異世界魔王様は日本円を稼ぎたい! アニメのグッズ代のため、現代日本にダンジョンを作ります   作:スノーマン(ユッキー)

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魔王、グッズ代を稼ぎたい

「そろそろ夕方のアニメが始まる時間だな!」

「そうだな……」

「ん? 勇者よ、何故そんな疲れ切ってる」

「いや、総理大臣とお前の会談の場に巻き込まれたらそりゃなぁ」

「お主あちらの世界で王族共と接して居ただろう?」

「まぁそうなんだけど、日本国民としてはやっぱ違うというか……」

 

 突撃した先が皇居でなくて本当に良かった、勇者は声に出さずに思った。天皇との会談の場だったら、心労がこんなものでは済まない。多分寝込んでる。

 

「そいやお前、ダンジョンの入り口で何を売る気なんだ?」

「うむ? 魔剣とかで良かろう、無駄にあるしな」

「待て待て待て! 魔剣って俺の聖剣程じゃないけど馬鹿みたいな力を持ってるよな?」

「まぁこの世界の一般人でも、先程まで訪ねていた場所を制圧出来るくらいには?」

「総理官邸を制圧出来ちゃ駄目なんだよ……」

 

 『ダンジョンで販売していた魔剣で総理官邸を制圧しました!』 なんて迷惑系配信者とか現れたら色々終わる。頼りの副官はまだダウンしている為、勇者は胃を押さえながら口を開いた。

 

「販売するならポーションとかにしようぜ? 別に魔王だって大金が欲しい訳じゃないだろ?」

「ふむ、そうか。なら最上級ポーションを販売するか」

「おい、待て! 馬鹿! アホ! それ欠損とか治療できるレベルの奴だろ!?」

「うむ、側近の手作りだぞ。あやつ要らんと言っておるのにもしもの為にって、大量に作っては我に差し出してくるからな」

「あいつ錬金術出来るの!? あの顔で!? 物理特化なのに!?」

「顔は関係無かろう。我が国で最上位の錬金術師だぞ?」

 

 ざ、脳筋って見た目で内政してるだけで詐欺なのに錬金術師とかバグだろ……と勇者は思いつつ背後が怖いので口にはしなかった。魔王への侮辱でなければ気にしなそうだが、うっかり逆鱗に触れて寝首をかかれたくは無いのだ。

 

「取り合えず初級ポーションから販売しようぜ?」

「初級ポーションなぞ販売して誰が買う。傷を塞ぐ程度の効果しかないぞ?」

「十分だっつーの。あと買うのは冒険者な。お前ダンジョン開くんだろ? 必須品になるはずだ」

「ふむ、我完全に理解した。ダンジョンで冒険者を怪我させて、入り口のポーションを買わせて日本円を手に入れる。つまりマッチポンプというやつだな!」

「人聞きの悪い言い方するな!」

 

 ダンジョン探索なんてものはどうやっても怪我がつきものなのだ。それを回復する手段があれば冒険者は買わずにはいられないだろう。特にこちらの世界の人間は回復魔法とか使えないのだから。

 

「因みに一階にはレッドドラゴンを配置しておるから、怪我人が大量に作れるぞ!」

「は? レッドドラゴン?」

「うむ、お主が魔王城の入り口で軽々切り伏せてた奴だ」

「アホか! あれは俺だから出来ただけで、普通の人間が対峙したら怪我人通り越して死人しか出ないわ!」

「え? レッドドラゴン五体配置は多かったか?」

「馬鹿! ダンジョンの入り口から殺意が高すぎる!」

 

 ちなみにレッドドラゴンの外皮はミサイルすらダメージを通さない。毒耐性もあるため、現代兵器では討伐不可能だ。魔王のせいで霞みがちだが、そんな化け物を一刀両断している勇者も大概化け物だったりする。

 

「勇者そんな事よりアニメが始まるぞ? 初の合法アニメ視聴の時間だ!」

「魔王、ステイ!」

「え?」

「ダンジョン作り直すまでアニメ禁止だ」

「なっ!? そんな急いで作り直す必要などあるまい!?」

「いや、お前ダンジョン明日解放ってビラ大量にばら撒いてただろ」

「そ、そうだが。とりあえず作り直すまではドラゴンで良いでは無いか! 二階からもブルードラゴン、イエロードラゴンと各種取り揃えておるぞ?」

「それが駄目だって言ってんだよ馬鹿!」

 

 あまりにダンジョンを人類に攻略させる気が無さすぎる。だが魔王としては難易度をかなり低くしているつもりだった。エンシェントドラゴンとか投入してないし、とごねている。

 

「あのなぁ魔王。現代日本人はエンタメに対する目が肥えてる。そんな楽しませる気が無いアトラクションを出したが最後、低評価爆弾食らって誰も来なくなるぞ?」

「それはつまり、グッズ代が稼げぬということか?」

「そういうことだ!」

 

 初級ポーションでも医療機関が喉から手が出る程欲するだろうから少なくともグッズ代くらいは簡単に稼げるだろうが、二年も異世界で冒険してた勇者も大分常識が失われていた。

 

「とりあえず一階はゴブリン、スライムと相場が決まっている」

「うむ? 我が国のダンジョンでそんなことは無かったが」

「魔王、アニメ知識が間違っているとでも!?」

「アニメ知識、だと!? それは確かに間違っているはずが無い。そうかダンジョンの一階はゴブリン、スライムを配置すべきだったのか」

 

 人類を育成するつもりがなかった魔王視点では、下手に雑魚を配置しなくて正解だったが、それは異世界での話。日本でのダンジョンはエンタメにするつもりなのだ。

 

「魔王、俺の部屋に転移できるか?」

「出来るが、それくらい歩いて行けばよかろう?」

「あ、違うくて。俺の実家の部屋!」

「ふむ、お主の記憶から位置を読み取ったから可能だが、何の意味がある?」

「ダンジョン製作物のアニメのブルーレイ版ボックスがあったはずだから一緒に見て勉強するぞ。お前の場合それが一番早いだろ!」

「ナイスだ! ナイスアイディアだぞ勇者!」

 

 そして魔王と勇者は、勇者の実家へと転移した。行方不明になって二年の息子を偲んで部屋を訪れていた母親の目の前へ。

 

「勇太!? え、本物!? あんた生きてたの!?」

「あ、母さんただいま。俺のブルーレイどこに片づけた?」

 

 そういや生存報告してなかったな、とか軽く考えてる勇者。いや、日本に帰ってきて真っ先にやれよ。アニメ見てる場合じゃねぇだろ。

 

「おお、わが友の母上か。我が名は……長い故魔王と呼んでくれ」

 

 魔王は総理とのやりとりで学習していた。そして突然帰ってきた息子を母親が離すはずが無く、その日は魔王も歓待を受けて呑気に過ごした。完全に目的を忘れていた二人は、夜は勇者の部屋にあったアニメの数少ないグッズを鑑賞したり、語り合ったりしてあっという間に更けていった。

 そして翌朝になって二人は気づく。ダンジョンをいじってないことを。うっかりダンジョンまでの陸地も作成済みで、自動で入り口が開くように設定しており、そして無人ポーション販売所も用意していたので幸か不幸かダンジョンは無事解放された。

 その結果色々な意味で大炎上した。トレンドトップはもちろん、#初手ドラゴン だった。

 

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