仲正イチカはトラウマを克服できない。   作:ただねこ

10 / 10
久々の更新で申し訳ありませんでした。こっちも頑張って更新します。


”彼”が思うこと。

多々良葉風楽という、キヴォトスの外から転移してきた男子。

経緯や過程は違えど、結果がほとんど同じものとなっている者がもう一人いる。

 

「「失礼します」」

 

”今日は来てくれてありがとう。こちらにどうぞ”

 

「今日はよろしくお願いします、先生

「よろしくお願いします」

 

そう、先生である。彼もまた外から来た者。

 

”君が多々良葉くんだよね”

 

「……はい」

 

”私はここ、シャーレで先生をやっている者です。はいこれ、名刺ね”

 

「ありがとうございます……」

 

”そこまで畏まらなくてもいいよ。私は別に怒ってないから”

 

そう言って笑う先生の顔は、いつも通りの何一つ曇りのない笑顔。

 

だが2人は同時に同じことを思い浮かべる。

 

((怖い……!!))

 

先生の善意は底知れない。そしてその底なしの善意は、「いつどこで琴線に触れるかわからない」ということでもある。

 

「先生、その……」

 

”大丈夫だよ、イチカ。……多々良葉くんが来た時の概要は、ツルギからの報告書で全部見てる。……えーっと、そしたら……”

 

うーん、うーん、と唸り頭を捻る先生に、お互いこっそりと話をするイチカと風楽。

 

「イチカさん、これって大丈夫なんですか……?」

「大丈夫のはずっす……先生が怒った所、大人相手以外じゃ見たことないし……生徒というか、子供相手にするときは基本優しいっすから」

「不安だ……」

 

”あ、そうだ!2人とも、提案があるんだけど──”

 

「「?」」

 

 

・・・・・

 

 

「おお……シャーレの屋上は初めて来たっすね……」

「屋上とか上がる機会なかったからなー、なんだか新鮮」

「そうなんすか?てっきり屋上でお弁当とかサボったりとかするのかと」

「あっちじゃ大抵の学校は屋上閉鎖されてるからね。俺は階段の踊り場でぼっち飯」

「意外だなあ……」

 

”ごめんね、遅れちゃった!”

 

「先生!」

「大丈夫ですか?息切れが凄いですけど……」

 

”あはは……終わりかけだった書類の処理で少し手間取ってね。でもこれで話が出来るよ”

 

「……!」

 

風楽は緊張している。先刻のイチカとの会話で、何気なく気を抜いていたのだ。

キヴォトスに来て、初めて会う大人であり、先生。評判はなんだか変人のようなものではあるが、生徒からの評価は総じて「もの凄くいい人」。それが、風楽はなんとなく怖かった。

 

”2人はさ、イチカの家で暮らしてるんだっけ?”

 

「はい。風楽くんの護身用に銃も買ってあるっす」

 

”ちょっと見せてもらえる?……うん、いい銃だね。軽くて扱いやすそうだよ”

 

「ありがとうございます……」

 

”……それで、2人は普段どんなことをしてるの?良ければ教えてほしいな”

 

「「!!」」

 

その問いに、2人は一層気を入れた。実のところ先生は純粋な疑問を投げかけているだけだが。

 

そんな先生が、何を思っていたかというと──。

 

”(あ、悩んでる。それくらい濃い日常を過ごしたのかな。絆が生まれてる証拠だ)”

 

この男、あまりにも鈍感である。

 

「えーっと……その……」

「俺は基本、イチカさんの家から出ずに家事をしてます。料理とか掃除とか洗濯とか」

「あっ、ちょ……」

「たまに2人で外に出てますね。よく噴水前のベンチでお話したりもしてますよ」

 

”そうなんだ!他には何があるの?”

 

「そうですね、他には──」

 

風楽はこの際諦めていた。先生の目線に耐えきれず、つらつらと事実を喋るだけのマシンと化していた。

無心だったからか、イチカとの甘い日常も全て話してしまった。……イチカの静止も効かず。

 

「……」

「……あれ、俺どこまで話しましたっけ?えっと……」

 

”うん、それ以上はもう大丈夫だよ。30分は経ってるし”

 

「あれ、ほんとだ。……イチカさん?」

「……ふぇえ……」

 

先生に全てを話された結果、イチカの顔は真っ赤に染まっていた。

 

”(この2人、お似合いかも)”

 

先生は未だ、不釣り合いな思考を重ねている。いや、案外間違っていないのかもしれないが。

 

結局、風楽から先生への恐怖の払拭は叶わなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ただ帰りたい人生だった(作者:因みに私は独身です)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカにぶっ飛ばされた主人公がヤンデレ気味の生徒達(と先生)に束縛されながらも▼お家(JAPAN)に帰ろうとするお話。▼ちなみにヒロインはキサキ様。


総合評価:303/評価:7.17/連載:3話/更新日時:2026年03月23日(月) 22:19 小説情報

青春を、取り戻しに(作者:打率3割)(原作:ブルーアーカイブ)

元ゲヘナの風紀委員長は卒業した後、カイザーPMCに就職。▼自分に使える時間が無く、やりたいことを失ってしまう。▼だがある時、主人公はアビドスにあるカイザーPMCの基地がたった5人に攻められホシノを奪還されたと知る……▼


総合評価:455/評価:6.38/連載:10話/更新日時:2026年06月03日(水) 16:37 小説情報

銃弾が飛び交う学園都市?!んでもって銃の耐性なし?!・・・やってやろうじゃねえかこの野郎!!(作者:オーバジン)(原作:ブルーアーカイブ)

突如としてキヴォトスに来てしまった何も知らない無知無知な男子高校生!ブルーアーカイブをやったことない?!噓だろ!マジかよ!▼何とかお情け程度であった特殊能力を活かして生き残れ!銃弾一発が致命傷だゾ!▼そんな男子高校生が歩むキヴォトスでの笑いあり、涙あり、曇らせあり、恋愛あり、シリアスありの、青春物語です。良ければどうぞ見ていってください。


総合評価:1295/評価:6.79/連載:60話/更新日時:2026年06月08日(月) 23:45 小説情報

【完結】「全知」がこたつから出てきたんですが。(作者:ただねこ)(原作:ブルーアーカイブ)

おこたから全知さんが出てくる小説です。舞台は現代のほうだよ。▼2026-04-18.最終話を投稿しました。これにて完結。


総合評価:572/評価:8/完結:8話/更新日時:2026年04月18日(土) 12:35 小説情報

妹の通ってる学校が閉鎖されたって、マ?(作者:冬風_ykn)(原作:ブルーアーカイブ)

「妹が通い始めたSRT特殊学園が急に閉鎖されたんだけど。」▼空井サキの兄でセミナー所属の空井エルが送る青春物語?▼あと会話多め


総合評価:491/評価:6.73/連載:22話/更新日時:2026年06月04日(木) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>