕うのはよろしくない。ホワイトルームやら月城やらの話をするわけにはいかないが、龍園とひよりには多少の事情は話しておくべきかもしれないな。
「………また、何か事情があるんですね?」
「まぁ、そういうことになる」
「私からは何も言えませんね。ですが、作戦や事前準備などには協力してもらいますからね」
「分かった。できることなら協力しよう」
「クク、そうかそうか。ぶん殴ってやろうか?」
放課後、オレと龍園・金田・ひよりで作戦会議なるものをしている途中、グループの組み合わせについての話になった。そこでオレが単独参加を表明したらこれである。
「やめてくれ」
「単独参加なんて許した覚えはないぜ? おまえは俺と組まないのはいいが、最低でも石崎かひよりとは組んでもらう。もしくは惜しい伊吹あたりか」
「龍園氏、綾小路氏の意見も聞いてから判断すべきでは?」
「そうですよ。決断には早いと思います」
「チッ、揃いも揃って綾小路につきやがってよぉ。いいぜ、聞いてやる」
話せ、そう言われても、何を話そうか。公にできるはずもない過去を持つオレにとって、この学校は楽園でもあり地獄でもあるわけだ。
「これと言って話すこともないが、もう隠す気もない。龍園、これだけ言っておく」
「あ? なんだよ」
「──────
「クク、流石だぜおまえは。ひよりや金田なんて以ての外、俺やアルベルトですら、おまえにとっては足手纏い、っつーことだな?」
「そういうことだ。この学校でオレに着いてこれる奴はいないと言っていい。だが、融通を利かせて貰えるのなら、なるべく高順位を獲ることに尽力すると約束しよう」
この試験で重要なのはクラスポイント報酬を手にすることもそうだが、より重要なのは上位、可能なら1位~3位を
それは、上位を他学年に獲られれば2年生全体が痛手を負うからだ。それを避けるためなら、今回の試験では協定を結び2年生全体で協力することも視野に入れる必要が出てくるだろう。
「なるほどな。確かに、上位を獲れる可能性が高い上に人数も必要としねぇのなら認めてやってもいい」
「なら」
「だが、1つだけ条件がある」
「なんだ?」
「おまえのきな臭さにも目を瞑ってやる。だがその代わり、
龍園の発言に、ひよりと金田は目を見張った。今まで陰で貢献し続けてきたことを知っているからこそ、そんなことを言うとは思っていなかったんだろう。
「証明?」
「ああ。
「分かった。その条件を飲もう」
「良いんですか? 綾小路氏。目立つことを1年間避け続けてきたのに」
「そうですよ。必ず従う必要はないんですよ?」
事情を知らない3人からすれば、そこまでするくらいなら他の奴と手を組め、そう言いたくなるんだろうが生憎とできない。
オレは
「構わない。それに、何かアクシデントでも起きない限りオレが他の生徒に負けることはないからな」
「クク、そこまで豪語するんなら見せて貰おうじゃねえか。てめぇの本気ってヤツをな」
「本気を出すまでもないと思うが、期待しておいて損はない結果は出す」
3人も一応は納得したのか、話題は逸れて他クラスとの協力関係についてになった。龍園はどうやら、一之瀬との協力関係を希望するらしい。
「確かに、今坂柳さんと組むのはメリットが薄いですね」
「現在Aクラスとの差は約500クラスポイント、もし仮にCクラスと協力して1位を獲れれば一気に350ポイントまで詰められます。Aクラスが上位3グループに入れなければの話ですが」
「坂柳のクラスの主力は鬼頭や橋本、神室あたりだろうが問題ない。既に明日話し合いの場はセッティングしてある。そこで締結できればあんな雑魚共は蹴散らされて終わるさ」
「………じゃあ、あとの話し合いは3人でやってくれ。オレは帰るぞ」
もう内容的にオレは必要ないだろう、そう思い腰を上げると、ひよりに手を掴まれた。そんな上目遣いをされるとテレるんだが。
「待ってください、清隆くん」
「どうした」
「話し合いには清隆くんも必要です。作戦にはできる限り協力すると言っていましたよね?」
「………何をしろって言うんだ」
「いや、今日はおまえらとアルベルトや石崎なんかのグループについて多少話すだけで終わりだから綾小路はいらねぇ。ただ、1つおまえにも役割があるぜ?」
「なんだ?」
「明日の放課後、一之瀬とその連れとの会談があるって言ったよな。そこに
「分かった。ただし、事前準備と作戦会議含めオレが試験前にやる最後の協力がそれだ」
「いいぜ。じゃあもう行っていいぞ」
数時間後。龍園からメッセージが届いた。内容はいつも通り簡潔だ。『
そう、あのひよりと金田の前でのやり取りは全て織り込み済みだ。オレと龍園が事前に連絡を取り、用意していた台本を丁寧に読み上げただけにすぎない。
『
「ああ。本当だ」
『アイツらなら気付いているかもしれないのに、意味があるのか?』
「あくまでも龍園の意思でオレを動かす、その条件があった方が好都合だからな」
『そうかよ。じゃあ忘れんな、2学期からのおまえの活躍期待してるぜ』
龍園と少しやり取りしてから電話を切る。無人島サバイバルに向けてできることは少ないが、もしかしたら
面倒に思いつつオレはヨーグルトメーカーで作った出来立てヨーグルトにスーパーで買ってきたフルーツ缶詰の中身を投入しながら行く日程を考えることにした。
次話では一年生たち(ゴリラくんや崇拝ちゃんなど)の視点を少し出す予定です