「──は?」
突如、赤が舞い散る。
今私の前にいるのは、人間だ。ヘイローはない。
そう、ヘイローがない。
舞い散る赤は、”彼”の鮮血。
それは間違いなく、
・・・・・
”彼”は、引き金を引いた瞬間、突如として私の目の前に現れた。
ほんとうに、ぱっと。
反応なんてできなかった。認識したときには既に、赤が舞っていたから。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
”彼”の意識は、未だ戻らないと聞く。放たれた銃弾は”彼”の胸と腹を貫き、白いシャツを染めていた。
怖くて怖くて、
自分の手で、人を殺してしまうところだった。いや、近い将来死ぬかもしれない。そうなったら、
というか、そんなことも考えられない。今はただ、名前も知らない”彼”への罪悪感だけが頭の中でぐるぐると回っている。スマホの光も見たくない。先生やツルギ先輩から連絡が来てた気がするけど、そんなのしらない。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
今は他のことを考えられる余裕も、現実から逃避する思考力もなく、ただただ「人を殺しかけた」という事実を直視するだけだった。
・・・・・
「……起きましたか?」
「あ……え……?」
景色が変わった瞬間、痛みが襲ってきて、視界が黒くなって。なんだ?誰だ?ここはどこだ?
「意識が混濁しているみたいですね……名前はわかりますか?」
な、まえ?俺の名前は……えっと。
「
「多々良葉さんですね。ここがどこだかわかりますか?」
ここ?病室……というか。桃色の髪?染めてはなさそうだし、頭の上のやつはなんなんだ?
「病室、ですよね。ここはどこの病院ですか?……というか、貴女は誰ですか?」
「ああ、自己紹介が遅れましたね。私はトリニティ総合学園2年、救護騎士団所属の
……トリニティ?救護騎士団?
「夢じゃ、無いですよね?そんな学園の名前、聞いたこともありませんが」
「そうでしたか。ここは”キヴォトス”と呼ばれる、数千の学園が集まる学園都市です。トリニティはその中でも三大校として数えられている、有名な学校なんですよ」
学園都市。窓の外からは、月明かりと噴水が見える。……かなりのお嬢様学校のようだ。
「多々良葉さん。あなたは銃撃戦の最中に突如現れ、そのまま胸とお腹を撃たれて意識を2週間失っていました」
「っは!?っつう……」
「あ、動かないでください。まだ傷が治りきっているとはいえないので。……胸のほうは奇跡的に内臓を避けました。本当に奇跡です。……お腹のほうは、右の脇腹ですね。そこが撃ち抜かれています」
……いやいやいや。学園都市だよな?銃撃戦って、どんな都市だよ……!
「あー……撃った人は今どんな感じですか?」
「……今は、貴方を撃ったことで……トラウマといいますか。引きこもってしまっている状態でして。部屋でずっと「ごめんなさい」と呟いていて」
……離れたところにある鏡を見ると、顔とか身体は変わってない。よくある異世界転移の類だろうか。
銃撃戦うんぬんは置いておいて、撃たれたことに関しては仕方がないだろうと思っている。突如現れたというのなら、対処もなにもできやしないだろうから。撃った人もそのつもりはなかっただろうし、引きこもって謝罪を繰り返すくらいの精神状態で。
「別に、撃たれたことは怒ってません。その……俺のことを撃った人が心配で」
「……そうでしたか……ですが、会いたいというのならば難しいですね。先程言った通りの状況なので……」
「ですよね……」
退院もできない今、その撃った人とコンタクトを取れる可能性は絶望的だろう。どうしたものか。
「今は私たち救護騎士団の者が、毎日確認をしに行っています。最低限の食事は摂っているみたいなので、今のところは大丈夫です。既に貴方が目を覚ましたという報告をしに、人を向かわせています」
そう、か。その人は、自己嫌悪が強い人なんだろう。そもそも銃撃戦……うん、銃撃戦ってなんだ?
「……眠そうですね。一眠りしますか?」
「はい……すみません」
「いえいえ。貴方が意識を取り戻してよかったです。また明日来ますので、その時にキヴォトスの説明を致しますね。それでは、おやすみなさい」
鷲見さんの声の残響が、耳にやけに残る。そのまま、うとうとと目を閉じた。