仲正イチカはトラウマを克服できない。   作:ただねこ

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新シリーズです。イチカかわいい


仲正イチカは失敗を犯す。

「──は?」

 

突如、赤が舞い散る。

 

今私の前にいるのは、人間だ。ヘイローはない。

 

そう、ヘイローがない。

 

舞い散る赤は、”彼”の鮮血。

 

それは間違いなく、()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

・・・・・

 

 

”彼”は、引き金を引いた瞬間、突如として私の目の前に現れた。

 

ほんとうに、ぱっと。

 

反応なんてできなかった。認識したときには既に、赤が舞っていたから。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

”彼”の意識は、未だ戻らないと聞く。放たれた銃弾は”彼”の胸と腹を貫き、白いシャツを染めていた。

 

怖くて怖くて、愛銃(レッドドラゴン)を持つことすらできない。どうしても、手が震えてしまう。”彼”の倒れていく様が、鮮烈に脳に蘇るのだ。その度に死にたくなる。

 

自分の手で、人を殺してしまうところだった。いや、近い将来死ぬかもしれない。そうなったら、仲正イチカ()は殺人犯として正義実現委員会を追放される。

 

というか、そんなことも考えられない。今はただ、名前も知らない”彼”への罪悪感だけが頭の中でぐるぐると回っている。スマホの光も見たくない。先生やツルギ先輩から連絡が来てた気がするけど、そんなのしらない。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

今は他のことを考えられる余裕も、現実から逃避する思考力もなく、ただただ「人を殺しかけた」という事実を直視するだけだった。

 

 

・・・・・

 

 

「……起きましたか?」

 

「あ……え……?」

 

景色が変わった瞬間、痛みが襲ってきて、視界が黒くなって。なんだ?誰だ?ここはどこだ?

 

「意識が混濁しているみたいですね……名前はわかりますか?」

 

な、まえ?俺の名前は……えっと。

 

多々良葉(たたらば)風楽(ふうら)です」

 

「多々良葉さんですね。ここがどこだかわかりますか?」

 

ここ?病室……というか。桃色の髪?染めてはなさそうだし、頭の上のやつはなんなんだ?

 

「病室、ですよね。ここはどこの病院ですか?……というか、貴女は誰ですか?」

 

「ああ、自己紹介が遅れましたね。私はトリニティ総合学園2年、救護騎士団所属の鷲見(すみ)セリナと申します」

 

……トリニティ?救護騎士団?

 

「夢じゃ、無いですよね?そんな学園の名前、聞いたこともありませんが」

 

「そうでしたか。ここは”キヴォトス”と呼ばれる、数千の学園が集まる学園都市です。トリニティはその中でも三大校として数えられている、有名な学校なんですよ」

 

学園都市。窓の外からは、月明かりと噴水が見える。……かなりのお嬢様学校のようだ。

 

「多々良葉さん。あなたは銃撃戦の最中に突如現れ、そのまま胸とお腹を撃たれて意識を2週間失っていました」

 

「っは!?っつう……」

 

「あ、動かないでください。まだ傷が治りきっているとはいえないので。……胸のほうは奇跡的に内臓を避けました。本当に奇跡です。……お腹のほうは、右の脇腹ですね。そこが撃ち抜かれています」

 

……いやいやいや。学園都市だよな?銃撃戦って、どんな都市だよ……!

 

「あー……撃った人は今どんな感じですか?」

 

「……今は、貴方を撃ったことで……トラウマといいますか。引きこもってしまっている状態でして。部屋でずっと「ごめんなさい」と呟いていて」

 

……離れたところにある鏡を見ると、顔とか身体は変わってない。よくある異世界転移の類だろうか。

銃撃戦うんぬんは置いておいて、撃たれたことに関しては仕方がないだろうと思っている。突如現れたというのなら、対処もなにもできやしないだろうから。撃った人もそのつもりはなかっただろうし、引きこもって謝罪を繰り返すくらいの精神状態で。

 

「別に、撃たれたことは怒ってません。その……俺のことを撃った人が心配で」

 

「……そうでしたか……ですが、会いたいというのならば難しいですね。先程言った通りの状況なので……」

 

「ですよね……」

 

退院もできない今、その撃った人とコンタクトを取れる可能性は絶望的だろう。どうしたものか。

 

「今は私たち救護騎士団の者が、毎日確認をしに行っています。最低限の食事は摂っているみたいなので、今のところは大丈夫です。既に貴方が目を覚ましたという報告をしに、人を向かわせています」

 

そう、か。その人は、自己嫌悪が強い人なんだろう。そもそも銃撃戦……うん、銃撃戦ってなんだ?

 

「……眠そうですね。一眠りしますか?」

 

「はい……すみません」

 

「いえいえ。貴方が意識を取り戻してよかったです。また明日来ますので、その時にキヴォトスの説明を致しますね。それでは、おやすみなさい」

 

鷲見さんの声の残響が、耳にやけに残る。そのまま、うとうとと目を閉じた。

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