綾小路 in Cクラス 作:NIES
「──────やぁ、君からアプローチしてくるなんて何事かな?」
「──────龍園。おまえ、何を企んでいる」
「──────そうですね。まずは何の要件かだけ聞きましょうか」
無人島サバイバルの告知がされてから三日目、放課後。ケヤキモール内のカフェに赴くと、既にCクラスの参加者と思しき三人が来ていた。
「クク。随分な歓迎じゃねぇか、一之瀬」
「君は警戒されても、何ならこの場すら与えてもらえなかった可能性すらあるのが分かってるのかな?」
「笑わせんなよ。おまえらのクラスがもう単独で這い上がることなんざできやしねぇのは自分らが一番分かってるんじゃねぇのか?」
一之瀬の強気な発言も、龍園には全くと言っていいほど効いていない。そのまま、手前の椅子に腰かける。オレもそれに倣って龍園が座った椅子の隣のものに腰を下ろした。
「…………綾小路もいるんだな」
「クク。なんだ、気になるか?」
「気にならないという方がおかしいだろう。今まで全くクラスの政治には関わっていなかっただろ」
「状況が変わったっつーことだ。それより、話を進めるぜ?」
「分かった。それで、今日は何の話をしに来たのかな?」
「今はどん底にいて這い上がる兆しすら見えねえおまえらに朗報だ。今回の試験、俺たちと組まないか?」
対面に座る一之瀬、そして神崎と浜口は驚いた様子はない。恐らくだが、龍園が話し合いを持ち掛けた時点で予想していたんだろう。
「三月、君が私たちにしたこともう忘れたの?」
「それとこれとは話が別だろ? それとも、このままAクラスの独走を許すのか? 使えないDクラスを味方に引き込むか? どうするか言ってみろよ」
若干の抵抗を見せる一之瀬に、龍園が現実を突きつける。事実、Cクラスは単独で上位を狙うことはもう不可能だろう。それほどまでに、AクラスともBクラスとも差が開いている。
「それは…………」
「こちらの心境も考慮して頂きたいですね。簡単に自分たちを貶めた相手と協力できるはずないでしょう」
「そいつはおかしな話だなぁ? 去年、無人島で俺はおまえらを嵌めた。盛大にやらかしたよな、だが体育祭では俺たちと組んだ。違うか?」
「それは、協力しないとこちらも損をするから…………っ」
「神崎は気づいたようだな。今回の試験も、状況以外は何も違わない。俺もおまえも、Aクラスと組む選択肢はない。だが、単独クラスでの1位獲得は現実的じゃない。なら選択は1つに絞られる」
「──────なるほど、ね。今回の試験での目的はAクラスとの差を私たち2クラスが詰めること、そして2年生全体からクラスポイントを減らさないこと、ってわけだね」
「珍しく賢いな一之瀬、その通りだ。今おまえらは1000クラスポイント以上差が開いている。正直、Aクラスを目指すならここがターニングポイントになるぜ」
神崎と浜口も、恐らく最初からこの交渉は飲む気でいただろう。そしてそれは一之瀬も例外じゃない。あとは報酬や交換条件についての話になるだろう。
「一之瀬。ここは絶対に組むべきだ。俺たちはこれ以上落ちればもうゲームオーバーになるんだぞ」
「そう、ですね。今まで碌にポイントを増やせていませんし、退学者を出さないという目的を考えてもポイントは増やすべきですし得るべきです」
「分かってる。今のままじゃ、ずっと信じて着いてきてくれたみんなに顔向けできない。いいよ、龍園くん。その話、内容次第で乗る」
流石に、対等でフェアな関係の構築は難しいか。こればっかりは、自分たちが優位な立場だというのを踏まえて受け入れるしかない。
「試しに聞いてやる。何が望みだ?」
「もし私たちCクラスの生徒が下位5グループに入ったときの救済費かな」
「何人分だ?」
「5人」
「随分と大きく出たな。仮に6人の大グループでも500万だぜ」
「これが最低条件だよ。でも、その代わりに『増員』と『試練』のカードを提供する」
500万の消費は痛い、だがもし1位を獲れればCクラスの生徒が2人の小グループでも僅か3カ月で元が取れる。
「なるほど。交渉材料としちゃ悪くねぇな。ただ、こっちにも1つだけ条件がある」
「聞くよ」
「まずお前らのクラスは『先行』カードで初期資金を増やせる奴らだけで小グループを作れ」
「理由を聞こうかな。なんで?」
「食料供給が目的だ。それで、最終日までには1位を狙うグループ以外で大グループを作る条件を満たしたお前らのクラスの小グループが合わさればいい」
「ポイントをある程度稼ぎつつ、食料供給だけさせるってことね。それじゃあ、300万はその人たちに持たせるね」
「好きにしろ。どう分配するかはそっち次第だからな」
そこからはスムーズに話が進んでいった。どういうグループ構成で1位を狙いに行くか、他クラスの現段階での小グループメンバーの把握などだ。
「──────これで一先ずは決まりだな」
「残る問題は、大グループだね」
「なんらかのペナルティを踏む可能性があるが回数制限があると思う。多少無理をしてでも合流するのが良いだろうな」
オレは一之瀬が手元でメモとして書き起こした組むことが確定している小グループのメンバーに目を通す。厳しい戦いであることには変わりないが、B・Cで組める最適の組み合わせであることは確かだ。
『一之瀬帆波・木下美野里・津辺仁美』
『神崎隆二・龍園翔(試練カード)』
『金田悟(増員カード)・山田アルベルト』
『石崎大地・柴田颯』
「連絡手段はあると坂上から聞いてる。状況に応じてこれらのグループの中から組み、上位を狙う。異論はないな?」
「ないよ。平気」
「これなら大丈夫だろう。龍園と同じ小グループというのは気に食わないがな」
そこまで嫌そうな顔をするというわけでもなく神崎が毒を吐いた。しかし、龍園はそれを笑って受け流した。多分コイツは煽りが効かない体質なんだろう。家庭の事情か?
「…………最後に、そこでのんびりパフェを食べてる綾小路くんについて聞いてもいいですか?」
「んぇ?」
「クク。1・2年合同試験の筆記試験の結果を見ればわかると思うが、コイツはうちの隠し玉だ。我儘を聞いてコイツは単独で参加させることにした」
話を聞くのも飽きて来たので注文していたパフェに手を付けたらこれである。マンゴーやメロンなど色んなフルーツが乗っていて美味しい。
「なるほどねぇ。選抜種目試験で神崎くんを下したときから賢いとは思ってけど、そこまで凄いんだ」
「試験の点数では自分も負けていますね。その上身体能力まで高いと?」
「クク、そりゃあ本番までのお楽しみだ。だが、1つ言えることがあるとすれば上位に俺たちが入れるならコイツも単独で入れる可能性があるってことだ」
結局、オレは一之瀬たちへの宣戦布告のためだけに呼ばれたのか? まぁ、パフェは龍園の奢りだったから全然いいんだがな。最後とか言ったけど、これならまた行ってやってもいいぞ。
昨日は龍園たちとの会議があったし、一昨日は
◆宝泉和臣視点◆
7月2日、放課後。俺は同じクラスの七瀬と共に作戦を練っていた。それは当然、少し前に発表された特別試験である『無人島サバイバル』に関してだけじゃない。
その翌日の放課後に
「宝泉君、やはりあの試験はきな臭いです。参加するべきではないんじゃないでしょうか」
「うっせぇ、黙れ七瀬。他のクラスの奴らに賞金獲られたらどうなるか頭で考えたのかよ」
「確かに賞金を獲られれば私達のクラスは大きく後退します。ですが、
「………
「無人島でリタイアさせるということはつまり、綾小路先輩を暴力で陥れるという意味ですよ?」
「ああ、んなことは当たり前だろうが。それともなんだ、おまえはチキってるってのか?」
「私も、プライベートポイント報酬という面で他クラスにリードを奪われるつもりはないです。分かりました、やりましょう」
「だったら最初からそうしてろ。発言で分かるが、お前もいけるクチだろ? OAAを見たが学力以外は大したことない雑魚だ。俺かおまえが狩る」
「そう、ですね。賞金の為、綾小路先輩には犠牲になっていただきましょう」
七瀬は有能だが、底が見えねぇ。同じクラスとして、できる限り有効に使うとするか。そう思い小グループを作ろうとしたとき、背後から足音が聞こえてきた。
◆天沢一夏視点◆
「──────ねぇねぇ、そこのお二人さ~ん。お邪魔していい?」
「あ? 誰だてめぇ」
「1年Aクラスの天沢一夏さんですね。何か用でしょうか?」
「楽しそうな会話、あたしも混ぜて欲しいな?」
目の前にいるのは、1年Dクラスの宝泉和臣と七瀬翼。二人とも、綾小路先輩を退学させるために動いている生徒。
「用もねぇのに話しかけんな。俺が女相手には手を上げねぇとでも思ってんのか?」
「嫌だなぁ、そんなカリカリしないでよ。お話したいだけなんだよねぇ、例えば…………2年Bクラスの綾小路先輩について、とかね」
勝手に動かれるリスクを考えたら、あたしが見張るか、計画の一部でも聞き出す方が確実だ。報酬については分けようって言えばいいよね。
──────あたしはあたしのために、あんた達を好きにはさせない。そして、